金の切れ目が縁の切れ目12
イルカがカカシの家で生活して四日目。
「イルカ、今日は病院行くの?」
カカシは、一通り家事の終わったイルカに尋ねてみた。
「えーと・・・。」
イルカは、もじもじとして躊躇ってから遠慮がちに訊いてきた。
「昨日行ってないんで、できれば今日、行きたいんですけど。」
どちらかというと、カカシに許可を求めているような感じだ。
「遠慮はしないって約束したでしょ。」
そう言うとカカシはイルカの頭を遠慮なしに撫で回し、結んでいる髪を、ぐしゃぐしゃにしてしまっている。
「ちょっとカカシさん、髪が!」
悲鳴をあげるイルカをカカシは面白そうに見て「じゃあ、結びなおしてあげるから。」とイルカの髪を結っている紐を楽しそうに解いてしまった。
「いいですよ、自分でやりますから。」
「いいからいいから。」
強引にイルカを座らせるとカカシはイルカの背後に回りこむ。
「カカシさんが結んでくれると、変なこともするから。」とイルカは、ぶつぶつと言っている。
「変なことってなによ?」
昨日、今日でイルカの髪を結うのが、だいぶ上達したカカシは心外だとばかりの声を出した。
「変なことって・・・。」
言いかけたイルカの言葉が止まり、代わりにトーンの高い笑い声が、その口から漏れた。
「わっ!・・・あ、あははははははっ。って、やめて、カカシさん。」
イルカの髪を結び終わったカカシが、イルカの両脇に自分の手を入れて擽り始めたのだ。
上忍の力をフルに発揮して、結構、容赦なく擽っているので、イルカは擽っさに体を支えていられず床に倒れこむ。
イルカはカカシに擽られて床の上を転げまわって、必死にカカシの手から逃げようとするのだが上手くいかない。
それでもなお、追随の手を緩めずにカカシはイルカを擽っている。
その顔は、にやりとしており少々、人相が悪くなっていた。
息を切らせたイルカが疲れて抵抗できなくなり、涙目になったところでカカシの一連の動作は終了した。
乱れた息を整えながらイルカはカカシに抗議する。
「・・・やめてって言ったのに。」
「いやあ、つい楽しくてねえ。」
カカシは謝ってはいるものの、悪びれた様子はない。
イルカが擽られるのに極端に弱いことをカカシが、ひょんなことから発見して以来、事あるごとにイルカはカカシに擽りまくられていた。
人に気を遣わせないような、常に穏やかな表情のイルカではあったが、余り笑わないことに気がついたカカシが勝手に自分の中で考案した、イルカを気兼ねなく笑わせる方法である。
笑っていた方がいいのに、密かに思ったからだ。
「それにさあ、擽るとイルカは笑うじゃない。」
「そりゃあ、擽られれば笑いますよ。」
だって擽ったいんですもん、とイルカは理由にならない理由を口にして、頭に手をやった。
「あー。髪が、また、ぐしゃぐしゃになっている。」
カカシが結んだイルカの髪は、再び解けて、ばらばらになっている。
これでは何のためにカカシはイルカの髪を結んだのか分からない。
「あ、じゃあ、俺が結んであげる。」
嬉々として近づいてくるカカシを巧みに避けてイルカは、きっぱりと断った。
「もういいです、自分でやりますから。」
「えー、遠慮しなくていいのに。」
「遠慮してません、ぜんぜんっ。」
「えー、遠慮しているでしょ。」
「してませんって。」
そんなカカシとイルカの攻防が日夜、繰り広げられているがカカシの家の日常になりつつあった。
「じゃ、行こうか。」
擽られていたイルカの身支度が終わるとカカシは声を掛けた。
「行こうかってカカシさんも一緒に病院に行くんですか?」
「うん。」
首を傾げたイルカにカカシは頷く。
ふと何事か考えていたイルカは、あることを思いついて真っ青になった。
「カカシさん、怪我でも・・・。もしかして、病気ですか?」
「違う〜よ、全部外れ。」
カカシの家の玄関を仲良く出た二人は、歩きながら話す。
「俺は怪我でも病気でもなくて、別件でイルカの行く病院に用があるの。」
「そうですか。」
良かった〜、とイルカは安堵の息を吐いた。
「人間、健康が一番ですもんね。」と言って微笑んだ。
「元気でいることが何よりです。」
などと老成した口調で人生を達観したようなことを言っている。
「イルカ、若者らしくないね・・・。」
もっと人生楽しめばいいのに。
だがカカシの憂い含んだ呟き声はイルカに聞こえることはなかった。
金の切れ目が縁の切れ目11
金の切れ目が縁の切れ目13
text top
top