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幕間〜第三幕〜



その日、営業先を回ってから家に帰ることになったカカシは電車に乗ろうと駅のホームにいた。
夕方のホームは人混んでいる。
大勢の人間との帰宅時間と重なったのだ。
人ごみは疲れる・・・。
カカシは知らず、溜め息を吐いていた。
仕事が忙しい間は考えないようにすることができるが、少しでも仕事から離れると考えることは決まっている。
イルカのことだ。
好きになって一緒に住むようになり喧嘩なんてしたことなかったし、仲良くなって何も不安も心配もないと思っていた。
カカシはイルカのことが好きだし、イルカも同じ気持ちだと思っていたのに。
なのに途中から、なんとなく関係がぎくしゃくとしてしまい、それが解消されないままイルカはカカシの前から姿を消してしまった。
原因が、よく解らなかった。
何回も考えてはみたものの、直接的な原因と思われるもの見当たらないのだ。
カカシの親がカカシの結婚を匂わせたことくらいしかカカシには思い当たらないが、それだけが原因ではないような気がするし・・・。
イルカは一ヶ月前に家を出て行ってしまって、それから影も形も見付からない。
連絡を付けたくてもイルカは携帯電話を持っていなかったし、大学に問い合わせても部外者ということで取り合ってくれず、イルカの通う大学前で待ち伏せようと思ったが警備員に見付かって不審者として通報されそうになってしまった。
イルカの交友関係も分からず、毎日が憂鬱で堪らなかった。
唯一つ、カカシが確信しているのはイルカはカカシが嫌いで家を出たのではないということだった。
でなければ、あんな書置きはしないはずだ。
御恩は忘れません、なんて書かないだろう。
嫌いな人間に対しては言う言葉ではない。
もしかして違うかもしれないがカカシは、そう思うことで、それを心の支えにしていた。
止むを得ずイルカが出て行ったということにして。



つらつらと考えていると電車がホームに入ってきてカカシは人ごみに押されるようにして乗車した。
乗車すると入り口の反対のドアに寄りかかり、窓から反対のホームを眺める。
何も考えずに無心で、ただ景色を目に映していただけだった。
カカシの乗った電車のドアが音もなく閉まり発車しようとした時にカカシは、はっとして寄り掛かっていたドアから身を起こした。
「イルカ!」
小さく叫んだ。
反対側のホームには黒髪を頭の天辺でしばった男性がいた。
その男性の横顔が一瞬だけ見えたのだ。
カカシがイルカを見間違えるはずはない。
確かにイルカだった。
カカシは直ぐに電車を降りようとしたのだが、既に電車は発進しており戻ることはできない。
窓に顔をくっつけて遠ざかるホームをカカシは一心に見詰めた。
イルカを少しでも長く見ていたかったのだ。
反対側のホームが見えなくなりカカシは、ふっと息を吐いた。
安堵の息だった。
イルカが生きていた・・・。



死んでいるとは思わなかったけど自分の前から姿を消してから、この世からいなくなってしまったような感覚に陥っていたのだ。
よかった、元気そうだった。
痩せたような気がしなくもなかったが少なくとも病気はしていなかったみたいだし・・・。
カカシは、ぎゅっと目を閉じた。
こんなところで会えるとは、というか見かけるとは思いもよらなかったけどイルカを見れてよかった、と心底思った。
何より元気そうで安心した。
カカシは次の駅で電車を降りてイルカを見かけた駅に舞い戻り、その駅の近くでイルカがバイトをしていないか片っ端から近くの店を調べてみたのだがイルカの姿は見当たらなかった。
「どこにいるんだろう、イルカさん。」
バイトじゃなくて、この駅の近くに住んでいるのだろうか。
「でも、まあ。」とカカシは希望を見出した。
「きっと、この近くのどこかにイルカさんはいるに違いない。」
手がかりは見付かったのだから地道に探していこう、と心に決めた。
会ったら、最初になんて言おう。
勿論、家を出たことについて理由を訊こうとは思うけど。
「イルカさんが言いたくないなら言わなくていい。」
無理に出れないのが惚れた弱みだ。
ただ、自分の元に戻ってきて欲しいだけだから。
空を見上げると、とっくに暗くなっていた。
イルカを探して夢中になっていたらしく時間がかなり過ぎていた。
カカシは本当に久しぶりに笑みを浮かべた。
イルカを見かけたことで、少しだけ心が軽くなったのだった。




幕間〜第二幕〜
幕間〜第四幕〜





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