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fever safe! 3



「俺、どしたらいいんだろ」
イルカを傷つけたことに対してだ。
なんと言って謝ったらいいのか・・・。
「怒っているだろうなあ」
怒っていないはずがない。
「ああ、どうしよう」
悩むカカシも、これまた珍しい。
「そういうときはだな」
失恋経験豊富な、先ほどの暗部がアドバイスをする。
「まずは、取っ掛かりとしてプレゼントを贈るんだ」
「プレゼント?」
「そうだ、相手の好きなものを贈る。これは基本だ」
「好きなものねえ」
イルカの好きなもの・・・。
考えたが思いつかない。
思いつくのはラーメンや玉子くらいだ。
「ラーメンとか玉子?」
「玉子ってなんだ」
暗部は呆れている。
「もっとこう、ロマンチックで恋人同士のムードを高めるようなものはないのか?」
「ロマンチックなもの〜?」
イルカとロマンチック・・・。
どうにも結びつかない。
悩むカカシは結論を出せないまま、任務へと向かい。
悩みを抱えたまま、悶々と任務を遂行したのであった。



一週間の任務を終えてカカシは里に帰ってきた。
「はあ、意外に早く終わってよかった〜」
一息つく。
すぐにイルカの家に向いたいところであったが躊躇してしまう。
「・・・別れ際に喧嘩みたいのしちゃったからなあ」
イルカは、まだ怒っているかな。
非常に心配になってきた。
「うーん、イルカに会いたいんだけど」
会いたいが勇気が出ない。
「また、あんな冷たい顔をされたら」
イルカに冷たい顔をさせたのはカカシなのだけれど。
とりあえず、自宅に帰ってシャワーを浴びて、さっぱりする。
さっぱりしたカカシは決断した。
「素直に謝ろう」
原因は解っていることだし。
謝れば、きっとイルカは許してくれるに違いない。
そう、多分・・・。
「でもなあ」
手ぶらじゃ何か格好がつかないような気がする。
仲間の暗部のアドバイスに従ってみるかな、と思い立った。
「プレゼント、か」
イルカは何を贈ったら喜ぶんだろう。
イルカは何か欲しいものがあるのだろうか。
一度も、そんなこと聞いたこともないし、尋ねたこともない。
カカシはイルカのことを余り知らない自分に気がついた。
「・・・もっと好きな人のこと知ろう」
好きな人だから、知っておきたいこともある。
「ま、とにかく里中に出てみようかな」
里中の店が立ち並ぶ場所に行けば、何か名案が浮かぶかもしれない。
「よし、そうしよう〜」
イルカにプレゼント。
うきうきしてきたカカシであった。



賑やかな里の中をカカシは一人で歩いていた。
色々な店が、たくさん立ち並び、大きな声で人を呼び込んでいる。
カカシは、そんな店を物珍しそうに眺めた。
「面白そうな店があるなあ」
イルカと来たら、さぞかし楽しいだろうと思ってしまう。
「イルカと買い物とかいいなあ」
任務で忙しくて、一緒に出かけたりすることは殆どない。
「早く暗部を抜けたいな」
そうしたら、少し時間に余裕が出てイルカと一緒に過ごす時間も多くなるかもしれない。
今頃、どこでどうしてるかな・・・。
イルカを思い出して、はあ、と溜め息が漏れる。
そんなとき後ろから、ぽんと肩を叩かれた。
「久しぶりねえ」
見知った顔だった、ただし名前は覚えてない。
以前に任務で数回、顔を合わせているくの一てだけで。
「元気?」
「あー、うん」
カカシは気のない返事をする。
別に会いたい相手ではなかったし。
「何よ、つれないわね」
くの一は綺麗な顔の綺麗な眉を顰めた。
綺麗ではあったが、気の強さが顔に出ている。
カカシが最も苦手とする女性のタイプだ。
「いいでしょ、どうでも」
「そうね、どうでもいいけど」
「何か用?」
早く、くの一を追い払いたくてカカシは、つっけんどんだ。
「別に用はないわ」
カカシの態度を物ともせず、くの一はさらりと髪をかき上げる。
「彼氏と待ち合わせをしているんだけど、まだ時間があるから暇なのよ」
「あ、そう」
「だから、カカシに付き合ってあげる」
余計なお世話だった。
「買い物しているんでしょ?何を買うの?」
「・・・関係ないでしょ」
「いいじゃない、少しくらい教えてくれたって」
はっきり物を言う、くの一だ。
「こんなところを一人でうろついているってことは、自分用じゃなくて誰か他の人にあげるものを見繕いに来ているんじゃない?」
洞察力も鋭い。
「自分用だったら、こんな賑やかなところまで来なくても用は足せるでしょ」
独身男性なんて、そんなものと手厳しい。
「まあ、そうだけど」
「差し詰め、大事な人にあげるプレゼントでも買いに来たんじゃないの?」
ずばり、言い当てられてしまった。



