AIで普通の動画を3D動画に変換する
ハイスペック専用サーバー
39周年!BIGサンクスキャンペーン


金の切れ目が縁の切れ目20



それからもカカシはイルカと一緒に暮らしていた。
一年が過ぎ、二年が過ぎて、イルカとの生活も三年目に入った。
カカシはイルカとの共同生活が上手くいっていると思っている。
仲良くしていると思うし、イルカもカカシに打ち解けてくれていると思っていたのだ。



ただ、腑に落ちない点があった。
カカシも任務に行くがイルカも、勿論、任務へと行く。
だが時々、任務が終わって里へ帰ってきているはずなのに、イルカはカカシの前に姿を現さないことがあった。
心配はしていたが、イルカの性格を考えると自分からから言い出さない限り訊かない方が無難だろうか、と柄にもカカシは悩んだりしていた。



そんな時、以前、イルカとのことを打ち明けた例の顎髭を蓄えた仲間に言われた。
髭の仲間はアスマという。
「イルカの調子はどうだ、大丈夫か?」
「え・・・。」
「いや、なあ。」
今回、イルカはアスマと任務が一緒だったらしい。
アスマはイルカのことをカカシから聞き、尚且つ、イルカが男性だと解ったときも特に揶揄いもせずに真面目にイルカに接してくれていた。
イルカも世話好きのアスマに懐いているようで、何かの話の拍子にアスマの名前がイルカの口から出たりしている。
仲がいいのは良いことだと思いつつもカカシは、ちょっと面白くなった。



話し難そうにアスマは切り出した。
「イルカのやつ、今回の任務で無茶しやがってなあ。結果的には任務は成功したが、あいつの体、ぼろぼろになっているはずだぜ。」
家に帰って、ゆっくり休めって言ったんだがなあ、とアスマは、ぼやいている。
「カカシの家がイルカの家なんだろ?」
「・・・そうだけど。」
「イルカは帰ってないのか?」
「・・・まだ。」
「そうか、任務は昨日終わって深夜、里に帰って来たんだが・・・。」
つまり、イルカは昨夜のうちには里にはいたことになる。
ならば、何故、イルカはカカシの家へ帰ってこないのか。



「わかった。」
カカシから低い声が唸り出た。
「サンキュ、アスマ。」
くるりと、カカシは踵を返す。
「探してみるよ。」
それだけ言うとカカシの姿はアスマの前から、一瞬で掻き消えた。



最初に向かったのはイルカ自身の家であったが、家は鍵が掛かっておりイルカはいなかった。
だが、カカシはイルカの残り香のようなものを感じとっていた。
つい、さっきまで、ここにいたような気がする。
そして玄関から庭に回り、家の裏手に回ると、果たしてイルカがいたという証拠が見つかった。
井戸が使われた形跡があったのだ。
井戸の水を使い、何かを流した後が地面に残っている。
その流れた水の残った後からは微かに血の匂いがした。
血の匂いを嗅いだカカシの顔は固く強張り、次に悲しげな顔になり目が伏せられた。




カカシが自分の家に帰るとイルカは既に帰っていた。
「あ、お帰りなさい。カカシさん。」
いつものように出迎えてくれた。
イルカはカカシの不在の間に合鍵で家に入ったのだろう。
それは、別に構わない。
自分が不在の時は、そうするように言っておいたのだから。



玄関でカカシを出迎えたイルカからは水の匂いがする。
イルカの家の井戸の水と同じ匂いが。
「カカシさん?」
何も言わないカカシをイルカは不思議そうに見た。
「どうかしましたか?」
気遣うようにカカシに訊いてくる。



そんなイルカの頭にカカシは腕を伸ばして髪を一房、掬い取った。
イルカの髪は湿っている。
そのまま、イルカの肩まで腕を下ろして、肩を掴んで自分の方に引き寄せるとカカシはイルカを抱きしめた。
イルカの体は、初めて会った頃から、だいぶ成長してカカシとの身長の差も僅かになってきていた。
「・・・冷たいよ、イルカ。」
イルカの体は体温が低く下がっていて冷たくなっている。
「体が冷えている、どうしたの?」
腕の中のイルカの体が強張った。
「あの、これは・・・。」
「井戸水で体を流したから?」
知っていてカカシは態と尋ねた。



ぎゅっとカカシはイルカの体を抱きしめながら、ふと、あることを思い出していた。
一緒に暮らして三年間、イルカが一度も任務から汚れて帰ってきてないこと、カカシが帰ってくると家は必ず綺麗に掃除してあることなどだ。
三年間の間、一度として、カカシの家が散らかったり汚れたりしたところを見たことはなかった。
イルカも、同様でカカシの前では、いつも、きちんとした姿をしていた。
そればかり見慣れて、まるで自然のことのようになっていたので気がつかなかったのだ。
その不自然さに。
イルカはカカシとの暮らしで無理をしていたのかもしれない。



カカシはイルカと一緒にいること、生活することを楽しいと思っていたのだが、それは自分だけかもしれないとカカシは心のどこかで思い始めていた。




金の切れ目が縁の切れ目19
金の切れ目が縁の切れ目21






text top
top