AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する
ハイスペック専用サーバー
39周年!BIGサンクスキャンペーン


金の切れ目が縁の切れ目13



病院に到着するとカカシとイルカは、待ち合わせを病院の入り口にあるロビーに決めて別々の行動をとった。
「じゃ、あとでね。」
「はい。」とイルカは返事をして、あっさりと例の病棟の方へを後ろを振り返らずに行ってしまう。
少し寂しく思いながら、イルカを見送るとカカシも自分の用事を片付けるために目的の場所へと向かった。



カカシの用事というのは特別、大したことはなく、木の葉の忍に対して定期に行われている健康診断の結果を受け取りにくることであった。
随分前の健康診断の結果だったが。
「特に異常はありません。」
顔見知りの医師から結果の表を渡されて、そう言われる。
「成人男性として申し分のない健康体ですよ。」
「そっか。なら重畳だね。」
これからの過酷な高ランクの任務に支障がないのか、と、ちょっぴり残念になったりしてしまう。
もう少し休んで、任務をさぼりたいとか思ってしまったカカシだった。



時間のあった医師と暫く、雑談を交わしたカカシだったが思いついて、あることを訊いてみた。
「あのさ、この病院の奥の方の病棟って何?」
「ああ、あそこですか。難しい病気の方が入院されています。」
「ふーん。」
「木の葉の里の医療の水準は他の里と比べると群を抜いて高いですが、それでも治療が難しい病気が存在するんです。」
残念そうに医師は言う。
「そうなんだ。」
「我々も日々、病気に対して分析、研究はしているのですが・・・。」
その成果が確実に出ればいいのですがね、と渋い顔ををした。
忍者も里を支えているが、医療に従事する者も里を支えている。
支える場所が違うだけだ。



「そっか。」
頑張っているんだねえ、とカカシは慰めるように言い、ふと思いついた。
「あのさ、個人情報に関わるかもしれないんだけど、教えてもらえるんだったら教えてほしいことがあるんだよね。」
「なんでしょう?」
カカシはイルカの知り合いが入院している病室の番号をあげる。
「その部屋に知り合いの知り合いの知り合いみたいな人が入院しているけど、その人は、どうなの?治らないの?」
「ああ、その人は・・・。」
知り合いという言葉が利いたのが医師は少しだけ教えてくれた。



「投薬治療すれば遠からず治る病ですよ。しかし、現在は木の葉の里の医療技術では病気の進行を抑えることが精一杯でして、しかも病気の進行止めに使っている薬の副作用で、ずっと眠ったままの状態なんです。」
「なんで、肝心の投薬治療しないの?」
医師は深く眉を顰めた。
「それが薬が木の葉の里では精製できない、特殊なもので、他国から取り寄せないと駄目なんです。」
「へええ。」
「しかも、保険を利かせても輸送費や薬の材料やら調合やらに、べら棒に、お金がかかるんですよ。」
患者さんの御家族と金銭面などの相談をして現在の状態を保っていますが、本当は早く治って元気になられるといいんですがね、というのは医師の本心だろう。



「ちなみに、どんだけ、お金がいるの?」
試しにカカシは訊いてみた。
医師が、大体の金額を答える。
木の葉の里でなら、家が一軒、買える値段だった。
高額ではあったが、実はカカシは、その金額を上回るだけの貯金がある。
幼い頃から忍びとして任務をしてきたカカシは、娯楽や趣味も読書一筋で、それ以外にお金は使っていないので、随分な額のお金が貯まっていたのだ。
「なるほどねえ。」
頷いたカカシは、医師に礼を言うと診察室を出て、イルカがいると思われる病室の方へ向かった。



病室の近くまで行くと、イルカと誰かの声が聞こえてくる。
他愛もない事を話していたようだがイルカの声は、ひどく楽しげでリラックスしているようだった。
カカシと話しているときに聞いたこともないような声だ。



相手に何事か言われて、くすくすと笑っている。
カカシは廊下の曲がり角から、気づかれないように気配を消して、そっとイルカを覗き見た。
イルカの顔は、いつになく明るくて朗らかだ。
前に見たことがある少年と一緒に長椅子に並んで座っている。
少年の親御さんの病気の見舞いだから、多少、押えてはいたが、少年との会話が楽しいのか、子どもらしい笑顔が絶えない。



それを見ていたカカシは胸に、もやっとしたものが沸きあがった。
なんだか怒りに似たような感情ではあるが怒りではない。
少年といるイルカを見ていると更に、その気持ちが強くなってきた。
やはり自分より、同じ年頃の人間といる方が楽しいし、気も許せるのか。
そんなことまで考えてしまい危うく、楽しく話しているイルカと少年の間に乱入して、イルカを連れ去りたい気持ちに駆られた。



気持ちが段々と黒く、けぶっていくのが解る。
・・・・・・やばい。
己を押える我慢の限界の危機を感じてカカシは、そっと、その場を離れた。



待ち合わせのロビーでカカシがイルカを待っていると、イルカがロビー内を見渡して誰かを探すような仕草をしてから、カカシを見つけ慌てたように早足で寄って来た。
「・・・あの。」
「遅い。」
カカシは椅子に座って組んでいた足を組み直して不機嫌そうに、一言だけ言った。
「・・・すみません。」
本当は五分も待っていない。
「すみませんでした、お待たせしてしまって。」
イルカは申し訳なさそうに背中を丸め、項垂れて小さくなっている。



そんなイルカを見てカカシは自分の言ったことを後悔した。
「嘘。ごめん、待ってないよ。」
「・・・え。」
カカシの態度の変わりように戸惑うイルカを余所に立ち上がる。



イルカが誰と話そうが、それはイルカの自由でカカシの関知することではない。
無用な気持ちを持って苛立っていたのは自分なのだ。
八つ当たりにも程がある。
ただ自分にも気を遣ってではなく、心から楽しそうにしてくれたらいいのに、と思っただけで。
俺の前でも素顔を曝け出してほしいのになあ。



そう思ったが今は、その気持ちを押し殺す。
だから、代わりにお詫びとして言った。
「これから買い物がてら、ご飯でも食べに行こうか。」
イルカは、それを聞いて、はにかんだ顔をして笑う。



そんなイルカを見ていると、もやっとしたり、いらいらとしていた気持ちがカカシの中から、すっと溶けるように消えていった。
不思議なこともあるもんだ、とカカシは思い、この気持ちは何々だろう、と自問自答したのだった。




金の切れ目が縁の切れ目12
金の切れ目が縁の切れ目14






text top
top