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春恋2



打ちひしがれているカカシにアスマが面倒くさそうに言った。
「もしかしてカカシ、初恋、まだだったのか?」
カカシは、きっとアスマを睨む。
「悪い?」
「いや、悪くねえが」
いかがわしい本を常備して読んでいるんだから、そっちの方はとっくに済ませていると思っていた、とは懸命にもアスマは言わなかった。
「あー、ショック〜」
カカシは頭を抱えて喚いている。
「初恋の人と最初にキスするのが俺の唯一、ささやかな夢だったのに〜」
「まあ、そんな悲しむな」
アスマは、とりあえず慰めた。
とりあえず慰めるくらいしかできない。



それよりも、とアスマは、もう一人のことが心配になった。
図らずも男、同性とキスしてしまったイルカのことが。
「おい、イルカ」
喚くカカシは放っておいてアスマは口元を押さえて硬直しているイルカの肩を揺すった。
「大丈夫か?」
反応はない。
「イルカ、正気に返れよ。ちょっとした事故だろ、忘れりゃいいんだ」
「そんな、忘れるなんて」
アスマの呼びかけに、ようやく反応を示したイルカは、ぶるぶると肩を震わせた。
「忘れるなんてできません」
「おいおい、イルカ?」
「だって、俺」
悲痛な顔でイルカはアスマを見る。
「俺、初めてキスした人と結婚したいって思っていたんです」
ここにも、ささやかな夢を持った人がいた。



驚いたアスマは思わず、イルカもか、と言いそうになり危うく口を閉ざした。
「そ、そうだったのか。・・・そ、それは、まあ、なんだな」
上手い慰めの言葉も出ずに額に冷や汗を掻いている。
二人とも初めてのキスが、どうとかこうとか言っているが。
ショックを受けているカカシとイルカを交互に見やる。
それって、そんなに大事なものなのか?
世の中の面倒ごとを避けるようにして生きているアスマにとってキスもまた面倒くさいもので。
特に何も思うわけでもなく。
キスに幻想を抱いたりはしていなかった。
意外に現実主義者でもあったのだ。



「だいたい、アスマが悪い!」
カカシが、びしっとアスマを指差す。
「いきなり後ろから蹴っ飛ばすんだから」
「それはカカシがイルカに不埒なことをしていると思ったからだ」
「だからって」
「普段からの信用のないカカシが悪い」
アスマも内心、蹴飛ばしたことについて悪いなと思ってはいたがカカシ相手だと、どうも素直に謝れない。
「男が男に手を出すわけないでしょ!」
「そんなの俺には分からん」
「あー、もう!」
痺れを切らしたカカシが思い切り顔を顰めた。
「俺はイルカの具合悪いから熱があると思って診ていただけだ」
アスマだって、とじろっと鋭い目でアスマを見る。
「イルカの加減が悪いって言っていたでしょうが。具合が悪いなら薬を飲ませなさいよ」
「あー、イルカのはな」
面倒くさそうにアスマは説明した。
「所謂、子供が出す知恵熱みたいなもんで、すぐに治まるんだよ」
本番に弱いとはそういうことだと言い忘れた、と罰が悪そうにしている。



「そうなの?」
「そうだ」
じゃあ、とカカシはイルカを振り返った。
「今は具合はいいの」
「え、ええっと」
胸に手を当てたイルカは頷いた。
「そうですね、なんかいいかも」
「ほんと?」
カカシはイルカの傍まで行くと再び、こつんと額を合わせた。
二人の顔は近い。
傍で見るイルカの顔は先ほどより生き生きとしている。
「あ、ほんとだ」
額を合わせたカカシが呟いた。
「熱がない」
カカシはイルカに優しく微笑む。
「良かったね、熱が引いて」
「はい、どうもありがとうございます」
色々とご心配いただいて、とイルカも柔らかく返す。
「慰めてもらった時も」
ふっとイルカがカカシに笑いかけた。
「とても嬉しかったです。また頑張ろうという気になりました」
「あれは・・・」
「カカシさんは優しいんですね」
イルカに、そう言われて何故か今度はカカシが赤くなっていた。



「あれは!誰だって言うよ、普通」
「そうなんですか?」
「そう!」
カカシは慌てふためいているようだった。
そんなカカシをアスマは面白そうに見ている。
カカシが慌てているところなんて初めて見た、と内心、笑うのを堪えている。
「イルカ・・・」
「はい」
「あの、俺」
じっと見つめあう二人。
二人の瞳が交差する。
先に視線を逸らしたのはイルカであった。
顔が赤く染まり口元を押さえているところを見るとカカシとキスしたことを思い出したらしい。
そんなイルカを見たカカシが宣言した。
「よし!決めた!」
何をだろう?
「イルカに俺の初恋の人になってもらう!」
え、とアスマとイルカが同時にカカシを見た。
「前後は逆になったけどイルカが俺の初恋の人になれば問題解決!俺の夢も叶うってことだし」
拳を固めて決意している。
イルカは突然のことで目を、ぱちくりさせていた。
アスマは空を見上げて溜め息を吐いて小さく言った。
「まあ、春だからなあ」



春恋
春恋3



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