拾う神 14
そしてカカシ先生が作ってきてくれた弁当を、どこで食べたかというと、まあ意外なことに上忍控え室だった
「誰もいないから」って連れて来られたけど、今日に限って何で誰もいないんだろう?
誰もいなくても上忍の控え室は中忍の俺にとって居心地が悪い
なぜなら俺が上忍ではないからだ
分不相応な場所だ
「さあ、食べましょう」
カカシ先生が広げてくれて弁当は、やっぱり彩り綺麗で豪華で美味そう
「今日は時間があったので凝ってみました」と言うだけあって手間と時間を掛けた凝っている料理が弁当箱の中に
、ぎっしりと詰まっている
「すごーい!」
素直に感嘆の声が出てしまう
「愛を詰め込みました」
カカシ先生が真面目な顔をする
「この前、イルカ先生が作ってくれた料理に愛を感じたので俺も愛を入れてみました!」
誇らしげに言われて・・・
食べてみたら、とっても美味しくてカカシ先生の愛情を感じた俺だった
でも場所が場所だったので急いで弁当を食べ終えた
「ご馳走様でした!」
ぱんと手を合わせて感謝の気持ちを表す
カカシ先生も食べ終えていた
空の弁当箱を嬉しそうに俺から奪ってカカシ先生は訊いてくる
「夜は何が食べたいですか?」
夜も作ってくれるらしい、それは嬉しいのだが
「カカシ先生、少し休んだ方がいいですよ」
任務帰りのカカシ先生の体が心配だ、上忍で俺より頑丈で鍛えているとはいえ・・・
「大丈夫ですよ、ちゃんと休んでいます」
カカシ先生は、にこにこする
「でも心配してくれて嬉しいなあ」
カカシ先生の手が俺の頬に触れた
ついでに頬から首筋へと手が滑っていく
これは何の意味があるのだろう?
スキンシップかなあ
「じゃ、美味しいもの作ってイルカ先生の帰りを待っていますね!」
「すみません」
「いいんですよ、だから」
首へ滑っていったカカシ先生の手が肩へと落ちる
肩に置かれた手が俺の体をカカシ先生の方へと引き寄せた
「早く帰ってきてね、待ってますから」
耳元で言われてカカシ先生の吐息が耳に吹きかかって、内心、どきりとしてしまった
言葉が甘い雰囲気を漂わせているような・・・
でも、待ってます、その言葉が嬉しい
俺は笑って頷いた
「なるべく早く帰りますね」
そう約束した
カカシ先生の弁当を食べ終えて受付所に戻ると以前、秘めた恋云々言ってきた同僚がいて、また何やら言ってきた
「もう秘めた恋じゃなくなったのか?」
「え・・・」
意味が解らない
「まあまあ、照れるなって」
同僚は勝手に何かを理解しているのか勘違いしているか、俺の背中を叩いた
「よかったなあ、手作り弁当なんて究極の愛だぞ!」
素晴らしい!と感極まっている
「うん、まあ」
状況が解らないまま俺は同意した
「弁当は美味しかったよ」
どうやら弁当の話題みたいだし
「カカシ先生、料理が上手だし」
そうそう、こうも言っていたっけ
「愛が入った弁当だったよ」
「愛!いいなああ〜」
同僚が羨ましそうな声を上げる
「うん、愛って言っても親愛っていう感じの・・・」
家族的な意味での愛情、という俺の説明は同僚は聞いておらず、愛という言葉に感銘を受けていた
とりあえず受け付けの仕事を何事もなくこなして受付所にあったカレンダーを、ふと見ると、もうすぐ次の給料日だった
給料・・・
切なくなるなあ、その響き
俺のなくなった給料は今頃、どこにいるんだろ
探しても探しても見つからないので俺は潔く諦めることにしたのだ
寒空の下、給料が震えて・・・はないと思うけど働いて得た報酬が消えてしまったのは悲しい
悲しいが仕方がない
誰にも文句を言えない、無くした自分が悪いんだ
