金の切れ目が縁の切れ目17
とりあえず、すったもんだの末にカカシはイルカの知り合いの入院、治療のお金を出すことになった。
イルカは、ものすごく渋って何回も断ったのだがカカシのある言葉で決心したようだった。
「どうせ最終的には治すことになるんでしょう?それが早いか遅いかの違いだけで。だったら早い方がいいんじゃない。」
その言葉が切っ掛けで、漸く首を縦に振った。
しかし、イルカが譲らなかった点が二つある。
「じゃあ、俺がカカシさんからお金を借りる形にしてください。必ず返済しますから。」
「まあ、いいよ。」
自分はイルカのためにお金を出してもいいと言ったのであって、他の人のためにイルカが自ら借金を背負うという形をとることはないのにとカカシは思う。
自分を犠牲にするようなことなんてしなくてもいいのに。
だがイルカの気持ちを配慮して、そのことには触れず、貸すお金に関しては「無利子無担保無期限無催促にするから。」と返済に関しては全く興味を示さなかった。
「それから、あのう。」
躊躇った後にイルカは、もう一つの点についてカカシにお願いしてきた。
「あいつに分からないように取り計らうってことができませんか。俺がカカシさんからお金を借りて、あいつのお母さんの病気の治療を手助けしたって知られたくないんです。」
「まあ、なんとかなるけど。」
カカシの伝手で、それもカカシになら、どうにかなりそうである。
裏から手をまわせば何とかなるか・・・、とカカシは考えた。
「こんなことすると、あいつも気を遣うと思うし・・・。だから、お金のことに関しては伏せておいてほしいんです。」
勝手なお願いですけど、とイルカは頭を下げた。
「ごめんなさい、カカシさん。でも、絶対に内緒にしてください。」
「うん、分かった。」
「絶対ですよ。」とイルカは念を押してくる。
「たとえ・・・。たとえ、もしも俺が死んでも教えないでほしいんです。」
「物騒だね。」
カカシは眉を潜めたが結局、了承した。
「じゃああ、俺も条件があるよ。」
「条件・・・。」
その言葉を聞いてイルカは顔を引き締める。
胸を押えているので何を言われるかと、どきどきしてらしい。
「イルカはさ、俺にお金を借りたら、やっぱり、それを返そうとするんでしょ?」
「借りたものは返さなければいけません。」
イルカは生真面目に言った。
「そして、ギリギリの倹約して生活して、任務もがむしゃらに受けるんでしょ?」
「多分・・・。」
「じゃあさ。」
カカシの目が何かを狙うように、きらりと光った。
「このまま、俺んちに住みなさいよ。出て行くなんて言わないで。」
実は、これこそがカカシの狙いであったと言っても過言ではない。
当然のことながら、イルカは聞き返した。
「え、なんでですか?」
「何回も言ったけど。」
カカシは最もらしく、言葉を述べた。
「イルカとは気が合うし、それに誰かと一緒に住むことは楽しいから。」
「それだけですか?」
「それだけって、重要なことじゃない。気が合うって相性がいいってことでしょ。それに俺、嫌いなやつは、とことん嫌いだもん。」
「カカシさんて、もしかして人間の好き嫌いが激しいんですか?」
イルカが、どっか調子の外れた質問をしてくる。
「あー、うん。そうかもね。」
だから、と今まで何故か、ずっと握りっぱなしのイルカの両手をカカシは優しく握って、こう言った。
「俺、イルカのことは嫌いじゃないから好きなんだろうね、きっと。」
「そうなんですか!」
イルカの顔が、ぱああっと華やいだ。
「嬉しいです。俺も、カカシさんが・・・。」
その先を、ほのかな期待を寄せてカカシは待った。
「触れてくることに、すごく慣れたと思うんです。慣れたって表現はあれですけど、前は触れられたら緊張していたのに、今は、ほら。」
握りあっている手をイルカは見る。
「カカシさんが触れていても緊張しなくなったし、逆に父や母を思い出して、とても安心して、ほっとしてしまいます。」
何回も頭を撫でられたりしたからですかね、とイルカは嬉しそうだ。
「そ、そうか。なら、よかったな〜。」
笑ったカカシの顔は、ちょっと引き攣っていたのだった。
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