fever next!4
「うーん」
カカシは布団の中で、ごろごろしていた。
気持ちよくて起きたくない。
ずっとずっと寝ていたい。
そんな気分だ。
「ちょっと朝ですよー、起きてくださーい」
カカシの気分をぶち壊すが聞こえてきた。
朝の静けさがなくなっていく。
「おっはようございまーす、朝でーす」
耳元で声がする。
煩い、とカカシは目を瞑ったまま、両耳を塞ぐ。
布団に潜り込んだ。
頭まで潜り込んだカカシは、また眠くなってきた。
ここなら、いくらでも眠れる。
まどろんだ時だった。
「起きなさーい」
布団が引っぺがされた。
「あーのーねー」
布団がなくなって渋々、カカシは上半身を起こした。
「もーちょい、眠らせてくれてもよくない?」
「だって朝ですもん」
仁王立ちで立ってカカシを見下ろすのはイルカだ。
どん、と構えている。
「朝になったら起きなくちゃ」
「眠いんですけどー」
カカシが抗議すると一蹴された。
「当たり前です、朝は眠いって決っているんです。頑張って起きて、夜眠るんですよ」
分かったような分からないような理屈を述べている。
「それに」とイルカはカカシに顔を近づけた。
「せっかく、一緒にいるんだから朝ご飯、一緒食べましょ」
微笑まれると断れない。
「じゃー、いいけどー」
カカシは、やっとこさ目を開けた。
開けても、眠たそうな目をしている。
「俺の奥さんなら、お目覚めのキッスして起こしてよ。優ーしくね」
「え?」
カカシの言葉にイルカが戸惑ったように目を瞬かせた。
「奥さんってカカシさん結婚しているんですか?」
ものすごく、驚いている。
「既婚者だったんですか?だったら、自分の家に帰らないとダメじゃないですか」
「あーのーねー」
溜め息を吐いたカカシは起き上がったベッドに腰掛けた。
頭を掻く。
「んなわけないでしょ。結婚なんてしてません」
「だって、奥さんて・・・」
「それは」
つ、と白く長い指でイルカを指差した。
「イルカのことに決っているでしょ」
「ええっ!」
またまた、イルカは驚いた。
「俺、女じゃないですよ?性別は男です。もしかして勘違いしてました?」
「あーのーねー」
もっと深い溜め息を吐いたカカシは腰掛けていたベッドから立ち上がり、イルカの真ん前に立った。
「俺の奥さんって言ったらイルカしかいないでしょ」
眉を寄せたイルカはカカシの言葉を考えている。
「ん?なんで、俺が奥さん?」
奥さんって女の人のことだよね?俺は男だから違うと思うんだけど、とぶつぶつ言っている。
「それは例えでしょ、例え」
顔を顰めたカカシは「全く、もう」とイルカの額を突付いた。
「俺の愛読書の恋人の設定は、そうなの!」
「愛読書って本ですか?」
イルカは首を傾げる。
そして、きっぱりと言った。
「本の中の設定を現実に持ち込むなんて・・・」
哀れむような目を向けられる。
「疲れているんですね、カカシさん」
可哀想に、と頭を撫でられてしまった。
イルカに奥さん云々を理解させるのをカカシは諦めた。
カカシの男の永遠のロマンはイルカに伝わらないらしい。
恋人なのだから新婚さんの気分を味わいたかったのに、と思っただけなのに。
やっとイルカの家に泊めてもらって、眠ったのだ。
木の洞で寝ているイルカと一緒に里に帰って来て、そのままイルカの家に来た。
初めて泊まったイルカの家なのに、居心地は最高によくて熟睡してしまった。
今まで、こんなことはない。
夢も見ないで、ぐっすりと眠るなんてことは。
しかも、微かな物音一つですぐさま起きるのが普通なのに、イルカが先に起きて何かやっていても寝ていられた。
睡眠をたっぷり取ることができ、疲れも解消された。
また、ここに来ようとカカシは勝手に決めてしまうほどに。
ただ、残念なことにイルカは一緒に寝てくれなった。
「一人寝じゃないて寝れないんです」とかなんとか言って、カカシが寝ているベッドの下で寝ていたのだ。
次はイルカと同じ布団で睡眠を取りたい。
イルカと寝たら、どんなだろうと考えるだけで、わくわくしてくる。
「さ、朝ご飯朝ご飯」
手早く布団を畳んだイルカはカカシの手を引いた。
「食べましょう。ね?」
「うん」
イルカは楽しそうにしていた。
「誰かと朝ご飯なんて久しぶりです」
ご機嫌なイルカはカカシにご飯を差し出す。
「あ、任務では組んだ相手と飯、食べますけどね」
イルカも自分のご飯を持ってきて、手を合わせた。
「いただきまーす」
「いただきます」
カカシも倣って手を合わせる。
目玉焼きをご飯の上に乗せると、たらーと醤油をかけてイルカは食べ始めた。
ちなみに、おかずは目玉焼きしかない。
カカシもイルカと同じようにして食べてみる。
「あ、美味いね」
「でしょ?」
得意げにイルカは話す。
「ご飯と玉子って相性いいですよね。俺、大好き」
「・・・あー、うん」
イルカの「大好き」という言葉にカカシは顕著に反応したがイルカには気づかれなかった。
「他にも玉子焼きが作れますよ〜」
「へー」
「あとね、ゆで玉子」
「ふーん」
「それと、煎り玉子とかいうのと・・・」
そこまで聞いて、ふとカカシは眉を潜めた。
・・・全部、玉子料理?
「ポーチドエッグは難しくて作ったことないです」
「あのさ」
恐る恐るカカシは尋ねてみた。
「他には何が作れるのかな、イルカは」
「これだけですけど?」
不思議そうにイルカはカカシを見る。
「ビタミンとかは?野菜は?」
カカシは一応、本当に一応、忍者は体が資本なのでバランスの良い食生活を心がけている。
忘れがちだが。
「最後に野菜食べたのはいつ?」
「うーん」と考えたイルカは、てへっと笑った。
「忘れました」
「・・・・・・そ」
玉子焼きとご飯は美味しい。
美味しいけど、それだけじゃダメだ。
一人暮らしの男の食生活は適当だと思うけど、適当すぎてはダメだ。
「あのさあ、イルカ」
カカシは切り出した。
「はい?」
「ご飯、俺、作ろうか?」
少しならカカシも料理が出来る。
少なくともイルカよりはレパートリーが豊富だ。
イルカの家で寝させてもらう代わりと言っちゃあなんだが、一宿の恩義だ。
だが、しかし。
イルカは強固に首を横に振った。
「ご飯は自分で作りますから」と。
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