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どこへいずこへ5



頭を冷やした次の日。
俺は朝一番でイルカ先生に会いに行こうとした。
会って、どうするのか。
謝りたかった、酷いことを言って傷つけてしまったことを。
考えてみるとイルカ先生が女性からラブレターを受け取っていたのは何らかの理由があるかもしれない。
俺の早とちりかもしれない。
きっと、そうだ。
もう許してくれないかもしれないけれど・・・。
そう思うと胸が苦しく、息が出来なくなりそうになるが。
とにかく俺は一刻も早くイルカ先生に会いたかったのだ。



ちっ。
俺は舌打ちして腹を抑えた。
腹に受けた傷から大量の血が流れ出ていた。
イルカ先生に会わなければいけないと思った矢先に任務が命じられて、どうしても断れなかったのだ。
高ランクの任務で俺が指名を受けていたから。
間の悪い・・・。
クナイを握り締めた。
倒さねばならない敵は大勢いる。
集中しなければならないのに集中力が散漫になっていた。
戦いの最中だというのに。
イルカ先生のことが頭から離れない。
俺は自分を酷いやつだ、と何回も思う。
可能なら、あの日に戻りたい。
イルカ先生に別れるなんて馬鹿なことを言った日に。
戻って、きちんとイルカにラブレターを受け取った経緯を聞いてみたい。
きっと誤解に違いないのだから。
ここにイルカ先生はいないけれども。
俺は心の底から思った。
イルカ先生、ごめんなさい。



気がついた時には俺は病院にいた。
目を開けると白い天井が目に入る。
そこかしこに薬品の匂いがして、ここが病院だということが分かった。
体は重く足の先から指先まで動かない。
声を出そうとしたけれど声も出なかった。
何とか動くのは首から上だけ。
俺は顔を動かして見える範囲で部屋を眺めた。
ベッドの傍には点滴があり、それが俺の腕に繋がっている。
ベッドの横の備え付けの棚には一輪挿しに綺麗な花が一厘。
それに水差しとタオル。
誰か見舞いに来てくれたのかなあ。
ぼんやり、そんなことを考えているとタイミング良く医者が回診にやってきて俺は自分の状態を知ったのだった。



そっかー。
白い天井を眺めて俺は先ほど医者に言われたことを反芻していた。
任務で重傷を負った俺は三日間ほど寝込んでいたらしい。
大事には至らないものの絶対安静になっていた。
当分、入院ということだった。
・・・怪我したのか俺。
任務の途中から記憶がないと思ったら、傷を負って倒れたところを救援に来た仲間に助けられたのだ。
情けないなあ、これでも一応、上忍なのに。
ぜんぜん上忍らしくない。
任務に失敗して挙句の果てに怪我をして入院なんてなあ。
・・・これも天罰かな。
ふと思った。
イルカ先生に酷いことを言ったから報いを受けたのか。
いや単に俺の実力不足だろう。
任務で怪我したことをイルカ先生の所為にして良いわけない。
イルカ先生。
閉じた瞼の裏にイルカ先生の顔が浮かんだ。
その顔は哀しそうで笑っていない。
イルカ先生の笑顔が見たい。
自分が悪いのにイルカ先生の笑顔が見たいなんて、理不尽なことを思いながら俺は眠りに落ちていった。



次の日。
俺の意識が戻ったことを聞きつけたのか早速、見舞いが訪れた。
だが、それは俺が期待して人物とは程遠い。
「あーら、カカシ起きたのね」
「遅いお目覚めだねー」
ちっとも心配している様子のない二人組みは紅とアンコだった。
最強のくの一、二人組み。
二人でいれば怖い物なしの敵なし。
寄りによって何で、この二人が俺の見舞いになんか来るんだ?
疑問符が頭の中を埋め尽くす。
そんな俺の気持ちが顔に出たのか紅が肩を竦めた。
「私たち、別にカカシが心配で見舞いに来たわけじゃないのよね」
「まあ、カカシはそう簡単にくたばるようなやつじゃないしねー」
「そうそう」
紅とアンコは顔を見合わせて笑った。
何なんだ、こいつらは。
もう帰れ、と目で訴えるとアンコが言った。
持参した自分用の甘そうな団子を食べながら。



「ある人に頼まれてカカシの様子を見に来ただけなんだー」
ある人?
ぱっとイルカ先生の顔が浮かんだ。
誰なのか問い質したいのに声が出ない。
声が出ないなんて、これほど焦れったいことなのか。
「これもねえ」
紅がベッドの横の棚の上の物を指差した。
「ある人が用意したものを私たちが持ってきただけなのよね」
「ねー」とアンコが相槌を打つ。
アンコは団子を口に入れると、もぐもぐと咀嚼した。
「ある人が誰か知りたい?」
にやーっと笑って俺を覗き込んでくる。
声の出ない俺は必死で、こくこくと頷いた。
しかしアンコは意地悪だった。
「教えなーい」
ぱくりと団子を頬張り楽しそうにしている。
アンコはここに何しに来たんだ、団子を食べに来たのか?
「じゃ私たちは帰るから」
紅が、さらっとつれない言う。
「カカシの意識が戻ったことを教えてあげなくちゃ、あの人に」
「そうだね、あの人に」
二人は完全に面白がっていた。
「バイバーイ」
最後にアンコが手を振って病室の扉が閉められた。



あの人って誰だろう?
俺は考える。
おこがましいがイルカ先生であってほしい。
俺のことを心配して見舞いを頼むなんてイルカ先生しか思いつかない。
会いに来てくれないかな、ここに。
動けるものなら俺の方から、すぐにでも会いに行くのに。
動けない体が恨めしい。
イルカ先生、会いたい。
会いたい会いたい、すごく会いたい。
その晩。
夜中に、ふと気配を感じて目を開けた。
病室には誰もいない。
気配を感じるのは病室の外。
誰かが病室の扉の前に立っている。
気配を消して立っているので薄っすらとしか分からないが。
それは俺が求めていた人の気配。
イルカ先生だった。




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