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幕間〜第四幕〜



バイトに向かうために電車に乗っていたイルカは電車を降り駅の改札を出た時、ふと公衆電話に目をとめた。
電話を見ると思うことがある。
・・・カカシさん、元気かな。
連絡を取りたい、と常に思っていたのだ。
家を出てからカカシのことが気になって仕方がないのだが会いに行く勇気がない。
会いに行って拒絶されたら、と思うと胸が潰れそうになった。
勝手に家を出てきたのは自分だし悪いのも自分だし、責められても仕方がないのは解っているのだが、どうしても勇気が出なかった。
「でも、電話なら・・・。」
直接、顔を会わさなかったら話しが出来そうな予感がした。
せめて自分は元気だから、とだけ伝えて・・・。
伝えて、それからどうしよう?
ここで、いつも悩んでしまうのだがイルカは思いきって公衆電話に十円玉を入れてカカシの家の電話番号を押してみた。
あの人も『電話したかったらすればいい。』と言っていたし。
以前に偶然、会ったアスマの言葉を思い出す。
どきどきしながら受話器を持っているとツルルル〜と電話の呼び出し音が鳴った。
最初になんて言おうか・・・。
呼び出し音が途切れて受話器が上がる気配がした。
「あ・・・。」
あの、と言い掛けてイルカは言葉を止めた。
受話器が上がる音に続いて電子音が流れたのだ。
それは留守番電話のお知らせで、御用の方はメッセージをどうぞ、というものだった。
気が削がれたイルカは受話器をそっと戻す。
「・・・カカシさん、いないのか。」
仕事が忙しいのかもしれないし、もしかして他の誰かと一緒にいるのかもしれない。
溜め息に似た息を大きく吐き出してイルカは公衆電話に背を向けて歩き出した。
バイトに行くために。



今のバイトはウェイターで給金も高く店からは交通費も支給してくれる。
店のオーナーの女性は気風がよく頼もしい感じの人間だった。
バイトを探していたイルカが募集の張り紙を見て飛び込みで入ると履歴書を持参してないのにも関わらず、その日から雇ってくれた。
大学と現在、住んでいる家からは、ちょっと遠いが気に入っているバイトだ。
イルカは荷物を背負いなおして呟いた。
「バイト、がんばろ。」
勉強も頑張ってお金も頑張って貯めなくちゃな。
学生なのにイルカには他にも頑張らなくちゃいけないことが、たくさんある。
たくさんありすぎて時には疲れるが、そんな時に思い出すのが楽しかったことだ。
今までは両親が生きていた頃のことを一番思い出していたのだが最近は専らカカシのことばかりだ。
どうしてるかな、カカシさん・・・。
くっと唇を噛んだイルカは何かを振り切るように、せかせかとバイト先に向かって歩き始めたのであった。



「あれ?」
会社から家に帰ってきてカカシは、すぐに留守番電話の光の点滅に気がついた。
「誰だろう?」
留守録一件、と表示されている。
着信履歴には公衆電話とあった。
「もしかして・・・。」
カカシは、どきどきしながらメッセージを聞こうとボタンを押した。
すると、ざわざわとする雑音を背景に一言だけ声が入っていた。
『あ・・・。』とだけ誰かの声が入っている。
それが一言に当たるのかどうかは疑問だったが。
だが、その声を聞いたカカシの顔には、ぱあっと笑みが広がった。
「イルカさん!」
留守録のテープを巻き戻して何回も聞く。
「やっぱり、イルカさんだ!」
イルカが『あ・・・。』の後、何を言おうとしたのかは分からないがカカシに連絡してきてくれたのだ。
内容は不明だが。
「嬉しい・・・。」
嬉しいが電話が掛かってきた時、不在だったのが悔やまれた。
「残業なんてするんじゃなかったよ。」
後悔しながらも、イルカを見かけたことといい、なんとなく自分とイルカの距離が縮まりつつあるように感じる。
運命の糸で惹かれあっているのかもしれない。
再び、留守録を聞いてみると雑音には電車の音が混じっているのに気がついた。
この前、見かけた駅の近くのどこかにイルカは、きっといるのだろう。
カカシは根気強く探している。
「もしかしてイルカさんに、もうすぐ会えるかも。」
カカシは期待に胸を高鳴らせたのであった 。




幕間〜第三幕〜
予兆





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