ま、それは置いといて
給料日がもうすぐってことは、あの俺の給料紛失事件から一ヶ月ってことで
俺の短期間のアルバイトも、もうすぐ終了か〜
ちょっと、いや、かなり寂しいなあ
カカシ先生の家を出て自分の家に帰る
当たり前のことなのに
今、カカシ先生の家から帰りたくない自分がここにいた
仕事が終わってカカシ先生が待っているカカシ先生の家に帰る
あー、しばらくしたら、この帰り道も通らなくなるんだなあ
なんか暗くなる俺
アルバイトだったけどカカシ先生と一緒にいるの楽しかったし、いつまでもこの楽しい時間が続くと心のどこかで
思ってしまっていたんだな
始めがあれば必ず終わりがあるのになあ
いつの間にか、ぬるま湯に浸かって、ぬくぬくとしていたのか・・・
はあ、と溜め息を吐きそうになって慌てて口に手を当てた
やばいやばい
アルバイト期間中はカカシ先生の話し相手をするんだ、ちゃんと
悲しい顔は見せられない、明るく振舞って明るく話して
別にカカシ先生の家から出て行くことになっても受付所でカカシ先生には会える
会えるけど、もう一緒に暮らすことはないかもしれないんだよなあ・・・
そんなことを思うとつい、大きく大きく溜め息が出てしまっていた
「ただいま帰りました」
カカシ先生の家の玄関の扉を開けるといい匂いがした
素直に腹の音が鳴る
こんな時でも食欲あるのか、俺
食欲は不滅なんだな
「おっかえりなっさーい!」
両手を広げたカカシ先生が出迎えてくれた
白いフリルのエプロンが妙に似合っている
「イルカ先生〜」
満面笑顔のカカシ先生
カカシ先生とも数日後にお別れか・・・
「待ってましたよ〜」って、ぎゅっと抱きしめられた
この家族的なスキンシップともお別れだよな
気持ちが沈んでしまいそうになったが辛うじて持ち堪えた
「イルカ先生、ご飯出来てますよ〜」
カカシ先生が俺の手を引く
「あ、でもお風呂もすぐ沸かしましょうか」
「風呂・・・」
風呂もいいなあ
「ええ」とカカシ先生は嬉しそうに頷いて訊いていた
「ご飯にします?お風呂にします?」
どっかで聞いたことあるようなフレーズだった
結局、ご飯を先にいただくことにしたのだが夕飯は鍋だった
そういえば、アルバイトで最初にカカシ先生の家に来たときも鍋だったなあ
鍋は湯気を立てて、ぐつぐつ美味そうに煮えている
ほんと、美味そう
カカシ先生がグラスにビールを注いでくれた
熱い鍋に冷たいビールって合うよなあ
「乾杯!」とグラスと、かちんと合わせてビールと一口、飲む
美味しいなあ〜
ビールを飲んで、ほろ酔い加減になった俺はカカシ先生に言ってしまった
「もうすぐアルバイト終わりですね」
ぺこりと頭を下げた
「大変お世話になりました、本当にありがとうございました」
感謝の気持ちを、とうとうと述べる
「カカシ先生にはすっかりご迷惑をお掛けしてしまいました、今度は俺の家にも遊びにきてください」
あの日、カカシ先生が拾ってくれなかったら俺は路頭に迷っていたかもしれない
本当にカカシ先生には感謝の気持ちで、いっぱいだ
頭を下げたままカカシ先生の言葉を待っていたのだが反応が返ってこない
おかしいな、と思って顔を上げるとカカシ先生は・・・
ビールの入ったグラスを口に傾けていたのだが、口には一滴もビールが入っておらず残らず炬燵の布団に零れていた
早く拭かないと染みになってしまうじゃないか
急いで拭こうとしてカカシ先生と見ると
カカシ先生は、びっくり仰天の顔をして固まっていたのだった
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