AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


fever out! 4



若いからか傷の治りも早く、イルカは程なくして退院した。
「はああ〜、退院できた〜」
イルカは病院を出ると外で、グーッと伸びをする。
「入院生活、安静ばっかで、ちょっと暇でしたね」
退院に付き添ってくれたカカシに苦笑しながら言う。
「そんなもんでしょ、入院なんて。怪我や病気を治すんだから」
「ま、そうですけど」
しかし、当のイルカより退院に安心したのはカカシである。
内心、ものすごく、ほっとしていた。
・・・だってさー、不意打ちだよねえ、あーいうの。
イルカの意識が戻った次の日、見舞いに行ったことを思い出していた。



「イールカ、来たよ〜」
がらっとイルカの病室を空けると、芳しい花の香りがした。
「あ、カカシさん、こんにちは〜」
ベッドに起き上がり、雑誌を見ていたイルカは顔を上げてカカシを出迎える。
「すみません、連日、来ていただいてしまって」
「ううん、それはいいんだけど」
言葉を発するカカシはイルカのベッドの横にある棚の上に置いてある大輪の花束、それに果物から目が離せなかった。
花束は、ご丁寧にも花瓶に生けられてある。
果物は、これまた、いかにも高級そうなメロンが鎮座していた。
ちなみに、お見舞いと思い出したカカシが持ってきた品と同じだ。
「・・・これ、なに?」
指すとイルカが微笑んだ。
「ああ、それは暗部の方々が・・・」
「暗部〜!」
「はい、カカシさんが来る、少し前に見えられて」
意識が戻って良かったな、と顔を出してくれたとのことだった。
「皆さん、ご親切にもわざわざ来てくださって。俺も、お礼を言いたかったのでタイミングが良かったです」
イルカはカカシから暗部に助けたもらったことを聞いていた。
「・・・・・・そ」
短く答えたカカシは花束とメロンを憎憎しげに睨み付ける。
余計なことをしやがって、というのが本音だ。
しかも、自分が持ってきたお見舞いの品が重なっているなんて!
二番煎じは趣味じゃない。
真似したと思われたら、心外だ。
しかし、持ってきてしまったからには隠すことは出来ない。
「あの、イルカ」
カカシは不承不承、お見舞いの品を差し出した。
「これ、お見舞いなんだけど・・・」
「あ!」
一瞬でイルカの顔が輝いた。
「メロンだ!」
途端に、ニコニコとし始める。
「カカシさん、覚えいていてくれたんですね!」
「え」
「前に一緒に食べようと思ったのにって言ったじゃないですか」
「あー、そういえば」
以前に、やはりイルカは怪我をしたことがあり、そのお見舞いにメロンが入った果物籠を上げたらイルカは大そう喜んだ。
怪我の原因がカカシにあったということもあるが・・・。
そして、一人じゃなくてカカシと一緒にメロンを食べようと言ってくれたのだが、それは叶うことはなかった。
「今度は、一緒に食べましょうね」
「でも、これイルカのお見舞いに持ってきたんだよ」
「いいじゃないですか、一緒に食べたら美味しいですよ」
「うん・・・。そうだね」
そう言われて、やっとカカシの機嫌も直ったのだ。
イルカはカカシのことを一番に考えてくれていると。



