金の切れ目が縁の切れ目2
その後、まもなく任務は終了し、カカシたちを含めた全員は里へと帰還した。
イルカはカカシとは立場が違うので、一足早く荷物を持って里へを帰ってしまっていた。
それが少しだけカカシは寂しく感じた。
もうイルカには会えないのかな、と思ったのだ。
里に帰ったカカシが偶々、隊長の代理として報告書を出しに受付け所に出向くと、くだんの人物が、そこにいた。
先に帰っていたはずのイルカだ。
そして何やら受付け所の担当者と揉めていた。
「俺、もっと、任務したいんです!」
イルカが言えば、受付け所の担当は言い返す。
「だめよ、あなたは休まないと。」
「若いから大丈夫ですって!」
担当のくの一は溜め息を吐いていた。
「そういうことを言っているんじゃなくてね。うみの中忍、あなた、最近、全く休暇を取っていないでしょう?」
「休暇は取ってないけど充分、休んでいますよ。だから・・・。」
「あのねえ。」
イルカよりは年上と見られる、くの一は強い口調でイルカの言葉を遮った。
「調べてみたけど、あなた、ここ、半年ほど任務を受けまくっていて、まともに休暇も取ってないでしょうが。あなたは、それでいいかもしれないけど頭も体も休めないと、いずれ潰れるわ。その時、迷惑するのは自分じゃなくて周りの皆なのよ。」
受付けのくの一は言葉は、きついが言っていることは正当である。
任務の後、特に長期任務の場合は休まなければ、任務で疲れた身も心も衰えてしまい判断が鈍る。
そうすると、いざという時、役に立つことが出来ない。
その時、一番後悔するのは自分なのだと、くの一は言いたかったのだろう。
くの一に諭されてイルカは、見るからに落ち込んでしまったようだ。
肩が下がって、しゅんとして沈んでしまっている。
くの一は、そんなイルカを見ると、ちょっと苦笑いして立ち上がりイルカの頭を軽く、ぽんぽんと叩いた。
「そう落ち込まないで。あなたは頑張っている、でも頑張りすぎだわ。少し休んだ方がいいのよ。」
雰囲気を和らげて、優しく言葉を掛けている。
「はい、すみません。」
イルカは、ますます項垂れて落ち込んでいた。
その光景を一から見ていたカカシは、何故か居た堪れない気分になり、さり気なく声を掛け二人の間に割って入った。
「どうしたの?もしかして、子どもを苛めているのかなあ〜。」
茶化すように言うとカカシの顔見知りの、くの一は眉を顰めて、カカシを少し睨んだ。
「どこを、どう見たら苛めているように見えるのよ。私は、この子が無茶しすぎているから諌めていただけ。」
そして、カカシの手から報告書を奪い取ると言った。
「カカシ、この子と同じ任務に就いていたんなら知らない仲でもないんでしょ。この子、ここから連れて行ってちょうだい。」
受付所の権限からかカカシとイルカが同じ任務に就いていた事を知っていた。
そしてイルカを連れて受付け所から出て行け、と言っている。
「でないと、また任務をしたいって言い出しそうだし。」
そのくらい、いいでしょうと、くの一はカカシに命令した。
カカシは懸命にも、逆らうことしなかった。
イルカを連れて受付け所から外に出ると、イルカはカカシに頭を下げた。
「すみませんでした。」
「いや、いいんだけどね。それより・・・。」
カカシは気になることを訊いた。
「任務、そんなに受けて、どうするの?」
「えっと、それは・・・。」
イルカは言い淀み、視線を逸らした。
言い難いのか、それとも言いたくない理由があるのか。
自分より身長が頭一つ分、低いところにあるイルカの結った髪がよく見える。
それは風に吹かれて、頼りなげに揺れていた。
それでもカカシが黙って、じっとイルカを見ていると降参したようにイルカは言った。
「お金が・・・。」
「お金?」
「必要で・・・。」
お金を貯めているのかな、とカカシは、ぼんやりと思った。
貯蓄が趣味なのかなあ、と。
「今もお金がなくて、すっからかんですし。」
イルカは恥ずかしそうに告白する。
「ええ!」
その事実にカカシの方が驚いた。
「先日の任務の報酬は?もう使ったの?」
それとも、まだ支給されていないのか。
「いえ、貰ったんですけど、もうないんです。」
「ない!」
既に使ってしまって無いのだとしたら、お金遣いが荒いのか、それとも無計画なのかとカカシはイルカのお金の使い方が心配になってきてしまう。
参考までにイルカに支給された報酬の額を訊いてみるとイルカは躊躇いもなく、あっさりと答えてくれた。
その額を聞いてカカシは、またまた、驚いてしまう。
イルカの報酬の額がカカシの報酬の額の十分の一以下だったからだ。
「それしか貰えないの?」
驚きの余り口から、失礼な言葉が飛び出してしまった。
それに介した風もなく、イルカは肩を竦めると「新米の中忍が貰える額なんて、そんなもんですよ。」と割とドライだ。
「そっか〜。」
新米の経験がないカカシにとっては、結構、衝撃的な事実であった。
そんな少ない報酬で生活しているのか、いや、生活できるのか、と自分の知らない現実を垣間見た気分を味わう。
「はあ、そうなんだ〜。」
相槌も、どこか調子が外れていた。
その時だ、どこからか腹の鳴る音が聞こえてきた。
キュルル、と鳴っている腹の音は、明らかに腹が空いたと主張している音である。
カカシでないとしたら、音の発信源はイルカで間違いがなかった。
金の切れ目が縁の切れ目1
金の切れ目が縁の切れ目3
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