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その一言が命取り2



「えーっとだな」
アスマは逃げるいい訳を既に頭の中で考え始めていた。
「今日のことだが・・・」
中止、と言おうとしてカカシの声に遮られた。
低い重低音の声に。
「飲むんでしょ、朝まで」
「え、いや、別に。無理しなくてもだな」
「朝まで飲んでやる〜」
「おいおい」
「イルカ先生がいないなんて」
「そうだ、イルカがいないからやめようぜ。な?」
「今日という日を楽しみにしていたのに〜」
もはやカカシはアスマの声は耳に入らなくなっているようだった。



時刻は深夜。
人通りも少なくなってきている。
河岸を変えてカカシとアスマは三軒目の店に来ていた。
もう二人はだいぶ飲んでいるが上忍は酒に対する耐性も培われているのか、酔っ払ってはいるものの、まだまだ飲めそうであった。
「でっさ〜」
飲んでいるカカシは今日、何回目かになる話を飽きもせずアスマにしていた。
「今日はイルカ先生が俺の家に泊まりに来る予定だったんだよねえ」
さっきも言っていた。
「昨日さ〜、二人で食材とか酒とか買って用意してさ、俺はイルカ先生が泊まりに来てもいいように準備も万全にしておいたのになあ」
それも、さっき言っていた。
「初めて俺の家に泊まりにきてくれるはずだったのに」
そこでカカシは手元のグラスに入った酒を飲み干した。
酒が切れて、すぐさま新しいのを注文している。
「初めてだよ、初めて!イルカ先生が俺の家に泊まりにくるのは〜」
「そうか、残念だったな」
アスマが形だけ慰めた。
この台詞も今日、何回目かになる。
「残念無念だよ、本当に」
新しくきた酒に口を付けてカカシは愚痴る。
「本当に残念!イルカ先生が泊まりに来るからベッドのシーツもカーテンも絨毯も新調して、それとなくペアの茶碗だとかカップだとか枕だパジャマとか揃えておいたのに」
カカシは気合が十分だったらしい。
なんの気合か知らないが。



「なのにさあ」
出している片目が、きゅっと細まった。
眉間に皺が寄る。
「俺がこんなにこんなにイルカ先生と想っているのに俺を置いて、あっさり任務に行っちゃうなんて」
「いや、それは仕方ないだろ」
任務は上からの命令だ。
「そっりゃあ、俺も分かっているけど」
飲み干した酒のグラスをカカシはテーブルの上に、どんと置いた。
「それでなくても任務やら仕事やらで会う時間が少なくて寂しいのに。嬉しそうな顔してイルカ先生が任務に行くから」
「そうだなあ」
アスマは疲れてきていた。
酒は飲んでいるが、もう眠い。
カカシは明日は休みだがアスマは普通に任務がある。
家に帰りたかった。
それに今日は、いつもいる酒豪の上忍紅が不在であった。
せめて紅がいてくれたら、と思うのだが、あいにく任務で里にはいない。
そんなこんなで疲れていたアスマは口を滑らせた。



「そりゃあ、イルカが悪いよなあ」
イルカの名を聞いた途端、がばっとカカシが身を起こしてアスマを睨んできた。
「イルカ先生は悪くない」
どうやら、また轍を踏んでしまったようだ。
余計な一言を言ってしまったらしい。
「イルカ先生は悪くないから」
「あ、ああ、そうだな」
カカシの異様な迫力に押されてアスマは、すぐさま謝った。
「すまん、イルカは悪くない。そうだよな?」
「そう」
頷いたカカシは落ち着きを取り戻した。
いつの間に注文したのか、新しい酒を飲んでいる。
「イルカ先生は悪くない」
何度も同じ言葉を繰り返すカカシは、やはり酔っ払っているように見えた。



「だってね、イルカ先生って」
何かを思い出したのか、カカシの頬はだらしなく緩む。
「ああ見えて、すごく可愛いところがあるんだよね」
カカシの周りに飛び交うピンク色のハートマークがアスマの目に映る。
飲みすぎたか、とアスマは、どっと疲れを感じた。
「妙に生真面目だと思ったら、変なところで危うくて」
イルカのことを話すカカシは生き生き、うきうきしている。
「なんだか放っておけないんだよねえ」
うっとりとしていた。
「言葉遣いも丁寧で親切で笑顔が素敵で。でも一本、芯が通っているっていうか」
頑固なところもいいんだよ、とカカシは言う。
「頑固なイルカ先生をこう、あの手この手で落としていくっていうか崩していくっていうか手の内に入れていくっていうか〜」
ふふふ〜とカカシは少々、不気味な笑い声を漏らす。
「どんどん、イルカ先生が俺のことを好きになってくれていると思うと、ぞくぞくするねえ」
背筋が、とカカシは付け足した。
「あー、そーかい」
話が惚気に入ってきたところでアスマの相槌は、お座なりになっていく。
所詮は人の恋の話、他人事だ。
下手に突っ込むと藪から蛇が出る。



延々とイルカを語るカカシはアスマが今まで見てきた中で、一番、楽しそうであった。
イルカの短所長所はもちろんのこと、姿も性格も何もかもを愛しているらしい。
全部、ひっくるめてカカシはイルカを好きなのだと痛感させられた。
しかし。
・・・・・・聞きたくねえ。
タバコを吸いながらカカシの話を聞いているアスマは思った。
人の恋の話なんて。
女性なら、ある程度、恋の話を喜んで聞くと思われるがアスマは特に興味がなかった。
「なのに、イルカ先生は」
はああとカカシが深い溜め息を吐いた。
「大名の娘だか何だかに気に入られてって嬉しそうにしていたし」
「ああ、そうだったな」
任務に出かける間際、イルカがそんなことを言っていた。
「だいたいにして何なの、結婚がどうとかって」
そこがカカシの怒りどころだったらしい。
きっと片目が釣りあがった。
「俺のイルカ先生に!何てこと言うんだ、どっかの大名の娘は!」
盛り上がったカカシは続ける。
「俺だってイルカ先生と結婚できるなら、とっくにしているのに!」
「まあ、そうだなあ」
アスマはタバコの煙を吐き出して簡単に言った、疲れていたから。
「男同士だから結婚は無理だろ」
途端、カカシが一気に意気消沈、ではなく撃沈した。
「そんなの分かっているさ」
あーあー分かっているよ、とやけ気味になっている。
「アスマ、次の店行くぞ!」
「・・・まだ飲むのか?」
アスマは、げっそりとしている。
「夜はまだまだこれからだ!」
カカシは元気だった。
イルカ、早く帰って来てくれと願わずにはいられないアスマであった。



その一言が命取り1
その一言が命取り3



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