金の切れ目が縁の切れ目10
「罰金って本気ですか?」
不安そうにイルカはカカシを見上げた。
「本気も本気、大本気。」
カカシは腰に手を当てて宣言する。
「遠慮したら罰金。これは俺の家のルールです。」
「そんな・・・。で、罰金って、いくらくらいですか?」
ものすごく真剣にイルカは聞いてきた。
「えー、そうだな。」
成り行きで言ってしまったものだから、細かなことまでカカシは決めていなかった。
「うーん・・・。」
顎に手を当てて考えるカカシ。
イルカのお金がいる事情を知ってしまっているし本当に、お金を徴収するのはさすがにできない。
では、お金の代わりになるものでは、どうかな。
ぽん、とカカシは手を叩いた。
閃いたのだ。
「一つ遠慮するごとにイルカの体を触らせてよ、あ、間違えた。一回、頭を撫でさせて。」
「・・・・・・・・・は?」
「一撫でが十個溜まったら、一回、俺にイルカを、ぎゅっと抱きしめさせて。」
カカシは名案とばかりに、自分の思いつきに酔っている。
「いいじゃない。だってイルカは触られたりする、スキンシップが苦手なんだから、まあ、リハビリというか練習だと思えばさ。で・・・。」
イルカは、カカシを凝視していた。
その目は何を言っているのか理解できない、と書かれている。
体を触らせてとかなんとかと言い間違えている時点でカカシは少し、おかしいような気がする。
しかし、カカシの言葉は続いた。
「でさ、十回抱きしめることができたら、俺と同じベッドで一緒に眠るってのは、どう?」
「・・・どう、と聞かれても。」
イルカは、とても困っている様子だ。
「イルカが、俺んちの台所の隅で寝ているのも、いわば、誰にも体に触れられたくないってのが根底にあるんだろうし、それが、すぐにどうこうなるとは思ってないけど。」
カカシは言葉を切ってイルカを見る。
屈んで座っているイルカを目線を合わせた。
「でもイルカだって、それに気にしているわけだしさ。人に触れるのに慣れるチャンスというか・・・。ある意味、いいアイディアだとは思わない?」
イルカは目を、ぱちくりさせてから、至極当然のことを訊いてきた。
「なんでカカシさんが、そんなことするんですか?」
「え。」
どくん、とカカシの心臓が跳ねる。
悪事を企んでいたのを見破られたように。
別に悪いことをしているつもりはないのだが。
「そ、それはさ〜。」
「だいたい、それは罰金じゃありません。」
冷静にイルカは分析している。
「それに、俺が隅っこで寝ているのは、確かに触れられたくないってのもありますけど。どちらかというと癖みたいなもので・・・。」
背中が壁に触れてないと安心できないんです、とイルカは言ったが、やっぱり、それは触れられるのを拒否しながらも、触れられるのを求めているような感じがする。
十七歳って難しい年頃だなあ〜。
カカシは苦笑めいたものを浮かべた。
ちょうど、思春期だっけ?
俺も、こんなだったのかなあ。
カカシの様子にイルカは首を傾げる。
「カカシさんは、そんなことして楽しいんですか?」
「あー、うん。楽しいかな、イルカといると退屈しないねえ。」
その答えを聞いてイルカが肩の力を抜くのが分かった。
「珍しい人ですね。俺を構って楽しいだなんて。」
大人のように溜め息と吐くイルカ。
「カカシさん、恋人はいないんですか?」
そんなことを訊かれてカカシは、どきりとしたが、そこは隠して首を振った。
「いないよ。いたら、イルカを家に連れてこないし。」
「それもそうですよね。」
イルカは納得して頷いた。
顔つきは穏やかになっていて、少し笑っている。
自然とカカシの手はイルカの頭に伸びて、よしよしと時下に髪に触って撫でた。
「え?」と身を引くイルカにカカシは微笑んだ。
「いいじゃない、仲直りの証の握手じゃないけど、まあ、そんな感じで。」
二人の間に落ち着いた和やかな雰囲気が流れて、カカシはイルカとの仲が急速に深まったように感じた。
そしてカカシが言った罰金という名の撫でるだの抱きしめるだの、一緒に眠るとかは、いつも間にか、うやむやとなり、そのまま、うやむやのまま決まってしまっていた。
次の日、自分の家へ着替えと取りに行くというイルカのカカシは付いて行った。
「カカシさん、暇なんですか?」
「うん、休みは暇してるね。」
「早く、恋人でも作ればいいのに。」
そう言ってイルカは笑ったのだった。
金の切れ目が縁の切れ目9
金の切れ目が縁の切れ目11
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