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春の嵐4



その日、カカシは上機嫌であった。
朝からイルカに会えて一緒に受付所に行き、昼にも会えて、なんと一緒に昼食を摂ることができた。
昼を一緒に食べようと、いきなり誘ったら断られるかと、どきどきしていたが了承してくれた。
良いことずくめで怖いくらいだ。
極めつけはイルカは昼食を食べたときに唐揚げを嬉しそうに食べていたので、あげたら食べてくれた。
大喜びで。
唐揚げをあげてからイルカの雰囲気が柔らなくなったような気がした。
朝に会ったときは、ちょっと怒ったような顔をしていたが。
もしかして、とカカシは思った。
お腹が空いていただけだったとか?
考え方によっては失礼かもしれない。
でも、昨日の夕方は機嫌が悪かったみたいだし。
人間腹が減ると機嫌が悪くなるのは自然の摂理だ。
イルカ先生、昨日は忙しくて昼は食べてなかったのかもしれないし。
そんな風に考えた。



「あー、今日はどうしようかなあ」
夕方、カカシは上忍の控え室で悩んでいた。
「昨日の今日だけど・・・」
イルカを誘うか、迷っていたのだ。
「うーん、せっかくイルカ先生との距離が縮まって、いい雰囲気になったから今がチャンスだと思うんだけどねえ」
あんまり、しつこく誘って嫌われたら元も子もない。
「昨日の誘って断られているからねえ」
うーむ、と悩みカカシの眉間に皺が寄る。
「どうしようかなあ」
押すべきか引くべきか・・・。
あれこれカカシが悩んでいると控え室の扉を叩く音が聞こえた。
こんこんこんと。
「すみません」
イルカの声だった。
「カカシ先生はいらっしゃいますか?」
「はいはいはい、いますいます!」
一瞬で扉に飛びついたカカシは一気に扉を開ける。
そこにはイルカがいた。
本当にイルカがいた。
「イルカ先生!俺に用事ですか?」
「は、はい」
カカシの勢いに押されたのか、イルカが戸惑っている。
「そうなんですが・・・」
「何でしょう?」
イルカが自分を訪ねてきてくれたということにカカシの頬は緩む。
どんな用事であろうとも。
「俺に出来ることがあるのなら何でも言ってください!」
気合も入っている。
「そんなに大したことではないんですが、その」
イルカは照れているのか、頬を掻いている。
「あの、もしよかったら・・・。カカシ先生がよかったらですけど、今晩、食事でもと思いまして」
思ってもみないお誘いであった。
「昨日は俺が大人げない態度をとってしまって大変申し訳ありませんでした」
ぺこっとイルカは頭を下げる。
「ずっとカカシ先生が誘ってくださっていたのに、断ってばかりですみませんでした」
昨日の受付所でのイルカとのことはカカシは、もう忘れていた。
それにイルカがカカシの誘いを断っていたのにも、ちゃんとした理由があった。
イルカの仕事が忙しかったのだ。
それは知っているから、ただタイミングが悪かっただけの話で。



