伝説の生き物 2
任務の報告のために、火影の執務室前まで来てカカシは足を止めた。
中から、火影の他に二つの気配がする。
一つは知っている。
イルカのものだ。
今日は、いつにまして小さな気配で、どことなく落ち着きが無く、はしゃいでいるようだ。
イルカの姿を思い浮かべてカカシの顔は知らず微笑んでしまう。
しかし、もう一つ。
イルカの気配に似ているが、もっと大きく穏やかで包み込まれるような感じがする。
何だろう、いや誰だろう?
好奇心には勝てず、カカシは火影の執務室をノックした。
トントンと扉を叩くと、中から入室を促す声がした。
火影の声だ。
カカシは少しドキドキとしながら、扉を開けた。
「カカシ、任務ご苦労だったな。」
火影がカカシの労を労う。
「カカシさん、こんにちは。」
イルカがニコニコして挨拶してきた。
いつもイルカは可愛い。
真実の姿も見せてくれたらいいのに。
この前、送っていった時は湖の手前で強固な結界が張ってあり、カカシは中に入れなかったのだ。
真実の姿は一部の者にしか見せないらしい。
「君がカカシ君かい?」
回想していたカカシは、その声ではっと現実に戻された。
そういや、三人目がいたんだっけ・・・。
声をした方に目を向けると、イルカに良く似た顔つきで黒髪の、少々年配の男性が微笑んでいた。
「先日はイルカがお世話になったみたいだね、ありがとう。」
「え、いやぁ。」
「私はイルカの父親だよ。よろしく。」
悪いことをしたわけでもないのに、カカシは何となく引いてしまう。
イルカの真実の姿を見たいという下心があるせいか。
「そうじゃ、カカシ。」
思いついたように火影はカカシに言った。
「何でしょう?」
「イルカと一緒に外に出て、菓子でも買ってあげてもらえんか。」
「はあ、いいですけど。」
「わしはイルカの父上と、ちと話があるでの。」
子守を頼まれたカカシはイルカの手を引いて、火影の執務室を後にした。
「イルカ、何が食べたいの?」
とりあえず、イルカの意見を聞いてみる。
「えーと。あ、冷たくて甘いものがいいです。」
「ああ、この前食べていた水菓子みたいな?」
「はい。」とイルカは満面の笑みで頷いた。
素直なところが、また好いなぁ。
カカシもイルカに釣られて笑顔になる。
「じゃ、アイスでも食べようか。」
そういうわけで、駄菓子屋に連れて行くことにした。
駄菓子屋で、アイスや甘い菓子をたくさん買い込んだ。
イルカは目をキラキラさせ大喜びで色々選んでいた。
多分、こんなところに来たことが無いのだろう。
カカシも駄菓子屋で出費なんて、なんてことないのでイルカの自由にさせていた。
買ったアイスを食べながら、二人で公園のベンチに座る。
「美味しい、この冷たいの美味しいですね。」
イルカにそう言われると、普段アイスなど食べないカカシも美味しく感じるから不思議だ。
「そうだね〜。」
そういえば、ふとカカシは思い出した。
イルカと一緒で忘れていたが、イルカの父親は何でいたのだろう?
何用で火影の処まで来たのだろうか?
「ねえ、イルカ?」
「何ですか?」
「イルカのお父さん、どうして火影様の処に来たの?」
すると、イルカは悲しそうな顔をして俯いた。
聞いちゃいけなかったのかな?
イルカのニコニコしている顔しか知らないので、そんな顔をされると慌ててしまう。
「実は、もうすぐ父は冬眠するんです。」
「冬眠?」
「はい。」とイルカは小さく答え、話し出した。
「俺たちの種族は十年周期で生きています。十年起きて十年眠る。その繰り返しです。もちろん、年齢によって多少は短くなったり長くなったりしますけど。父は、もうすぐ冬眠なのですが、高齢なので十年で冬眠が終わらないと思って・・・。」
「それで、イルカのことを火影様の処に頼みに来たの?」
カカシにも察しがついた。
子供のイルカを一人残して、眠るには忍びないのだろう。
でも、母親は?
聞いてみたかったが、イルカから母親の話題が出ないということは聞かないほうがいいだろう。
何か、嫌な思い出とかあるかもしれないしね。
それは置いといて、とカカシは気になっていたことをイルカに聞いた。
「イルカは冬眠しないの?」
「俺、この前起きたばっかりなんです。」
えへへ、とイルカは照れくさそうにする。
「初めての冬眠がこの前終わったんですよ。」
「へええ。」
「だから、精神的には十歳くらいでも、一応二十年は生きてるんですよね。」
「じゃあ、人間に例えたら二十歳ってこと?」
「そうなりますね。」
「そうなんだ〜。」
見てくれは大人でも、中味は子供か〜。
隣で、買った菓子を嬉しそうに食べるイルカを横目で見る。
イルカのお父さん、火影様だけじゃなくて俺にもイルカのこと頼んでくれないかなぁ。
大喜びで面倒みるのになぁ。
可愛くて、ちょっと子供な生き物と毎日にいたら楽しいに違いない。
後で、火影様に頼んでみようかな。
俺が面倒見ますからって。
そんなことを考えて、カカシは浮き浮きとした気分になったのだった。
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