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金の切れ目が縁の切れ目4



「いいですってば。」
カカシに手首を握られたイルカは、カカシの家に行く間、何度も逃げようと試みて失敗していた。
「俺、自分の家に帰ります。はたけ上忍の家に行くなんてできません〜。」
喚きながらもイルカはカカシに、否応も無しに引きずられている。
「離してくださいって、はたけ上忍〜。触らないでください〜。」
イルカはカカシに右手首を握られているだけのに、それは、どうやっても外れない。
軽く握られて、力も入ってないようなのに、カカシの手は外れないのだ。
「い〜や〜だ〜。」



とうとう、イルカは叫びだした。
「誰か〜、たーすーけーてー。」
往来で幾人が二人に注目し始めてカカシは、ちっと舌打ちする。
「もう、往生際が悪いなあ。」
イルカの助けを求める叫び声を聞いたカカシは、ひょいと軽々、イルカを肩に担ぎ上げた。
これでは、もう絶対に逃げられない。
この体制で上忍から逃げることは不可能だ。
「んじゃまあ、行くよ。」
カカシが走り出したと思ったら、イルカはカカシの家にいた。



見たこともない部屋に、一瞬で移動していたイルカは目を丸くしている。
「ここ・・・。」
「ん、俺んちだ〜よ。」
カカシに担がれていたイルカは、カカシにサンダルを脱がされて、ぽんと床に座らされた。
その目の前にカカシも座る。
「ここが俺の家です。」
「へええ。ここが、はたけ上忍の家ですか。」
イルカは珍しそうに、部屋を見渡した。
「意外に物が少なくて、簡素な居住まいなんですね。」
俺、上忍て、もっとゴージャスな感じの家に住んでいるんだと思っていました、と感想を述べている。
「ゴージャスねえ。まあ、人に寄るんじゃないの?」
「そうですね。好みってありますもんね。」
そこで二人は、はははは〜、と顔を見合わせて和やかに笑ったのだが、はっと気がついたイルカが表情を引き締めた。



「そうじゃなくて!はたけ上忍。」
「ん、なあに。」
「俺が、はたけ上忍の家で、はたけ上忍と一緒に住むなんてできません。」
「なんで?」
カカシが首を傾げるとイルカが、きっぱりと言った。
「気を遣います、お互いに。嫌でしょう、そういうの。」
「べっつに〜。嫌だったら連れて来てないよ。」
「・・・そ、それに。」
暢気なカカシの言い分に、多少、イルカは怯んだようだった。
「今まで一人だけだった空間に、たった一人の人間が増えただけでも生活するのって大変なんですよ。他人と生活するなんて窮屈に思いますよ、絶対に。」
風呂とか飯とか着替えとか、その他諸々、生活が激変するんですから、とイルカは経験したかのように力説する。



「第一!」
イルカは声を張り上げた。
「俺、一銭も金持ってないし。生活費の割り勘とかできません。」
「だから、俺の家に連れて来たんでしょうが。」
呆れた声をカカシは出した。
「そんなの全部、了承の上で連れて来たのに、今さら、何言ってんの。」
「・・・う、それは。」
反論できなくてイルカは口篭る。
「で、でも、やっぱり・・・。」
「そんなに気になるのなら。」とカカシは腕組みしてイルカを見据えた。


「体で払えばいいんじゃないの。」


「・・・・・・え。」
イルカの顔が心なしか、蒼ざめたのは気のせいか。
カカシは自分の言ったことが、どういう意味を持つか深く考えずに言葉を続ける。
「そんなにお金のことを気にするなら体で払ってくれれば俺は、それで構わないよ。」



しーんと二人の間に沈黙が落ちた。
イルカは、目一杯、目を見開いてカカシを見詰めている。
真っ青な顔が、白くなったような気がしてカカシは眉を寄せた。
イルカの様子がおかしい。
俺、何か変なこと言ったっけ。


お金がないなら体で払えって言っただけ・・・。


・・・それって。
カカシは自分の言ったことを反芻して、自分で赤くなった。
普段、読んでいる愛読書に、そんな台詞があったような気がする。
そんで、その台詞の意味するところは不本意な形で不埒な行為を要求することで・・・。
そこまで考えて、目の前のイルカを見ると明らかに動揺しているのが見て取れた。
・・・動揺するよね。


カカシも自分で言ったことに動揺していた。
そんな意味で言ったんじゃないのに。


ごほん、と咳払いをしてカカシは、この場の雰囲気を変えるべく最もらしく言った。
「体で払えばっていうのはさ。」
イルカの体は強張る。
「それは体力労働のこと。家事とかやれくれれば、それでいいよ。」
お金にことはチャラにするから、とカカシが言うとイルカの顔に赤みが差した。

「そ、そっか。家事ですね。」
ほっとして胸を撫で下ろしている。
「俺、てっきり・・・。」
自分が持っている愛読書の中にある、あられもない言葉がイルカの口から出るのではないかとカカシは冷や冷やしたが、予想とは違っていた。

「どこかに身売りでもされるんじゃないかと思いました。」
「・・・身売り?」
「今、新薬開発部とか被検体の募集とかしているし、火影様も常に仕事の助っ人要員募集しているし。」
そこに売り渡されるのかと、イルカは別な心配をしていた。 「一回、それらの募集に応じると二度と帰って来れないっていうのが木の葉の里の七不思議の一つになっていますから。」
「いや、それはしないけどね。」
カカシは、無意識にだけども愛読書の台詞を口から出てしまったことに反省する。
愛読書の読み過ぎかもしれない。
ははっは〜と疲れた笑いがカカシの口から漏れた。



笑っているカカシを不思議そうに見ていたイルカが質問してくる。
「何か面白いことでもありましたか?」
「い、いや、ないよ。」
ごほごほ、とカカシは咳払いをすると話題を変えるかのようにイルカに訊いた。
「で、えーと、なんて呼べばいい?」
「俺ですか?名前でいいです、イルカでいいですよ。」
にこっと笑ってイルカは答える。
「そう。じゃあ・・・イルカ。」
ますます、にこにこと笑ってイルカは返事をした。
「はい、はたけ上忍。」
「あ、俺もカカシでいいよ。その階級のついた呼び名は、ちょっとね。」
家では、できるだけ外のことは忘れたいから、と説明するとイルカは、ちょっと躊躇した後にカカシの名を呼んだ。



「・・・カカシさん、でいいですか?」
「うん、いいよ。」
イルカに名を呼ばれてカカシは、なにやら、擽ったいような感覚に陥る。
「じゃあ・・・カカシさん。」
「はい。」
名を呼ばれて自然に笑みが浮かんだ。
カカシの笑みを見てイルカは安心したようだ。
何回か「カカシさん。」とカカシの名を呼んで嬉しそうにしている。
ふっとカカシの胸に微かに宿るものがあった。
それは温かいような甘いような懐かしいような、言葉にできない気持ち。
イルカが傍にいて名を呼ばれると、胸に沸きあがってくる気持ちだ。
なんだろう、これ。
答えが見つからなかったが、カカシは気にしなかった。
だって久方ぶりに満たされていたから。



こうして二人の生活はスタートしたのだった。



金の切れ目が縁の切れ目3
金の切れ目が縁の切れ目5






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