拾う神 8
しん、と部屋に奇妙な沈黙が流れた
カカシ先生はお茶を飲みながら俺を、じっと見ている
俺から視線を外さない
・・・なんか催促されているような期待されているような
ええっと、と考えて俺は悟った
ああカカシ先生、自分の家に帰りたいんだって
お腹空いたって買物の時、言っていたし早く夕飯食べたいんだな、きっと
俺んちには、また、ゆっくり来てもらうとして
「カカシ先生」
俺は、にこっと笑った
カカシ先生もつられて、にこっと笑った
いいムードだ
「お待たせしてすみませんでした」
「・・・え」
カカシ先生が眉を寄せる
「荷物は用意できたのでカカシ先生の家に帰りましょう」
なぜだかカカシ先生の肩が、がっくしと落ちた
「・・・そうですね、帰りましょう」
そう言ったカカシ先生の笑みは弱々しく見えた
宝くじが外れたみたいな感じだったのが印象的だった
カカシ先生がアルバイト期間中は自分の家にいてもいいと言ったので、結局、俺は
それに甘えさせてもらうことにした
最初は、うだうだと悩んだりもしたけれどカカシ先生がいいって言ってんだから良いんだ
悩むのはやめた
洗濯やらもさせてもらっているし
俺は、ずっとカカシ先生の家で暮らしていることになる
ずっと一緒にいるのだが、何ていうか・・・
そう、楽しい!
楽しいにも色々、あるけれど安心感のある楽しさだと思う
家に人がいるのっていいなあという居心地の良さがあるんだ
カカシ先生と一緒に家に帰ったり、朝は一緒に出勤したり
もう十日間ほど始終一緒にいるけど窮屈とは思わない
久々に寝食共にするほど、誰かと一緒にいることが楽しいなんてなあ
カカシ先生と一緒にいるのも慣れたし
仕事以外はカカシ先生と、ほんと、いつも一緒だ
話すことにも慣れた
カカシ先生自身の話も、たくさん聞いて今では里一番目くらいにカカシ先生について詳しくなったのではないだろうか
炬燵に入りながら、お互いの話をするのは興味深い
そうそう、炬燵はあの日、俺の家に荷物を取りに行ってカカシ先生の家に行帰ったら、ふかふかの絨毯の上に鎮座していた
炬燵を目にして驚く俺をカカシ先生は面白そうに見ていたっけ
でも、炬燵っていいよなあ
炬燵を思い出して俺は、にんまりとした
だってあったかいし、そのまま寝れるし、鍋にはぴったりだし、炬燵にミカンていう定番も外せない
テレビを見るときにカカシ先生と同じ場所に入って肩を、ぴたとくっ付けて寄り添ったりするのもいい
俺も自分の家に買おうかな〜と考えてしまうほどだ
「これ、お願いします」
声が掛けられた顔を上げるとカカシ先生だった
実は今、受付の仕事中で俺は、ちょっと時間が出来たのをいいことに
カカシ先生の炬燵を思い出して和んでいたのだ
「あ、はい」
俺は手を差し出してカカシ先生の任務報告書を受け取った
今日はカカシ先生、もう任務が終わったのか・・・
俺も、もうすぐ終わりだから一緒に帰れるかな
頭の片隅で、そんなことを考える
「報告書は問題無しです、大丈夫ですよ」と顔を上げるとカカシ先生と目があった
その目が何だか困っている
どうかしたのだろうか?
「イルカ先生、あのですね」
カカシ先生は癖なのか、頭をがしがしと掻いた
「俺、急に単独の任務が入りまして、これから行かなくちゃいけないんです」
「それは・・・」
これから任務なんて大変だな
「そうですか、お気をつけて」
怪我をしないように、と願いを込めて見つめればカカシ先生の頬が微かに赤くなった
任務前で緊張しているらしい
「で、ですね」
カカシ先生は慌てたようにポケットの中を探って俺にある物を差し出してきた
「これ、俺の家の鍵です」
手の平の上で光る銀色の鍵
鍵を受け取れってことみたいだけど、いいのかな
「勝手に入っていていいですから」とカカシ先生は俺の手を取って鍵を渡してきた
「・・・どうも」
ぎこちなく鍵を受けて取る俺
「帰還は三日後くらいなんで、ちゃんと俺の家にいて待っていてくださいね」
「はい」
「あ、冷蔵庫の中の物は何でも食べていいですから」
カカシ先生の声が受付所に響き渡る
丸聞こえってやつだ
多分、受付所にいた人、全員、ばっちり聞いているだろう
「俺、イルカ先生のために任務、頑張ってきますから!」
カカシ先生は、そう言うと嵐のように去って行ってしまった
忙しい人だなあ
でも、いつも一緒にいるカカシ先生がいないと、ちょっと寂しい
それに無事に帰って来てほしい
カカシ先生を見送りながら俺は呟いた
「行ってらっしゃい、カカシ先生」
お帰りお待ちしていますから、と
だが・・・
カカシ先生の発言を聞いた受付所の皆の好奇心に満ちた視線を
一心に浴びているのを俺は全く知らなかったのだった
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