金の切れ目が縁の切れ目27
普段は気鬱な任務もイルカに見送られたお陰で、気持ちが羽のように軽く、おまけに喜び勇んで召集された任務に行ったことなんて初めてだった。
任務が終わると、これまた、機嫌よく里に帰って来たカカシは報告書を出すと真っ直ぐに家に帰った。
自分の家にだ。
イルカが待つ家に帰るのが、今日ほど嬉しいことはない。
「ただいま〜。」
がちゃり、と玄関の扉を開けるとカカシは、真っ先にイルカの姿を探した。
「イルカ、帰って来たよ〜。」
しかし返事はなく、家の中は静まりかえったままだ。
人の気配はない。
「買い物にでも行ったのかな。」
それにしては部屋の中が、がらんとし過ぎていて薄ら寒く感じる。
心なしか部屋の中の荷物も減っているようだ。
減っているようではなくて、実際に荷物は減っていた。
イルカの荷物だけが部屋の中から無くなっている。
「イルカ!」
慌ててカカシは部屋中を探してみたがイルカの姿は見つからない。
「・・・イルカ。」
散々、部屋の中を探した後、テーブルの上に二つに折った紙切れが置いてあるのが目に付いた。
「手紙?」
紙を広げて、カカシは中味を読む。
そこにはイルカの字で、こう書かれていた。
カカシさんへ
お借りしていたお金の返済が終わりました。
銀行で残高を確認してください。
お金を返し終えたので自分の家に帰ります。
今までお世話になりました。
ありがとうございました。
イルカ
追伸として、後日改めてお礼に伺います、と書かれてある。
「嘘・・・。」
カカシの手から紙が離れて、ひらひらと床に舞い落ちた。
要するにイルカはカカシに借りたお金を全部、返したのでカカシの家から出て行ってしまったのだ。
思えば、お金を貸すから、その間、一緒の生活してカカシの家で住むという条件だったような気がする。
気がするが、カカシは割り切れない。
「こんなことって。」
がっくりと床にカカシは膝をついた。
ショックで立ち直れそうない。
イルカが自分の家にいないことで、こんなにも心に打撃を受けるなんて・・・。
深い深い溜め息が出る。
そしてカカシの脳裏を、ある言葉が掠めた。
金の切れ目が縁の切れ目。
自分とイルカはお金を貸し借りしてだけの間柄だけだったのか。
そうじゃないでしょ、とカカシはイルカを恨めしく思わずにはいられない。
自分がイルカを好きだってことはイルカだって知っているはずなのに。
こんなに、こんなに好きなのに。
そりゃあ、イルカから明確な返事はもらっていなかったけど、けどさ!
任務に行く前のイルカとの逢瀬を思い出す。
イルカは自分に心を許してくれたからこそ秘めた心のうちを話してくれたのだと思うし、カカシに甘えるように体を寄せてきたのも好意の表れただったと思うのだ。
もう少しで、キスもできそうだったのに。
あんないい雰囲気になっていたのに、今更、違うなんて言わせない。
なかったことにしてくれなんて言われても、到底、了承できるはずもない。
言葉にしてはくれなかったけど、イルカだってカカシのことが好きなはずだ。
少なくとも嫌われてはいないのは確かである。
よりよろとカカシは立ち上がるとイルカの姿を求めて家の外へ出た。
自分の家に帰ったと書き記されているのだから、イルカは自分の家にいるのだろう。
会いたい。
その一心だけで、カカシは任務帰りで疲れた体を引き摺って歩く。
だけども漸く辿り着いたイルカの家には、肝心のイルカの姿はなかった。
その事実に、再び、打ち拉がれるカカシである。
いったいイルカは、どこにいってしまったのか。
思いつく場所は全部探してみた。
それどころか、里中探し回ったのに、里のどこにもイルカの姿は見当たらない。
行き場を失ったカカシは、失意のどん底に落とされて、不覚にも涙してしまったのであった。
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