それに、とカカシは、あることを思い出して、にやっとした。
イルカに見えないように顔を背ける。
思い出すと、にやけてしまって止まらないのだ。
「あー、もう、やだ!」
意識が回復した数日後、イルカが言った。
「うつ伏せで寝るのも、起き上がっても寄り掛かれないのも!」
「仕方ないでしょ、傷があるのが背中なんだから」
「そんなの解ってますけどね」
日頃、素直とも我が儘とも言いがたいイルカが、珍しく愚痴っていた。
「疲れるんですって、うつ伏せの体勢も、起き上がっているだけってのも」
「もう少し、傷が塞がったら仰向けで寝れるって言われたじゃない」
言われたのは医者にだ。
「そうですけど〜」
はあ、とイルカは諦めたように息を吐いた。
「そうなんですけど、そうなんですけどね・・・」
自分に言い聞かすように呟いている。
そんなイルカを見て、何とかしてあげたいと思ったカカシだが名案も妙案も浮かばない。
美味しいものでも食べようって言っても病院だし、気分転換にどこか行こうっても病院だし。
暇つぶしの雑誌も持ってきたばかりだし、飲み物も食べ物も、その他、必要なものは全部揃っているし。
自分の愛読書をイルカに貸すくらいしか思いつかない。
・・・でもさ。
カカシは考えた。
イルカは、その手の本を読むのか?ということを。
その手の話をイルカを大っぴらにしたことは一度もないし、暗にその手を話題をイルカは避けているようにも思える節がある。
・・・貸して面白くないって言われたら、アレだし。
腕を組んだカカシが、その手のことを真剣に考え出したとき、イルカに呼ばれた。
「ねえ、カカシさん!」
「ん?あ、なに?」
「ちょっとカカシさんの体、貸してくれません?」
「え・・・・・・」
その手のこと考えていたカカシは、不覚にも赤くなってしまった。
「お、俺の体?」
「はい」
イルカは元気よく返事をして、不健康そうなことは全く考えていない顔をしていた。
「カカシさん、ちょっとこっちに来てください」
ぽんぽん、とベッドの上を叩く。
「うん・・・」
「俺に背を向けて座ってくれますか」
「あ、はい」
くるっと背をイルカに見せる形でベッドに座ると、ぴとっと温かい塊りがくっ付いてきた。
「あー、楽〜」
カカシの背中にイルカが凭れかかっているのだ。
「支えがあるといいですねえ」
体を貸して・・・。
単にカカシの体に寄り掛かる。
それだけのことだったのだが。
イルカが自分からカカシに身を寄せてきたのが嬉しかった。
たとえ、それが怪我が原因だとしても。
・・・それに、とカカシは、にやりとする。
背中だけじゃなくて、正面バージョンもあったもんね。
所謂、抱き合う形だ。
それにイルカは少々抵抗を見せたものの「寄り掛からないと疲れるんでしょ、ただ支えるだけだよ」という言葉にイルカは、まんまと乗って正面から抱き合う形になったのだ。
無論、イルカの背中に傷に触れないようにしてカカシは役得とばかりにイルカを抱きしめた。
よほど、居心地良かったのか、そのまま眠ってしまったこともある。
あれは・・・とカカシは、ぐっと拳を握り締めて、密かにガッツポーズになってしまう。
思い出すたび、胸が熱くなる。
あれは好かった、イルカの寝顔最高だった、と。
信頼しきった顔で自分の胸で、すやすや眠るイルカは可愛くて最高だったと。



「カカシさん」
はっと気がつくとイルカがカカシの顔を覗き込んでいた。
「な、なに?」
「なんで、さっきから、ニヤニヤしてガッツポーズしているの?」
何か好いことあったの?と何も知らないイルカは訊いてくる。
「いや、何でもないよ。イルカが退院できて良かったな、としみじみ思っていたの」
「カカシさんには大変、お世話になりました」
「いえいえ」
ぺこり、とイルカは頭を下げる。
カカシはイルカが入院している間、毎日、病院に来てくれたのだ。
偶に暗部の面々も顔を出してくれたりもした。
「イルカのためならば、いつでもどこでも、どんなときでも俺は駆けつけるから」
その言葉に嘘はない。
偶に任務で里にいないこともあるけれど。
「ありがと、カカシさん」
笑うイルカがカカシに目には眩しく映る。
「じゃあさ」
カカシはイルカの手を引いた。
「退院祝いにイルカの好きなもの食べに行こうか」
「わー、嬉しいです」
イルカの好きなものがラーメンだったのは言うまでもない。
嬉しそうに好物を食べるイルカをカカシは幸せそうに見ていたのだった。



fever out!3
fever out!5





text top
top