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金の切れ目が縁の切れ目26



カカシの意図を悟ったのかどうなのかイルカはカカシの唇を避けるように自分の頬を、ぺたりとカカシの肩口に押し付けた。
行き場を失ったカカシの唇は虚しく中に浮く。
ともすれば、甘えたような仕草をするイルカのことを複雑な表情をしてカカシは抱きしめた。
なんとも口惜しい限りだがイルカが静かに話し始めたので、内心は渋々であったが、それを聞くことにした。



「俺、後悔なんてしてません。」
イルカはカカシが抱きしめてくれることに力を得たのか淡々と少しずつ話しをする。
「自分のしたことに後悔はしていません。」
それはカカシからお金を借りて行った一連の出来事を指すのだろう。
「亡くなった父も母も、人を助けるのに力を惜しむなと言っていましたし・・・。」
イルカの額が強くカカシの肩に押し付けられた。
「お金だけあっても仕方がないんです、お金で人は生き返ったりしませんから。」



堪えるようにイルカは言った。
「・・・お金って人を変えますよね、お金があってもなくても人間は同じなのに。」
嫌な思い出でもあるのだろうか、とカカシは思った。
だからイルカはお金に余り執着してないのか、とも。
「父や母が亡くなった頃、お金って大事なんだなあと思うと同時に、お金で人って変わるんだなあ、とすごく実感しました。」
微かにイルカの体が震える。
「助けてくれた人もいましたし、そういう人ばっかりじゃないって分かってはいましたが・・・。」
イルカが、そんな体験をしたのは里が大きな厄災に見舞われた頃でイルカは幼い子どもであったに違いない。



里が破壊されて、一時的に荒んでしまった人々を目にしたイルカはショックを受け、両親が亡くなったのも重なって、心に大きな傷を負った。
つまりはトラウマになってしまったということではないだろうか。
カカシは推測する。
その結果、人に関わることや触れることを、極端に恐れるようになったりした。



見に覚えのある感情だったので、カカシにも解った。
多かれ少なかれ、あの厄災のことは人の心に未だに影を落としている。
その形は、人それぞれ違うけれども。



人を信じたい、でも信じても、いつか人は変わる。
イルカは、そう思っていたからこそ、カカシからお金を借りる時、絶対に他言しないでほしい、例え自分が死んでも、と穏やかではない約束をさせたのではなかろうか。
総ては、推測の域を出ないけれども、かと言ってイルカに真実を聞いても、そう簡単に言うとは思わない。
カカシも今は聞こうとも思わないが。



イルカの気持ちを聞けて色々なことが解ったような気がしてイルカに、また一歩、近づけたと思うカカシである。
そのままイルカを抱きしめ、宥めるように背を撫でていたのだがイルカは、そんなカカシに何かを感じたのか、いっそう、身を寄せてきた。
ふっとイルカの息がカカシの首筋に当たほど近くになったのを感じてカカシは、こんな時なのに不謹慎にも先ほどの続きを再開したいと思ってしまう。
自分の唇をイルカの唇に寄せてから、の続きだ。



できれば、このチャンスを逃したくない。
折角、イルカが自分に心を開いてくれいるのに。
初めて会ってから今が一番、好い雰囲気だ。
チャンスなのに・・・。
心の中で四苦八苦するカカシの腕の中にいたイルカが、ふっと顔を上げた。
正面からカカシの顔と向き合う格好だ。
イルカも、さっきの続きを望んでいる!と思ったカカシであったが、それは違っていた。



「あ、式が・・・。」
イルカの指差す方向を見ると白い鳥の形をした式が頭上を舞っている。
「カカシさんに任務じゃないでしょうか?」
「・・・そう。」
いい雰囲気を邪魔されたカカシは、ぼっと手の平に火の玉を浮き上がらせていた。
「ちょーっと、待っててね、イルカ。」
火の玉を式に投げつけようとする。
「すぐにあれ、燃やしちゃうからね〜。そして続きをしようね〜。」
「え?何、言ってるんです。」



カカシの行動を止めようとイルカが急いで言った。
「あれは火影様直々の式じゃありませんか。カカシさんに緊急の任務なんですよ。」
行ってきてください、とイルカに言われてカカシは、しょうがなく火の玉を引っ込めた。
「え〜、行きたくないなあ。」
駄々を捏ねる。
「駄目です、怒られますよ、火影様に。」
イルカに促されると行かないわけにはいかない。



「じゃあ、行ってくるね。」
カカシの言葉にイルカは微笑んだ。
「行ってらっしゃい、気をつけて。・・・・・・それから、ありがとうございました。」
その言葉を聞いた途端にカカシの機嫌は直った。
「うん、気をつけて行って来るね!家で待っていてね〜。」
「はい。あの、カカシさん、俺・・・。」
行きかけたカカシにイルカは何かを言いかける。
「ん?」と首を傾げたカカシにイルカは首を振った。
「・・・なんでもありません。任務、行ってらっしゃい。」



行って来ます〜、と元気よく手を振るカカシに小さく手を振り替えし、見送りながらイルカは呟く。
「俺、カカシさんに言わなきゃならないことがあるんです。」
言わなきゃならないことが・・・。
イルカの言葉は風に吹かれて掻き消えてカカシの耳には届かなかったのであった。




金の切れ目が縁の切れ目25
金の切れ目が縁の切れ目27






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