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美味しいもの



あれ以来、なんとなく・・・。
なんとなくなのだがイルカが、ぎくしゃくしているとカカシは感じていた。
あれ以来とはカカシがイルカを自分の家に連れて行ってからである。
犬を見たいというイルカを実家で飼っている自分の犬を見せに連れて行った、というところまでは良かったのだが、帰り際、カカシの父親があることを仄めかして、それをカカシの横にいたイルカも、ばっちり聞いてしまって取り返しのつかないことになってしまった。



カカシは家に帰ってきてから何回かイルカに父親の発言を撤回、釈明しようと思ったのだが、そんなことをすると余計に拗れて尾を引くかもしれない、と考えると説明するのも躊躇してしまう。
避けているわけでななのだが、何かの拍子にカカシの犬やカカシの実家の話題が出るとカカシは非常に気まずくなるのだがイルカは「犬って可愛いですね。」とか「優しいご両親でしたね。」とか当たり障りのないようなことを、さらっと言う。
そう言うイルカの表情は朗らかで本心から、そう思っているようであった。
それがまた、カカシは気掛かりでもある。
本当にイルカが、そう思っているのなら、もしかして・・・とカカシは疑心暗鬼になってしまう。



イルカさん、俺の前からいなくなってしまうかも・・・。
自分をカカシにとって不要な存在であると思ってしまっているかもしれないのだ。
その心配は拭えない。
しかしカカシの父親が仄めかしたあること、カカシの結婚に対しても何も思わないのだろうか。
仮にもカカシはイルカのことが好きだと言ったのに・・・。
いや仮にも、じゃなくてさ〜。
そんなことを考えが最近のカカシの頭の中を、ぐるぐると回っている。



イルカさんが、もっと俺に対する態度をはっきりしてくれたら、と理不尽なことも思ってしまった。
しかしイルカは若く勉強やバイトに忙しく、なのに忙しい合間にカカシの家の中のことをカカシが自分でやる前に、大抵、終わらせてしまっている。
洗濯も掃除も料理も、家事全般をイルカは毎日、ほぼ完璧にこなしていた。
いくら仕事が忙しいからといって、イルカに任せすぎだとカカシも反省はしているのだが長年、一人暮らしで家事の要領を心得ているイルカには、到底及ばない。
そこがカカシには後ろめたくもありカカシの父親の発言を説明しようにもチャンスが掴めず、うやむやにしてしまっていた。




「あー、どうしたら・・・。」
カカシは帰宅間際の会社で悩んでいた。
「あら、珍しい。」
そんなカカシを見て紅は面白がっている。
「カカシが悩んでいるなんて、明日は雪かしらねえ。」
「うるさいな。」
不機嫌なカカシに紅は臆することはない。
「あらあら。ご機嫌斜めねえ。悩みがあるなら聞いてあげるわよ。あー、もしかして、この前、会えなかった天使ちゃんとの別れの危機なの?」
何気なく言った紅の発言にカカシは目を吊り上げ睨んできた。



「縁起でもないこと言うな!」
「あら、図星。」
むっとするカカシに紅は余裕の笑みを浮かべる。
「そういう時期もあるわよ。喧嘩するほど仲がいいっていうじゃない。今を乗り越えれば、きっと、いいことが待ってるはずよ。」
一応、慰めてくれた。
「そうかな?」
そんな慰めでもカカシには効果があったようだ。
ちょっと復活したような感じである。



そこへアスマが大きな荷物を抱えて部屋に入ってきた。
「帰って来たぞ。」
北の方に出張に行っていたのだ。
「お帰りなさ〜い。」
「お帰り〜。」
カカシと紅にアスマは「おう。ただいまだぜ。」と言いながらカカシと紅にお土産らしき包みをくれた。



「ほらよ。出張先で美味そうだったから買ってきた。家で食ってくれ。」
「うん、サンキュー。」
「ありがと、アスマ。」
元気が出たのかカカシは立ち上がった。
「じゃ、俺、帰るから。」
アスマが貰った包みを、そそくさと通勤カバンに仕舞う。
「今日は俺が何としても夕飯作ろうと思っているから!」
それだけ言うとカカシは、急いで退社してしまった。
アスマと紅は顔を見合わせて、呆れたように肩を竦めたのだった。



「ただいま〜。」
玄関からイルカの声が聞こえて帰って来たのが分かった。
「お帰り〜。」
カカシは台所で料理を盛り付けながら返事をする。
料理は得意ではなかったが、カカシなりに頑張って作ってみた。
いつもイルカの任せきりであったし。



「ただいま帰りました。」
イルカが台所に顔を出す。
すると嬉しそうに微笑んだ。
「あ、いい匂い。」
目を輝かす。
「今日のご飯は何ですか?」
「今日は焼き魚ですよ〜。」
イルカの嬉しそうな顔にカカシも嬉しくなる。



「会社の同僚で北の方に出張していた奴がお土産に干物を買ってきてくれたんです。」
アスマがカカシに渡したものは魚の干物だったのだ。
それも身が大きく脂がのって、とても美味しそうな干物だ。
洒落た乾菓子よりカカシもイルカも魚が好きだったので問題はなかった。
「すっごい美味しそうですね。」
手を洗ってきたイルカが食卓の上の焼き魚を見て、にこにこしている。
「そうですね。食べましょうか。」
ご飯もお味噌汁も装って、準備ができたところで食べ始めた。
「いただきまーす。」
二人で手を合わせて夕飯を食べ始める。



「すっごい美味いですね!」
魚を一口食べたイルカは大興奮していた。
「めちゃくちゃ美味いです。身に脂がのっていて、箸が進みますね。」とご機嫌だ。
久しぶりに機嫌がいい、というか屈託のないイルカの物言いや笑顔が見れてカカシは、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「あ、ほら、ここの部分、美味しいですよ。」
イルカが解した魚の身を、自分の箸で摘んでカカシの口元に持ってきた。
「カカシさんも食べてみてください。」



「どうぞ。」と勧められる。
そのイルカの行動に少し感動を覚えながらカカシは口を開けて、その魚の身をイルカの箸ごと、ぱくりと食べた。
「・・・美味いですね。」
「でしょう?」
イルカは、ご満悦な顔をしている。
「この魚をくださった会社の方、すごくいい方ですね。」
ご飯をお代わりしながらイルカは言った。
「そうですね。」
カカシも頷いた。
なんていい奴なんだ、とアスマに心の中で、そっと感謝する。



そして久しぶりにイルカとの会話を心の底から楽しんで、実に数日振りにイルカを抱きしめることに成功したカカシだったのであった。




胸の痛み
電話のベル





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