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春の嵐3



イルカは悶々としていた。
鬱々と悩んでいた。
・・・多分だけど。
給料をカカシに持っていかれた次の日のカカシの顔を見て悟った。
「カカシ先生、何も覚えてないな」
致命的だった。
何も覚えていない相手に何を言っても無駄なような気がする。
あのとき、カカシは酒の匂いをぷんぷんさせていた。
どのくらい飲んだのかは解らないが、相当飲んだのだろう。
次の日、二日酔いでなかったのは、さすがというか上忍というか。
イルカと顔を会わせても、昨夜の事を全く何も思い出さないカカシを見て受付所では素っ気無い態度を取ってしまった。
大人気なかったかもしれない。
でも。
「俺の給料を取っていったくせに」
人質とか言っていた。
「人質って何だよ、人じゃないっての」
カカシがイルカの給料を取っていった所為で、イルカは銀行の貯金を下ろして使っている。
「なんで、俺がこんな目に」
カカシに給料を奪われて、それをカカシが覚えていない。
いったい、どうしたらいいのだろう。
イルカは途方に暮れてしまった。



こういうことは言うのなら早い方がいい。
一刻一秒でも早い方がいい。
遅くなればなるほど、拗れる可能性がある。
頭では解っているのだが・・・。
何と言ってカカシに切り出すのが最適なのか。
イルカは切り出すタイミングを計るべく、陰からこっそりとカカシの観察をすることにした。
給料をカカシに取られてしまった日から三日目。
朝、出勤するカカシを見つけて後をつけてみた。
電柱に隠れてカカシを見ていると急に、くるっとカカシが振り返った。
真っ直ぐ、イルカの隠れている電柱を見つめてくる。
そして言った。
「おはよう、イルカ先生」
・・・ばれていた。
「お、おはようございます」
ばれてしまったからには隠れているのは意味がない。
電柱の陰から出てイルカはカカシに朝の挨拶をした。
「イルカ先生は、これからアカデミーですか?」
カカシと話す気などなかったのに、カカシから話しかけてくる。
「いえ、受付所です」
今日は朝から夕方まで受付所で仕事だ。
それを聞いたカカシは目を細めた。
「そうですか、俺も受付所に行くので・・・。あの」
カカシが頭を照れくさそうに掻く。
「もしよかったら、一緒に行ってもいいですか?」
とても控えめな言い方で。
イルカに断る術はなかった。



「カカシ先生、隙がないな・・・」
昼食を食べに行くカカシを、今度は廊下の角に隠れてイルカは見ていた。
カカシは受付所のある棟に設置されている食堂に入るところだった。
イルカも、ちょうど仕事が昼の休みに入ったので昼食を食べようと食堂を訪れたところ、カカシを見つけたのだ。
・・・カカシ先生も食堂で食べたりするんだ〜。
意外な気がした。
・・・あんまり、こういう場所は利用しないイメージがあるけど。
そんなことはないのかもしれない。
・・・カカシ先生、何を食べるんだろ?
少し興味がわく。
カカシは一人で食べるのだろうか。
連れ立ってきたような人間が見当たらない。
そのときだった。
くるっとカカシが振り向いた。
イルカが隠れている廊下の角を見つめてくる。
慌てて身を隠したのだが遅かった。
「イルカ先生」
カカシに見つかってしまった。
「そんなところで何をしているんですか?」
イルカの隠れている廊下の角にカカシは近づいてくる。
ひょいとイルカを覗き込んできた。
「あ、あはははは〜」
笑って誤魔化した。
果たしてカカシがこれくらいで誤魔化されたか、解らないが。
「昼飯を食べようかな〜って来たんです」
「ああ」
カカシは朝と同じく目を細めた。
その目が妙に優しい気がする。
「そうだったんですか」
イルカの言葉を微塵も疑わない。
「俺もこれから昼を取ろうかと」
よかったら、とカカシが朝と同じく控えめに遠慮がちに言ってきた。
「イルカ先生がよかったらですけど、一緒に食べませんか?」
「・・・え」
「ダメですか?」
「ダ、ダメ、じゃないです」
カカシの上忍なのに頼りなげな目を見てダメだと言うのは憚られた。
給料の件は別としてカカシは、良い人そうな気がする。
本当は良い人なんだと、そんな気がしてくるから不思議だ。
「よかった」
カカシが、にこっと笑った。
こう言ってはなんだが、子供みたいな笑みで可愛かった。
好きな人に告白して了承をもらえたような顔だ、とイルカは漠然と思う。
そう思ってしまうほど、カカシは幸せそうに見えたから。
・・・カカシ先生、好きな人でもいるのかなあ。
にこにこと無邪気に笑うカカシを見てイルカの胸に、ちくりと棘が刺さったような気がした。



カカシとイルカは人も疎らな食堂で向かい合わせで、少し遅い昼食を摂っている。
イルカは定番の日替わり定食でカカシも同じものだ。
「イルカ先生、唐揚げ好きなの?」
定食にあった大好きな唐揚げを真っ先に食べるイルカを見てカカシは「はい」とイルカの皿に自分の分の唐揚げを入れてくれた。
「よかったら食べてください、俺は揚げ物得意じゃないので」
「え、いいんですか?」
実は唐揚げが好きだったりするイルカは、びっくりした。
この世の中に唐揚げ苦手な人がいるんだ〜と。
「ありがとうございます」
いただきます、とカカシから貰った唐揚げを頬張り、イルカは目の前のカカシをまじまじと見た。
カカシ先生って。
唐揚げをもぐもぐと咀嚼して、ごっくんと嚥下する。
本当は良い人なんだなあ。
理由は、だって唐揚げくれたもん、だ。
この分なら、何とかなるかもしれない。
カカシが取っていったイルカの給料がどうにか取り返せるかもしれない。
スムーズに給料を返してもらえるかもしれない。
うん、そうだ。
イルカは希望を見出した。
きっとカカシ先生は話せば解ってくれるはず!
だって唐揚げくれたから!
その根拠と唐揚げは全く関係ない。
目の前で丁寧に箸を使い、綺麗に食事をするカカシを見てイルカは自信が出てきたのだった。



春の嵐2
春の嵐4




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