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金の切れ目が縁の切れ目16



「な、なに、言ってるんですか・・・。冗談もほどほどに・・・。」
「冗談じゃないってば。」
「冗談じゃないって・・・。じゃあ、あいつんちにどれだけ、お金が必要か知ってるんですか?」
「知ってるよ。」
カカシは、知り合いの医師から聞いた大まかな金額を、さらりと述べた。



金額を聞いたイルカは俯いて、ぶるぶると体を震わせて戦慄いている。
「どうしたの、イルカ?」
心配そうに覗き込んでくるカカシにイルカは叫んだ。
「命に次に大事なお金を、どうしてどうして・・・。そんなことに使おうと思っちゃうんですか!」
とんでもない金額を出してもいいというカカシが、よっぽど衝撃的だったらしい。
しかしカカシは、ずれた解釈をした。
「命の次に大事なのはお金なの?」
「あ、いや、これは一般的な事例を述べたまでで、俺にとって一番大事なものは家族、友人で、自分の命やお金は二の次ですけど。」
「あー、なるほどねえ。」
最もらしくカカシは顎に手をやり、うんうんと頷いたが、やがてイルカの目を見て優しげに微笑んだ。



「イルカ。」
「はい?」
カカシに両手を握られて顔が近づけられるとイルカは自然と体が反って離れようとする。
それを追いかけてカカシは聞きようによっては妙に甘く低く囁くような声を響かせた。



「イルカ、この世で一番大事なものは『愛』なんだよ。」



しーんと二人の間に沈黙が舞い降りた。
イルカはカカシの言葉に特に反応もせず、いや、反応できないのか目を見開いたまま止まっている。
「あの、イルカ・・・。」
あー、とカカシは唸って誤魔化すように早口になった。
「イルカには、まだ、この話は、ちょっと早かったかな〜。」
あはははと、乾いた笑いで顔が引き攣っている。



「で、さっきの話の続きだけどさ。」
無理矢理、軌道修正して話を戻す。
逸らしたのは自分なのに知らないふりをした。
「俺は、その治療代を補えるだけのお金を持っているし、イルカと気が合うからお金を出してもいいと思ったの。」
イルカは聞いているのかいないのか、視線は空の一点を見詰めて動かない。
カカシは更に言い募った。



「俺んちから出て行ったらイルカは、不安定な生活に戻るだけでしょ。元々、イルカを俺んちに連れて来たのは、そんなイルカが気になって心配になったからであってだし。どうせ、俺、お金なんて、そんなに使わないしね。」
使う前に死んじゃうかもしれないし、と言ったところで、やっとイルカから反応があった。



「な、なに言ってるんですか、カカシさん。」
ぶるっと体を振るわせる。
「不吉なこと言わないでくださいよ・・・。」
黒い瞳が不安そうに揺れていた。
「そんなのいやだ・・・。」
イルカの口から小さな声が漏れる。
「死ぬなんて。」



いまだ、握っていた手がイルカの方から握り返された。
強い力で。
「まあ、とにかくさ。」
暗くなってしまった雰囲気を、ぶち破るようにカカシは努めて明るく言った。
「お金があるんだから使えばいいよって話なの。どうかな?」
「どうかなって言われても。」
本題に戻って、イルカの眉毛は八の字になる。
「そんな簡単に人様のお金を使うなんてことできません。それに、カカシさん。」
ちょっと諌めるようにイルカがカカシを見る。
「自分が一生懸命働いて貯めたお金をほいほいと使っていいと軽々しく言うなんて、どこまでお人好しなんですか。」
お人好し、と言われてカカシは目の前のイルカこそが、その言葉が相応しいと思う。
「碌に知りもしない俺を自分の家に連れてきた時点で、ほんと、相当に人が好いですよ。」
そして、はあ、とイルカは溜め息を吐いた。
「カカシさん、人が好すぎて、この先、詐欺とかに引っかからないか俺、心配です。」
その言葉、そっくりイルカに返してやりたいカカシであった。




金の切れ目が縁の切れ目15
金の切れ目が縁の切れ目17






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