金の切れ目が縁の切れ目1
カカシが任務で遠征に赴いていた時、妙に目に付いていた人物がいた。
上忍、中忍により何人かの班で編成された部隊であったのだが、その中に一人、目を惹かれるのだ。
何故だが理由は自分でも解らない。
その者はカカシより、年下で体つきは少年特有の曖昧さが残っていて手足が細く少し小柄で、幼さが残る中忍ではあったが色々なことを、そつなくこなして部隊の中で重宝されていた。
何より顔を横切り傷が印象的で笑うと、その傷の凶暴さは消えて逆にチャームポイントとなり愛嬌が出て、相手を和ませてしまう。
頭の天辺で結っている黒髪が、元気な本人と同じく、いつも元気そうに揺れていた。
その持ち前の明るさからか、殺伐した部隊に穏やかな雰囲気が漂って、皆の気持ちが癒されたのか士気も高まっていた。
カカシと同じ男性であったけれども。
稀に見る貴重な人物であった。
その人物の名を、うみのイルカと言う。
部隊にいる間、イルカとは班の違うカカシは自分から言葉を交わしたことはなかったがイルカを見ると愛読書なる本を読みながらも、ついつい目で追ってしまっていた。
一回だけ、接触はあった。
部隊の上の方の、隊長に近い立場のカカシが休憩中の時にイルカが飲み物をカカシの元に運んできたのだ。
中忍であるイルカは雑用のようなこともしている。
湯気の立つカップをカカシに持ってきたイルカは笑顔でカカシにカップを渡した。
「どうぞ、はたけ上忍。」
「どうも。」
カカシはコーヒーを受け取った頷く。
するとイルカは何故かカカシの元を去らずに、なんとなく、そわそわとしながらカカシを見ている。
不思議に思ったカカシは聞いてみた。
「どうしたの?」
「あ、えーと。」
イルカは、カカシの読んでいた本を指差した。
「何を読まれているんですか?」
「これ?」
普段からカカシが読んでいる本に興味があったらしい。
「ん〜。」
カカシは思案してイルカに年齢を訊いた。
「何歳?」
「あ、俺ですか?今年で十七になります。」
「じゃあ、だ〜め。」
読んでいた本を、ぱたんと閉じてイルカの目に付かないように腰のポーチに入れて隠してしまう。
「十八歳にならないと読めない本なんだよ〜ね。」
するとイルカは予想外のことを言った。
「そんなに難しい内容の本なんですか?」
「・・・・・・え。」
カカシの答えに逆にイルカは興味を持ったようだ。
「上忍の方が難しいと仰られる本なら俺なんて、もっともっと勉強しないと読めませんね。」
尊敬の眼差しで、見詰められてカカシは居心地悪くなってしまう。
「どんな本でも読んでしまうはたけ上忍は、すごい方なんですね。」
「いや、それほどでもないんですけど・・・。」
カカシは歯切れ悪く答える。
読んでいた本は決してイルカが想像している内容の本ではない。
「あ、俺、もう行かない。」
イルカは、ぺこりと頭を下げた。
「貴重なお時間をすみませんでした。それでは失礼します。」
大きな誤解のようなものを残してイルカは行ってしまう。
その姿を見送りながらカカシはイルカの持ってきてくれたコーヒーに口を付けた。
「あー、あの子の、あの目はやばいなあ。」
あの無垢な瞳はさあ、と久しぶりに珍しいものを見た気分になる。
カカシはポーチから、再び本を取り出して読み始めた。
「尊敬されるのは嬉しいけど、間違った方向に行っているような気がする。」
呟いたカカシは、あの瞳を裏切りたくはないなあ、と思いつつも本に目をやる。
だが本の内容は、ちっとも頭に入ってこない。
イルカの顔ばかりが目の前に、ちらついてしまう。
本を読むのを諦めたカカシはコーヒーを飲んだ。
飲み干してしまったコーヒーは少しだけ冷めていた。
金の切れ目が縁の切れ目2
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