「あら、当たり?」
くの一は口の端を上げる。
「じゃあ、私も選ぶの手伝ってあげるわ」
「いらない」
簡潔に断った。
「そう?女性の目線からの助言って大事よ」
そんなことを言われて、ふとカカシは考えた。
・・・冴えない暗部の仲間のアドバイスよりも、有益かもしれないと。
「ふーん、じゃあ、聞くけどさ」
カカシは掻い摘んで、事と次第を簡単に話す。
イルカのことは伏せて。
聞いたくの一は・・・。
「ばっかじゃないの!」
目を吊り上げた。
怒っている姿は怖ろしい。
「好きな人の前で、他の子を褒めるなんて!そんなこと彼氏にされたら、嫉妬深い私は八つ裂きでも済まないわ」
不穏当なことを言っている。
嫉妬深いのはカカシも同じであるが。
「デリカシーがないだけじゃないでしょ。その子のこと本当に好きなの?好きなら、何で他の子のこと褒めたの?」
矢継ぎ早に質問されてカカシは、たじたじになっている。
・・・だから、女って苦手だ。
思ったが口には出さなかった。
「褒めるって可愛いって言っただけでしょ」
「それが駄目なのよ!可愛いのは好きな人だけで充分でしょう」
「だーかーら!」
カカシのイルカへの愛を疑われたようで、カカシは言い返した。
「可愛いって思ったのは、告白してきた子のしていた飾り紐のことで。髪を括っていた紐が可愛かったんだよ。それをイルカがしたら似合うと思って想像したら・・・」
つい、イルカの名前が出てしまう。
カカシの言い訳を聞いて、くの一は盛大に溜め息を吐いた。
「それ、ちゃんと言ったの?端折って言ったから、怒ったんじゃないの?」
「・・・そうかも」
指摘されて、初めて気がついた。
カカシのイルカへの言い方だと可愛いのは告白してきた人になってしまう。
誤解されるような言い方だったと反省した。
肝心なことをイルカに伝えていなかった。



「・・・そうだったかも。ちゃんと言ってなかった」
肩を落とすカカシを、くの一は慰めた。
「原因が解ったならいいじゃない。後は挽回するだけよ」
「・・・うん」
「さ、プレゼント選ぶの手伝ってあげるから」
くの一が、カカシの腕を引っ張る。
「その子、何が好きなの?」
「えーと」
「可愛いものがいいかしら?」
あれなんか素敵、と店に飾られている品物を指差し、くの一は、はしゃいでいる。
「いいよ、自分で・・・」
選ぶから、とカカシが言い掛けたときだった。
それは突然の出来事で。
ばったり。
イルカに出会ってしまった。
ぴたりと足を止めて、お互いに見つめあう。
ぱちぱち、とイルカは盛んに瞬きをしていた。
会いたかったイルカ。
そのイルカを目の前にして、カカシは言葉が出ない。
何を言ったらいいのか解らない。
どうしよう、と情けなくも視線を下げるとイルカの指が目に入った。
正しくは指先が。
イルカの指先は包帯やガーゼ、絆創膏で派手に覆われていた。
十本全部。
・・・怪我?
見ていて痛々しい。
イルカは何故、指先をそんなにも怪我しているのか。
大丈夫なのか、傷は深くないのか、病院へは行ったのか・・・。
一瞬で、そんな思いが頭の中を駆け巡る。
「この子、知り合い?」
急に立ち止まったカカシを不審そうに見る、くの一。
応えないカカシから、くの一は関心はイルカに向いた。
「可愛い子ねえ。名前、何て言うの?」
くの一に訊かれて、たじろいだのかイルカが一歩引く。
カカシとくの一を見て、気まずそうに視線を逸らした。
「顔色が悪いわね、大丈夫?」
心配そうな声にカカシも、はっとしてイルカを見ると。
言われてみれば、イルカは元気がない。
顔は、やつれている。
何かあったのだろうか。
「イ・・・」
名を呼ぼうとした時だった。
カカシよりも早くイルカの名前を呼ぶ者がいた。
「イルカ、お待たせー」
同じ年くらいの忍。
イルカと同じ中忍だろう。
「あ、うん」
ほっとしたようなイルカが振り返り、自分の名を呼んだ者の方へと歩いて行く。
その際にカカシとくの一に、ぺこっと頭を下げて。
何も言わずに行ってしまった。
カカシと言葉を交わすこともなく。
イルカと会えたのに・・・。
会いたかったイルカと会えたのに。
結局、為す術もなく立ち尽くすカカシであった。




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