冬の醍醐味
カカシと二人で家でテレビを見ていたイルカは、ぽつりと言った。
「ウインタースポーツか・・・。」
テレビにはスキーやスケートをする人々の映像が流れている。
それを見たイルカが何か思いたのかカカシに訊いてきた。
「カカシさんてウインタースポーツとかってやったことありますか?」
「ん、ウインタースポーツ?」
カカシはテレビを見ながら読んでいた本から目を上げた。
「スキーとかスケートのこと?」
「ええ、まあ。」
「そうだねえ。」
ぱたんと本を閉じたカカシは目を閉じて何事か思い出すように言う。
「スキーは何回かあるかなあ。スケートも、まあ、やったことあるよ。」
「それって面白いですか?」
イルカは興味を持ったようだ。
「面白いねえ・・・。うーん、人それぞれとしか。俺は、どっちでもないかな。」
「へええ。」
「あ、でも。」とカカシは急ぎ付け足した。
「スキーもスケートも会社の同僚に誘われて付き合いで行っただけで、決して特定の誰かと二人きりで行ってませんから!」
「はあ。」
「スキーも日帰りでしか行ってないし、誰かとホテルに泊まったりしていませんからね!」
カカシは強調した。
「あくまで、付き合いで行っただけですから。」
誤解しないように、とカカシは念を押す。
「そうですか。」
カカシの異様な迫力に押されながらもイルカが頷くと納得したのかカカシが逆に訊いてきた。
「イルカさんはスキーとかスケートとかしたことないの?」
「あ、俺はないですね。」
イルカは、あっさりと答える。
「金ないですもん。」
それから何でもないように明るく笑った。
「あ、そうだ。」
イルカは思い出したように席を立つ。
急いで何かを持ってきてカカシに差し出した。
茶封筒を差し出す。
「今月の分です。」
「あ、うん。」
気が進まない感じでカカシは受け取った。
「いつでもいいのに。」と不満そうに呟く。
「駄目ですって。」
頑としてイルカは首を振った。
「生活費を毎月渡すのは、ここに住む時に最初に約束したじゃないですか。・・・と言っても微々たるもので申し訳ないんですけど。」
「だから出世払いでいいって・・・。」
「カカシさん、気が長すぎですよ。それじゃ、いけません。」
結構、イルカは頑固だ。
「出世払いなんていって、もしも俺が就職できなかったどうするんですか。ましてや死んでしまったら。」
イルカは割とドライなところもあって、どきっとするようなことも時折、平気で口にする。
現実主義者ともいえた。
「もう、死ぬとか簡単に言わないでよ。」
その度にカカシは諭した。
「絶対に生きるとかくらい言って頂戴よ。俺のために生きるってさ。」
イルカを強く抱きしめてカカシは言う。
「こんなに好きなのに。」
力が入り過ぎたのかイルカが訴えた。
「・・・カカシさん、苦しいです。」
少し腕の力を緩めたカカシであったがイルカを離さず、根気よく諭す。
「今度、そんなこと言ったら、イルカさんに天地がひっくり返るくらい、びっくりするようなことしますからね、必ず。」
本気のカカシの目を見て、ごくりと唾を飲み込んだイルカは「はい。」と大人しく返事をしておいた。
それから数日後。
カカシが、にこにこしながらイルカに、あるものを見せた。
「じゃーん!見て、ほら、イルカさん。スケートの無料券だよ。」
「スケート?」
「そう、今度の休みに行こうよ!」
ひらひらとカカシは手に持った二人分の券をイルカに見せる。
「イルカさん、スケートしたことないって言っていたでしょ。会社の同僚から貰ったから行こうよ。『ただ』だよ、『無料』なんだよ〜。」
イルカは『ただ』とか『無料』の言葉に弱かった。
結局、次の休みの日にカカシとイルカはスケートをしに出かけたのだが。
実質、それは所謂、デートに近いもので。
おまけにスケート初心者のイルカはツルツルと滑る氷の上の不安定さが恐いらしく、経験があって多少は滑れるカカシに、ずっと引っ付いていた。
「わっ!何これ、すごい滑るじゃないですか〜。」
「氷の上だからね〜。大丈夫大丈夫、イルカさん。」
「こ、こわい〜。カカシさん、絶対手を離さないでくださいね。」
「はいはい。」
カカシは手を離さないどころか、イルカの体を離さないように抱きかかえている。
抱きかかえていても不自然に見えないどころか、スケートリンクの上では普通の光景として映るので変に思うものは誰もいない。
カカシは、心の中で呟いた。
こんなにイルカさんと自然に接触できるなんてスケートに来てよかったなあ〜。
スケート万歳!また来よう!と一人勝手に決めていたのだった。
昔の話
愛の入った・・・
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