金の切れ目が縁の切れ目28
しかしイルカの行方は意外なところから知れた。
「あー、そういえばイルカがなあ。」
悲しみに暮れながら、上忍の控え室で待機していたカカシにアスマが思い出したように言ったのだ。
「・・・イルカ?えっ、イルカ!」
イルカの名前のカカシは過剰に反応する。
「何でアスマがイルカの名前を出すんだよ!」
殺気まで出して詰め寄ってくるカカシを面倒くさそうにアスマは手で払いのける。
「イルカからカカシに伝言を頼まれたんだよ。」
「だから何を!」
「アカデミーの新人教師の研修で、一週間ほど里外に行くから帰って来たら会いに行くってさ。」
「アカデミー?教師?」
眉を潜めて首を傾げるカカシにアスマは呆れたように煙草の煙を吹きかけた。
「なんだよ、知らなかったのか?イルカはアカデミーの先生になるんだって勉強、頑張っていただろう。」
「アカデミーの先生に・・・。」
「先生になるのが子供のころの夢だったって前に言っていたぞ。」
「夢・・・。」
本当に知らなかった様子のカカシに、逆にアスマが訊く。
「本当に知らなかったのかよ。一緒に住んでいたんだろ?家でイルカと何、話していたんだ。」
「何って。」とカカシは口篭る。
「好きな本や食べ物のこととか、どこに出かけようとか買い物に行こうとか話して・・・。任務関係のことは、殆ど話さなかった。だってイルカと二人でいるのに仕事のことを思い出すのは嫌だったんだ。」
「ははあ。」
アスマは分かったような口を利く。
「だからイルカも遠慮して自分のことも話さなかったんだな。」
「・・・そっか。」
カカシは項垂れた。
イルカに遠慮するなと言っておいて、知らず知らずのうちに自分がイルカに遠慮させていたのだ。
「俺って、駄目なやつだなあ。」
肩を落としたカカシは反省する。
「まあ、そうでもないんじゃねえのか。」
アスマが見かねたようにカカシの肩を、ぽんと叩く。
「だってよう。」
煙草の煙を肺に吸い込んで、吐き出してからアスマは言った。
「イルカはカカシのこと好きなんだろ。好きな人と一緒にいるってだけでイルカも嬉しそうにしていたからなあ。」
イルカの心の支えとやらになっていたんじゃないのか、と言われる。
「え、何それ?イルカが俺のこと好きだって!」
新事実にカカシの胸が高鳴る。
覆面から出ているカカシの片目が、きらっきらっと輝いてアスマを見るものだからアスマの方が引いてしまった。
「ああ、まあなあ。」
しどろもどろになりながらアスマは、一応、説明する。
「イルカはカカシに金を借りていたんだろ。それは全額返済されているのは銀行の残高で確認したか?」
「え、ああ。」
イルカが消えてからカカシは、とりあえず銀行に行き残高を確認した。
お金をイルカに貸してから一度も残高を見たことはなかったのだが、初めて見たイルカのお金の返済は、こつこつと少しずつ行われておりイルカらしかった。
だが最後に返済額が他のものより大きく、それも最後に大きな金額にて一括で返済が終わっておりカカシは不思議に思っていたのだ。
「イルカはな、自分の家を担保にして銀行からお金を借りてカカシに借金を返済したんだぜ。」
驚愕の事実をアスマは語る。
大事な家を担保にしてまでカカシにお金を返したかったのか。
カカシとの関係を清算したかったとか。
じわじわとカカシの胸に黒いものが渦巻いていく。
しかし、アスマの次の一言で、黒く渦巻くものは取り除かれた。
「イルカは言っていたよ、『これ以上、好きな人に迷惑掛けたくないから借りているお金を返したい』ってな。」
好きな人に迷惑を掛けたくないから、好きな人に・・・。
それって俺のことだよな。
カカシの胸は幸せに包まれたのであったが、唯一心残りがあった。
できれば、それはイルカ自身の口から俺に告げてほしかった、ということである。
それに、とカカシは軽く目の前のアスマを睨む。
いつの間にイルカと懇意な間柄になってんだよ。
溜め息を吐きながら、早くイルカに会いたい、とやっぱり思うカカシなのであった。
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