金の切れ目が縁の切れ目3
「お腹、空いているの?」
カカシが訊くととイルカは、へへへと誤魔化すように照れ笑いを浮かべた。
「あー、そういえば、そうかもしれません。」
「そうかもって、現に空いているんでしょう?」
イルカの腹の音が、再び、鳴る。
激しく鳴る音は、ご飯が食べたいと主張していた。
「うーん、でも大丈夫です。」
「大丈夫って何が!いつから食べてないの?」
問い詰めるカカシにイルカは、首を振る。
そして、一歩、後ずさりした。
「そのう、はたけ上忍が気にすることでは・・・。」
「いつから食べてないの?」
逃げられないようにイルカの肩を掴んで目を合わすと、カカシは強い視線を送る。
その視線に負けてイルカは答えた。
「・・・里に帰ってきてからは何も。」
「任務から帰ってきて何も!何も食べてないの?」
イルカは、こくりと頷く。
ということは、丸一日以上は食べてないことになる。
食べ盛りで成長期の少年は食べなければ成長しない。
少年から青年へ、体つきが微妙に変わる年頃なのに。
柄にもなく、カカシは不安になる。
この人、任務では、しっかりとした印象だったのだが、里に帰ったら自分のことは無頓着なの?
ちょうど、時間は昼に差し掛かる頃だ。
「ちょっと来なさい。」
カカシはイルカの手を握ると半ば引き摺るようにして、飯屋に直行した。
飯屋といってもカカシがよく立ち寄る野菜を主とした定食を出す店だったが、この日はカカシは、余り食べない肉、揚げ物系を食べていた。
昼飯代は奢ると言ったカカシに最初は、ものすごく遠慮したイルカであったがカカシの決心が固いのを知ると、じゃあカカシを同じものなら食べると言い出したので仕方なくだ。
イルカには野菜よりも肉などの蛋白質を食べさせた方がいいと思ったのだ。
目の前のイルカは、ものすごく美味しそうに、ご飯を食べている。
嬉しそうに食べるさまは、見ていて気持ちがいい。
カカシも釣られて食べながら、イルカに気になることを訊いた。
「これから、どうするの。」
「これからってなんですか?」
イルカは肉を頬張って口を、もぐもぐさせている。
「これから任務の後の休みに入るでしょう。お金がないのに、どうするの?」
カカシも休みが貰えるのでイルカも、それに倣って同じ日数だけ休みになるだろう。
それは多分、五日間くらいだ。
「あー。」
ごくん、と口に入っていたものを飲み込むとイルカは答えた。
「とりあえず、家に帰ります。」
「そう。」
ちょっと、ほっとしたのだが、次の瞬間、嫌な予感がして尋ねた。
「ねえ、その家・・・。」
「俺んちですか?」
「そう、その俺んちは電気やガス、水道は・・・。」
「全部止めています。」
これまた、イルカは何でもないことのように、あっさり答えた。
「任務で、ほとんど家にいないし止めてないとお金が掛かるし。家の庭に井戸があるので水には不自由しないんですよね。」
イルカの言い分にカカシは無言になる。
「水さえがあれば、大体なんとかなるもんですよ。」
けろり、とした顔をでイルカは言った。
「・・・風呂はどうしてんの?」
「あ、井戸水で。」
「・・・お湯は?」
「使いません。」
「・・・夜は?明かりは?」
「基本的に点けません。どうしてもいる場合は、蝋燭か火遁で。」
「・・・食事は?」
「任務に出れば食事って付きますよね。だから家で食べたことはありません。」
それで任務を受けたがっていたのか、つまり食費を浮かすために。
お金を極力使わないために。
カカシは、なんだか頭が痛くなってきた。
目の前の生き物とは感覚が違いすぎる。
イルカは年下だが、そんなに年齢が離れているようには見えないのに考え方が全然違うような気がする。
「それって家なの?そんなところへ帰って何すんの?」
聞いた限りじゃ、イルカの家に食料なんてなさそうである。
「うーんと、そうですねえ。」
イルカは、ご飯を口に運びながら考えていた。
「太陽が昇ったら起きて太陽が沈んだら寝るとか、そんな感じですかね。」
「・・・休みは五日もあるんだよ。その間、水だけで過ごすつもり?死ぬよ。」
「そんなんで死んだりしませんて。」
イルカは軽く流すと「はたけ上忍は大げさだなあ。」と笑っている。
そして、食べ終わったイルカは、ぱんと手を合わせた。
「ご馳走様でした。」
すっごく美味しかったです、とカカシに頭を下げる。
「ん、ご馳走様でした。」
カカシも食べ終わり、カカシが勘定を払って店を出た。
店の前で、もう一度、イルカはカカシの頭を下げる。
「本当にありがとうございました。」
礼を述べてから「お陰で生き返りました。」なんて言っていた。
カカシは、あることを思いつき、それを考え難しい顔つきになっている。
どうしようか迷っているようでもあった。
イルカはカカシの思惑を知らず挨拶をして立ち去ろうとしている。
「はたけ上忍、それでは失礼します。」
去ろうとするイルカの肩をカカシは知らず掴んでいた。
「まだ、なにか?」
「これから、自分の家に帰るんでしょう?」
「はあ、そうですね。」
「でも、家には何にもないんでしょう?」
「まあ、そうですけど。でも割合、快適ですよ。」
「んなわけないでしょ。」
語気を強めたカカシは眉を潜め、イルカを見詰める。
そして言った。
「休みの間、俺の家に来なさい。」
「・・・・・・え。」
「俺の家に来て生活すればいい。」
カカシの家は広くはないが狭くもない。
二人くらいなら余裕で生活できるだろう。
それに、とカカシは急な展開に、びっくりして何故か身構えているイルカを見る。
今のところ自分でも理由は解らないが、イルカを放っておけなくなったのだ。
何故ゆえ、そんなにもお金が必要なのかということも気に掛かるし、それにだ。
しっかりしているようで、全く、しっかりしてないんだもん。
そんな言い訳を自分にして、カカシは自分の家にイルカを連れ帰った。
多少、強引な手口ではあったが、また傍目から他人が見ればイルカを攫っているようにしか見えなかったが。
金の切れ目が縁の切れ目2
金の切れ目が縁の切れ目4
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