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Cookie&Biscuit 9



「カカシさん」
帰ってくるなりイルカは言った。
「俺、明日からいません」
「えっ」
「家からいなくなります」
「ええっ」
瞬間、カカシの顔から血の気が引く。
「いなくなるって・・・。え?失踪宣言?家出?俺に何か不満でもありましたか?悪いところは直すので考え直してください」
お父さん!とカカシがイルカの前で祈るように両手を合わせるとイルカは目を瞬かせた。
「失踪?家出?何のことですか。それにカカシさんに悪いところなんてないですよ」
「今、お父さんが言ったでしょ」
「俺、何か言いました?」
大きな黒い目がカカシを不思議そうに見ている。
「明日から一週間、野外訓練ってか戦闘を想定した実習なので家を空けますってことなんですけど」
「・・・訓練・・・」
「なのでカカシさん、一週間一人です。大丈夫ですか?」
カカシを心配している。
「俺は大丈夫です」
逆にカカシはイルカのことが心配だ。
「余り無茶なことして怪我はしないでくださいよ」
「怪我くらい、へっちゃらですよ」
「そういうことじゃなくてですね」
記憶は失っていても戦闘そのものに対しての知識はなくなっていないらしい。
「実戦においては小さな怪我も命取りになることもあるんですから」
数々の修羅場を乗り越えてきたカカシの言葉だ。
「戦場において必要以上に怪我をしないのは最も重要で大切なことです。怪我をしてたら、いざって時に動けませんからね」
優秀な忍なら怪我はしません、とカカシは言い切った。
優秀な忍。
つまり強い忍を指すのだろう。
今までカカシのことを強い上忍と思ってはいたが改めてイルカは、その認識を強くした。



「暇だ・・・」
イルカが訓練に出てから二日目。
早くもカカシは暇を持て余していた。
一人なら食事も簡単で質素で構わない。
洗濯も掃除もすぐに終わってしまう。
本を読んでもすぐに飽きてしまう。
買い物に行こうにも一人ならば行きたくない。
イルカに美味しいものを食べさせれるのならば買い物にも行く気になるが。
イルカの存在がカカシの中で大きくなっていた。
「お父さん、どうしているかな・・・」
ベッドの上で肩肘ついて頭を乗せながら考えるのはイルカのことばかりだ。
「早く会いたいなあ」
イルカの元気な声が聞きたい。
「怪我なんてしてなきゃいいけど」
それだけが心配だった。
「お父さんて、踏ん切りがいいというか潔いというか」
それがイルカの強みだとは思いがカカシとしては心配の種でしかない。
ふと思い出してカカシはポケットからハンカチを取り出した。
イルカから貰ったと思っている白いハンカチ。
細かい花柄が可愛らしい。
「イルカ・・・」
お父さんではなく初めてイルカの名前を口にした。
「イルカさん」
なんだか、こっちの方がしっくりくるような気がする。
どうしてだろう。
「お父さんはお父さんなのに」
ぽつりと呟いたカカシは遠い目になる。
何かを思い出しそうだった。



「つっかれた〜」
一週間して無事にイルカは木の葉の里に帰ってきていた。
訓練を共に仲間や上官と里の大門のところで別れる。
明日は一日、休みなのも嬉しい。
顔も髪も体も服も汚れまくっていたが、訓練をやり終えたという充実感があった。
それにイルカを待ってくれている人もいる。
「カカシさん、どうしているかなあ」
カカシに言われたとおり怪我もしていない。
「訓練やり終えて怪我もしてない俺ってば偉い!」
自分で自分を褒めている。
だけど。
「早く帰ってカカシさんにも褒めてもらおう〜」
カカシにも褒めてほしいようで。
家へと急ぐ足が速くなる。
イルカもカカシに会いたいのだ。
その思いが通じたのか、通りの向こうからイルカが今一番会いたいと思っている相手が歩いてきた。
カカシだ。
「あ、カカシさーん!」
ぶんぶんと手を振るとカカシはイルカに気がついてくれたようで、あっという間にイルカの傍に来た。
「お父さん!」
カカシは笑みが零れそうなほど顔中に笑みを浮かべている。
「お帰りなさい!」
言うが早いがイルカを、ぎゅっと抱き締めた。
ぎゅぎゅっと抱き締める手の力は強い。
「カ、カカシさん、苦しいですよ」
イルカの訴えを聞いて慌てて手の力を緩めるがイルカを離すことはしなかった。
「よかった、帰ってきたんですね!」
カカシは大喜びだ。
「今日くらい帰ってくるかなと思って買い物に来たんです」
その言葉に、ぱっとイルカの顔が輝く。
「やった!カカシさんのご飯!」
訓練では栄養面だけは考えている味には考慮していない食事をしていた。
なので訓練ではカカシのご飯が食べたくてしょうがなかったのだ。
「今日はお父さんの好きなもの作りますね!」
「わー、嬉しいです」
嬉しくてしょうがないとばかりに、にこにこするイルカ。
そんなイルカをカカシは優しい目で見つめていた。



カカシは買い物の途中であったので、どうせならとイルカはカカシの買い物に付き合うことにした。
一人で家に帰っても誰もいないし、つまらない。
二人して仲良く買い物をしているときだった。
通りの向こうから明らかに上忍と判る数名の忍が歩いてきた。
何かを話しながら、その一人がすれ違いざまにカカシに声を掛けてきた。
「あれ?カカシじゃないか」
びっくりした顔をしている。
「最近、顔を見ないと思ったら・・・。こんなところで何をしているんだ?」
だけどもカカシは記憶喪失中なので相手のことを知らない。
「あんた、誰?」と冷たい声を出していた。
相手はそんなカカシに気を悪くした風でもなく肩を竦める。
「相変わらずだな」
ひょいとカカシの背後のイルカを覗き込む。
上忍の視線からカカシがイルカを庇うように体をずらした。
「ちょっと何?」
「いやいや」
上忍は手を振った。
「別にとって食いやせんて。その子が前に言っていた意中の可愛い子ちゃんかと思ってな」
「は?」
「物にしたのか、ついに」
にやりと笑うと、それだけ言うと行ってしまった。
いったい何のことなのか。
さっぱり解らない。
言われた言葉の意味を考えているとカカシがイルカの腕を掴んで引いた。
「もう買い物も終わりましたし」
イルカを引っ張るようにして歩き出す。
「家に帰りましょう、お父さん」
また変なやつに会うと嫌ですから、と言ったカカシは眉を潜めていた。




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