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前提の好き



カカシはイライラとしていた。
会社で仕事をしていても中々、集中できない。
カカシの苛立ちに気がついた紅が鬱陶しそうに言った。
「カカシ、その嫌な雰囲気を撒き散らさないで。仕事の邪魔よ。それでなくても忙しいのに。」
「ああ、うん。ごめん。」
苛立ちを無理やり押さえ込み、仕事の書類に目を通す。
今は仕事が忙しい時期だ。
仕事の書類を見ながらもカカシは昨日の父親との会話を思い出していた。
勝手に親戚の見知らぬ誰かに自分の自宅の電話番号を教えたのも腹が立ったのだが、その他に父親はイルカのことを「イルカ君」なんて呼んでいたのが無性に腹が立ったのだ。
前回の電話でイルカから名前を聞きだした父親は気軽に、しかも親しげに「イルカ君」なんて呼んでいた。
思わずカカシは「そんな風に呼ぶな。」と牽制したのだが父親はカカシの思いも露知らずに「じゃあ、イルカちゃんかな〜」と惚けたことを言ってきた。
イルカ君、イルカちゃん・・・。
自分だって、そんな風に呼んだことないし呼びたいような気がするけど、でも、だって、イルカさんだし、と心の中で無駄に葛藤する。
父親は言っていた。
「イルカ君、素直で可愛いし若い子が来ると家が華やぐから、また連れて来てほしいなあ。あ、なんならイルカ君だけでもいいから家に来るように伝えておいて。」
絶対に言うもんか!とカカシは、その場で父親の提案を却下して怒鳴って電話を切ってしまった。
長年の、いや積年の想いを募らせて手に入れた恋人を、なんで親に取られるようなことをしなきゃいけないのか。
俺がイルカさんと同棲するまで、どんだけ苦労したことか・・・、とか考えてカカシは、ぎりぎりと歯を噛み締める。
勿論カカシの父親は、大人としての観点から十代のイルカが子供として可愛く見えているのだけれど。



でも自分は違う!とカカシは思い直した。
自分はイルカのことを親が子供に対するような愛情を持っている訳ではないし、そりゃあ少しはあるかもしれないが、恋人としてイルカのことが好きなのだ。
同棲しているのも一緒にいたいと思うのも、総て好きという気持ちが前提にある。
好きだからこそ、一緒にいたい。
それだけなのだ。
そこまで考えてカカシは溜め息をついた。
最近、イルカの様子が少し変なのだ。
自分に対する態度が硬化したような感じがする。
この前の電話の内容が、偶然、聞こえてしまったのかもしれない。
だとしたら、それは誤解だから、ちゃんと説明してイルカの気持ちを繋ぎ止めたいのに。
しかし、とカカシは読み終わった書類を判を押して新たな書類に目を通す。
忙しくて、その暇がないのだ。
カカシは帰宅するのが最近は遅く深夜で、帰ってもイルカがバイトなどで不在がちで、すれ違いの日々だ。
「イルカさんもバイトが忙しいみたいだし。」
近頃、イルカは朝早く夜遅く帰ってくることが多くなった。
お金のことで何か問題を抱えているのかもしれない。
「もしも、金銭的なことだったら俺に相談してくれたらいいのになあ。」
はあーっと溜め息が自然と出てしまう。
好きなのに、好きなのに。
イルカが好きなのに。



「とにかく、仕事を終わらそう。」
カカシは気持ちを切り替えて仕事に精を出し始めた。
今日は早く仕事を終わらせて、イルカに会うのだ。
会って話さないと自分の気持ちも治まらない。
色々と頑張ろう、とカカシは決意したのだった。





迷いのとき
束の間の休息





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