映画
休みの日。
イルカと映画を見に行く約束をした当日、カカシは待ち合わせ場所に来ていた。
しかも、かなり早くからだ。
イルカが来るまで、そわそわと落ち着かない。
落ち着かないのは色々な期待で胸を膨らませているというのも理由の一つだ。
人ごみを見てはイルカを探している。
「あ、カカシさーん!」
そのイルカがカカシの姿を見つけて名を呼びながら手を振ってやって来た。
「カカシさん、早いですね。」
やって来るとイルカは、にこりと笑って「待ちました?」と尋ねてくる。
「ううん、俺もさっき来たとこ。」
「そうですか?」
「うん。」
本当は三十分以上も待っていたのだが、そのことは伏せておいた。
イルカは待ち合わせに時間五分前に来ていているし、待っていたのはカカシの勝手だし。
恋人を待っている時間も楽しいんだよね〜、とカカシは、そんなことを思っていたのだ。
「じゃ、行きましょうか。」
にっこり笑ったカカシはイルカを促し映画館へと誘った。
映画館は割りと空いていて、真ん中の良い席に座ることが出来た。
「ここなら、よく見えますね!」
イルカは、いつになく、はしゃいでいるように見える。
「・・・そうだね。」
どちらかというと、隅っこの席とかで二人きりになりたかったカカシである。
しかし、イルカが嬉しそうなので、まあいいやと思い直した。
「楽しみですね、映画。」
カカシが言うとイルカは、やはり嬉しそうに頷いた。
映画が始まってカカシは、しばらくは見ていたが、やがてストーリーの展開についていけなくなり飽きてしまった。
なんだか、よく分からん・・・。
それがカカシの感想だった。
しかし隣のイルカは熱心に楽しそうに見ていて時々「わっ、すごい!」と小さく歓声を上げたり、展開に興奮してカカシの手を握ってきたりして「カカシさん、すごいですよ!」と小声で話しかけてきたりする。
「うん、すごいね。」
カカシは適当に返事をして映画を見るよりも、映画を見ているイルカを堪能することにした。
映画館内は暗闇であるが映画の上映する光でイルカの顔が、ほんのり照らされて表情が分かる。
楽しそうに笑ったり、驚いたりするイルカにカカシの目は釘付けだ。
イルカさん、可愛いなあ。
そんなことを思ってカカシは映画館でイルカだけを見て、一人で頬を緩めていた。
やがて映画は終わり館内が明るくなった。
「あー、面白かった!」
映画を見終わったイルカは満足したようだった。
「すごい映画でしたね。ミステリーとサスペンスを織り交ぜた新感覚のSFホラーファンタジーだなんて!」
「あー、うん。」
「カカシさん、連れてきてくれてありがとうございました。」
映画の内容は、いまいち分からなかったがイルカが喜んでいるのなら映画に誘ってよかったな〜とカカシは、しみじみ思った。
「で、えーとさ。」
映画を見終わった後のことについてカカシは昨夜、遅くまでプランを練っていた。
イルカさんと二人きりになる方法を散々、雑誌やらを見て考えていたのだ。
「イルカさん、、もしよかったら・・・。」
カカシが、その先を言おうとした時、イルカが頭を下げた。
「すみません。実は、これから用事があって・・・。」
「えっ!」
「カカシさんに言うのが遅くなってしまったんですが・・・。」
困った顔をしてイルカはカカシに言ってきた。
「ええ〜!」
心から残念そうな声がカカシの口から漏れる。
「えー、いや、あの〜。今日はイルカさんと過ごせると俺、思って、それで、色々考えて・・・。」
「ごめんなさい。」
イルカは、もう一度、頭を下げた。
「俺、今日、どうしても買いたい物があって。それを、これから買いに行くんで・・・。」
「え、じゃあ。」
カカシの目が輝いた。
イルカ個人の買い物なら・・・。
「俺も一緒に行っていい?」
「でも・・・。買い物っていっても、お洒落な店に行くんでなくて、俺の家の近所のホームセンターに・・・。」
「行く!俺も一緒に行きます!」
イルカの家の近くに行けるなら尚更、行きたい。
あわよくば、イルカの家にも行ってみたい。
「うーん。でも・・・。」とイルカは悩んでいるようだった。
個人的な買い物にカカシをつき合わせていいものか、迷っているらしい。
カカシは迷っているイルカを見て、強気で言ってみた。
「だって、せっかくイルカさんと会えたのに、もうお別れだなんて俺、寂しいなあ。」
下手に出て甘えるような口調だが言っている内容は押せ押せなカカシだ。
「もっとイルカさんと一緒にいたいし、話しもしたいし。映画を見終わった後のことも楽しみにしていたのに突然、じゃあ、これで、なんて・・・。」
ひどいなあ〜、と呟いてみるとイルカが観念して頷いた。
「・・・ですよね。映画見て、それで終わりなんて、ちょっとひどいですよね。」
ごめんなさい、とイルカは謝る。
「俺も本当は、もっとカカシさんといられたら、と思いますし。」
下を向いて恥ずかしそうに、そんなことを小さい声で告白してきた。
「イルカさん!」
めちゃくちゃ可愛い!とカカシは思い、ふらふらとイルカに手を伸ばしかけたが危ういところで踏みとどまった。
ここじゃ、いくらなんでもアレだから。
二人きりになれる場所で。
できたらイルカの家で!
カカシはあれこれと密かに好からぬことを考えていた。
そんなカカシの考えに露ほども気づかず、イルカは無邪気に言う。
「じゃあ、俺の買い物につきあっていただけますか?」
「もちろん!」
二つ返事でカカシは承諾し、イルカの買い物につきあうことになったのだった。
疑問
買物
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