「いいんですよ、イルカ先生」
頭を下げるイルカの肩にカカシは、さり気なく手を置いた。
「頭を上げてください、俺は気にしていませんから」
「本当ですか?」
イルカが、ちょっとだけ顔を上げてカカシを見てくる。
その顔が心配そうで庇護欲をそそる、というのはあくまでカカシの見解だ。
「本当です」
イルカを安心させるようにカカシは頷いた。
「それにイルカ先生から誘ってくれるなんて嬉しいですよ」
本心だ。
「イルカ先生は、もう仕事終わりですか?」
聞くとイルカは頷いた。
「じゃー、どこに行き・・・」
行きましょうか、と言いかけてカカシは昨日のイルカの言葉を思い出した。
外食は好きじゃないと言っていたっけ・・・。
それにカカシの家に招待すると昨日、決意表明したばかりだ。
自分の家に招くのはいい、問題ない。
イルカには毎日、自分の家に来てほしいくらいだ。
いっそのこと帰ってほしくない。
だけども。
・・・俺の家、今、何もないんじゃないか。
最低限の食べ物や飲み物しかないような気がする。
・・・どうしよう、イルカ先生に来てもらう絶好の機会なのに。
考え込んでしまったカカシに気を遣ったのかイルカが先手を打ってきた。
「俺、明日も仕事なので今日は食事だけというのはダメでしょうか?お酒は休みの前の日にでも」
「いいですね!」
カカシは、すぐさま同意した。
「なら、週末は俺の家に来てくれませんか?イルカ先生と、ゆっくりお酒を飲みたいんです」
週末だったら猶予があるので、酒も酒の摘みも、その他諸々用意できる。
流れに沿って、自然の体で誘ってみてよかったとカカシは。
「イルカ先生と話をしてみたいと思っていたんです」
イルカが警戒心を抱かないように、とにこにこする。
「え、それはご迷惑では・・・」
突然のカカシの誘いにイルカは驚いているようであったが、最終的には頷いた。
「カカシ先生がいいなら、お邪魔させていただきます」
それを聞いたときには飛び上がりたいほど舞い上がってしまったカカシだ、ただし心の中だけで。



「そうと決まったら、今日はどこに行きましょうか?」
イルカと週末の約束を取り付けたカカシの気分は、うきうきだ。
これからイルカとの食事を考えても、うきうきだ。
しかも二人きりで。
「イルカ先生、何が食べたいですか?」
「あ、なんでもいいです」
「そうですか!」
連れ立ってイルカと控え室を出たカカシの足は、確かに浮き足だっていた。



イルカが何回か来たことがあるという店に入って食事をした。
食事の最中、意外にも話が弾んだ。
しかも、イルカから話しかけてくれた回数の方が多い。
「あの、カカシ先生」
「はい、何でしょう」
「一昨日のことなんですけれど」
「一昨日?」
一昨日と言えば、イルカを誘って断れて紅に強い酒を飲まされた日だ。
「一昨日がどうかしましたか」
「は、はい」
急にイルカが勢い込んで、僅かに身を乗り出してきた。
「その、俺は行かれなかったんですけど、あの後、飲みに行かれたんですよね?」
「ええ」
「それで、たくさん飲まれたんですか?」
妙なことを訊いてくる。
「はい、まあまあ」
酔ってしまったとイルカに言うのが恥ずかしくて、曖昧に頷く。
「酔っ払ってしまったとか」
「少しですかね」
「何時頃、お帰りになられましたか?」
それは覚えていなかった。
どのくらい飲んで、何時に帰ったか・・・。
記憶がぼんやりとしている。
「えーっとですね」
思い出せなかったので、適当にカカシは言う。
「深夜・・・。零時は過ぎていましたかねえ」
「なるほど」
納得したという風にイルカは、うんうんと首を小刻みに縦に振っている。
「それが何か?」
なんで、こんなことをイルカが聞くのか疑問に思い聞いてみると「あ、なんとなくです」とイルカが答えて手を振る。
「ちょ、ちょっとした好奇心なんです。ほ、ほら、上忍の方ってお酒が強いって聞きますので」
「まあ、強いやつは多いかもしれませんね」
逆に質問してみた。
「イルカ先生はお酒、強いんですか?」
「え、俺ですか?」
話を振られたイルカは面食らった様子だ。
「俺、あんまり飲まなくて・・・。飲むと眠くなっちゃうんですよね」
「そうですか、眠くなるんですか」
「そうなんです、だから普段はビールくらいで」
「俺もビール飲みますよ」
なんて話は盛り上がっていたのだが。
カカシは心中、思っていた。
週末、俺の家で飲むときは・・・。
強い酒を用意して、イルカ先生にちょっぴり飲んでもらって眠くなってもらおう。
眠くなったら俺の家に泊まってもらってさー。
次の日、朝ご飯を一緒に食べちゃったりして。
不埒なことを考えて期待に胸を膨らませ、薔薇色の夢を夢見ていた。




春の嵐3
春の嵐5




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