金の切れ目が縁の切れ目22
カカシが朝目覚めると、既に腕の中にイルカの姿はなかった。
「あ、おはようございます。」
起きたカカシに気がついてイルカが、いつものように声を掛けてきた。
「朝ご飯、用意してありますよ。」
見ると朝食の準備ができていて、食べるだけになっている。
「ああ、うん。」
起き抜けのカカシは、ぼうっとしながら返事をした。
「おはよう。」
朝食の席に着き、いただきますと手を合わせてから食べ始める。
イルカも、ごく自然な感じで朝食を食べている。
朝食を食べ咀嚼を繰り返しているうちにカカシの頭は、だんだんと目覚めてきた。
はっきりとするにつれて、カカシの箸は止まっていく。
そういえば昨日、とっても大事なことをイルカに言ったはずだ・・・。
眠る間際に言ったけど、ちゃんと覚えているし、夢じゃない。
確かに、自分は言ったはずだ。
イルカに好きだって・・・。
告白したのだ、イルカに。
そのことを自覚するにつけ、カカシの顔は赤くなっていったのだがイルカは、カカシの変化に気がついてないようだった。
どちらかというと何か考えに囚われているようで、黙々と朝食を食べている。
カカシに、お茶やご飯のお代わりを尋ねてはくるが、それだけだ。
カカシは右往左往する頭で何とか朝食を食べ終わり、朝食の片付けが終わったイルカに思い切って尋ねてみた。
「あの、イルカ。」
「はい?」
イルカが首を傾げてカカシを見る。
そんなイルカがカカシには可愛らしく見えるのは目の錯覚だろうか。
「俺、昨日、イルカに・・・。」
「昨日。」
ぽつり、とイルカは呟き俯いた。
カカシが言ったことを覚えているらしい。
「好きだって言ったよね、イルカに。」
イルカは俯いたままだ。
そんなイルカにカカシは、きっぱりと言った。
「イルカが好きだから、返事がほしい。」
俯いたままのイルカは動かない。
返事もない。
堪らなくなってカカシは言い募った。
「三年も一緒にいて、自覚するのが遅かったけど。好きなんだ、イルカのことが。」
ようやく自分に素直になってカカシは、一生懸命に想いを伝えようとする。
「遠慮はしないでって言ったのに、結局、イルカは俺に遠慮していた。俺と距離をとっていたでしょう。それが、とても悲しくて苦しい。それに気がついたのは最近で、俺も馬鹿だったんだけど・・・。」
このままではイルカを失ってしまうような気がした。
相性がいいとか気が合うとか、そんなのは言い訳で、きっと最初からイルカのことが好きだったのだ。
心から、そう思った。
「ねえ、イルカ。」
諾、と返事してほしい。
その返事だけが欲しかった。
なのに、イルカは微動だにしない。
俯いた顔が、どんな表情をしているのか解らなかった。
ただ、イルカの肩が迫り上がり握っていた拳に、ぎゅっと力が込められ、指の爪が手の平に食い込んでいるのが見えた。
「イルカ。」
そっとカカシが名を呼ぶとイルカは、ついに顔を上げて真っ直ぐにカカシを見た。
目には揺るがない強い意志の光が宿っている。
イルカは迷うことなく、はっきりとカカシに告げた。
「駄目です、ごめんなさい。」
その後に、すぐ「すみません。」と言葉が続く。
カカシの想いは受け取れないという意思表示だった。
まさか断られるとは思っていなかったカカシのハートは粉々に砕け散った、という表現が、この場合適切かもしれない。
イルカは、もう一度「ごめんなさい。」と謝って、唇を強く噛んで俯いた。
カカシの耳には謝るイルカの声が辛そうに聞こえる。
イルカは身を翻して玄関に向かい靴を履く。
「これから友人と会う約束があるので、ちょっと出てきます。」
夕方までは戻りますから、と言い残して出て行ってしまった。
玄関の扉が、ぱたんと閉まる。
一人、部屋に取り残されたカカシは、ただただ呆然としていたのだった。
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金の切れ目が縁の切れ目23
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