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Cookie&Biscuit 8



「んじゃ」
朝、玄関先でイルカは言った。
「俺、今日も仕事に行って来ます、けど・・・」
カカシの顔を見つめる。
「カカシさん、今日はどうします?」
「どうしますって?」
にこにこ顔のカカシに逆に聞き返された。
「俺は今日も家でお父さんの帰りを待っていますよ〜。昨日と同じく今日もご飯、作ってますから」
「本当ですか!」
イルカの目がきらきらと輝く。
「はい、今日の夕飯も楽しみにしていてくださいね」
「はいっ!」
「かわいいなあ、お父さん」
カカシに頭を撫でられて、微妙な気持ちになる。
「あ、そうだ」
イルカはポケットから鍵を取り出した。
「これ、出掛けるなら使ってください」
ちゃりん、とキーホルダーの付いた鍵をカカシの手の平に落とす。
「これ、合鍵です。カカシさんが持っていてください」
手の平の鍵を、じっと見つめていたカカシは、ふっと嬉しそうに笑って鍵を握り締めた。
「ありがとう、お父さん」
もう一度、イルカの頭を撫でる。
「お仕事、行ってらっしゃい」
頑張ってね、と。
「はい、行って来ます〜」
カカシに見送られてイルカは玄関を飛び出す。
昨日もだけど誰かに見送られて仕事に行くなんて、やっぱり嬉しかった。



「ただいまっ!」
ばたん、と勢いよく玄関のドアを開けてイルカが帰ってきた。
「帰ってきました、カカシさん!」
「あ、お帰りなさーい」
いそいそとカカシが出迎える。
「お疲れさまでした、お父さん」
にこやかな顔で。
「わー、いい匂いがする〜」
イルカの顔が綻ぶ。
家の中は温かく、カカシが朝に言ったとおりご飯を作っていてくれたのだろう。
食欲をそそる匂いがそこかしこでしている。
イルカのお腹が素直に、ぐーっと鳴った。
「今日もお腹が空いているんですね、お父さん」
「あ、はい」
腹を摩っているイルカを見てカカシは微笑んだ。
「すぐ、ご飯にしますね」
「あ、じゃあ、俺、手を洗ってきます」
だっと洗面所に駆け込んだイルカは急いで手を洗って、ついでに顔も洗う。
仕事から帰ってきて、すぐにご飯が食べれるなんて・・・。
顔がにやける。
誰かがご飯を作って、待っていてくれる家に帰ってこれるなんて・・・。
なんて嬉しいことだろう。
誰も居ない家に帰ってきて、疲れた体でご飯の支度をして、一人寂しく食べなくてもいいのだ。
今はカカシがいるから。
一人ではなく、二人の生活。
話す相手がいれば、一緒にご飯を食べたりするのも楽しい。
「案外、いいかも」
最初は記憶を失っている状態のカカシとの生活に困惑したけれど。
お父さんと呼ばれて悩んだけれど。
それも悪くないかもしれない。
カカシさんが傍にいてくれるなら・・・。
カカシはイルカの寂しい心の隙間を埋めてくれているのだ。



「ご馳走様でした」
カカシの作ってくれたご飯を全部、平らげてイルカは手を合わせた。
「すっごく美味しかったです」
いっぱい食べちゃった、と言いながら空になった皿を積み重ねる。
「今日はカカシさん、先にお風呂に入ってください。俺、後片付けしておきますから」
「そうですか」
昨日はイルカが先に風呂に入ったので、今日はカカシが先に入ってもらう。
「何か悪いですね」
カカシが済まなさそうな顔になる。
「俺、今日も昨日と同じく一日、寝ていただけなのに」
そんでもって本を読んでいただけなのに。
本というのはカカシの家から持ってきた本なのだろう。
その本なのだが、大量に持ってきたはずなのに、あれからイルカは見ていない。
カカシがイルカの家のどこに隠したのか、探しても見つからなかった。
ちょっと興味がある、カカシがどんな本を読むのか。
・・・まあ、そのうち読ませてもらおう。
暇なときにでも。
肝心の本が見つかればの話だが。



交代で風呂に入り、風呂から上がったイルカは居間でうとうとしてしまっていた。
カカシに肩を揺すられる。
「・・・さん、お父さん」
「ん〜」
「寝るならベッドで、ですよ」
「まだ、寝ない〜」
「とても眠そうですよ」
イルカはテレビの画面を見ようと眠そうな目を擦った。
「テレビ見たいから、まだ寝ない」
子供みたいなことを言っている。
寝る前にテレビを見るのが習慣になっているようだ。
「もう少しだけ起きてる・・・」
言いながらも、瞼は落ちてきていて、時折、首ががくっとなったりしていた。
「困った、お父さんですねえ」
ちょっと思案したカカシは、よっこらしょっと眠そうなイルカの隣に座って胡坐をかく。
ぽんぽんと自分の足を叩いた。
「お父さん、こっち来てください」
眠気眼のイルカがカカシを、ぼんやりと見る。
「ほら、早く座ってください」
つまり・・・。
カカシは胡坐をかいた自分の足の間にイルカを座らせるということだ。
年は一つしか違わないが、体格ではカカシが少々勝っている。
イルカを足の間に座らせて、寄り掛かられても何の問題もなかった。
「これならいいでしょ」
カカシは満足そうだ。
「はあ、まあ」
あったかい・・・。
イルカの目は、とろんとしてくる。
テレビを見たいのに、カカシの温もりに抗えない。
カカシに寄り掛かって背を預けるとイルカは、すうっと眠りに落ちていってしまう。
眠さに勝てない。
否、カカシが与えてくれる温もりに勝てなかった。
あー、気持ちい〜。
心地良い眠りの中でイルカは微かに思ったのだった。



こてっとカカシに寄り掛かって眠ってしまったイルカを暫し、カカシは見入ってしまう。
目を閉じて、すうすうと寝息をたてながら眠るイルカ。
非常に健やかな顔をしていた。
その顔を、そっと撫でてみる。
「ううん・・・」
撫でられたのが嫌だったのか、イルカがカカシの手から逃げるように顔を背ける。
更に追いかけて顔を撫でると、嫌々と首を振る。
撫でるのを止めると安心したように、また寝息をたて始める。
「・・・やっぱりかわいい」
朝もかわいいと思ったけれど、今もかわいい。
なんでだろう。
なんで、こんな風に思うのだろうか。
「よっと」
眠ってしまったイルカの体を抱き上げてベッドに運んで寝かせる。
その間もイルカは起きる気配はない。
イルカに布団を掛けるとカカシも、その横に潜り込んだ。
隣で眠るイルカの寝顔を見つめるカカシ。
「ずっと」
ぽつりと呟いた。
「ずっと、お父さんといたいなあ」
ずっと一緒にいたい。
イルカとの暮らしは楽しくて、しょうがない。
イルカがいると気持ちが穏やかになる。
部屋の明かりを消すとカカシは目を閉じた。
すぐ隣にイルカの体温を感じながら。




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