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Cookie&Biscuit 7



「んじゃ、俺、仕事に行ってきますけど」
朝食を食べ終え、身支度をしたイルカはカカシを振り返った。
「帰ってくるのは遅くなるかもしれないので、カカシさん、適当に食べていてくださいね」
「お父さんが帰ってくるまで待っていますよ」
どこにあったのか、カカシが黒字の腰巻エプロンをしている。
それで手を拭きながらイルカを見送るために玄関先にいた。
エプロンをしているということはカカシはイルカのために朝食を作ったということだろう。
「あと、家の中の物は勝手に使っていいですから。外出するときは寝室の棚の上にある鍵を使ってください」
「はい、分かりました」
「つまらなかったら、自分の家に帰ってもいいですから」
「ここが俺の家ですけど」
不思議そうな顔でイルカに言うカカシは真面目である。
「ここより他に俺の家はありません」
「そ、それならいいんですけど」
さらっとカカシの手がイルカの髪を撫でた。
「ご飯作って待ってますから、早く帰ってきてくださいね、お父さん」
にこりと笑う。
「・・・はい、カカシさん」
誰かに見送られるなんて、何年ぶりだろう。
ぽっとイルカの胸があったかくなる。
「行って来まーす!」
玄関から飛び出して見送るカカシに手を振るとカカシが叫ぶのが聞こえた。
「行ってらっしゃーい、怪我しないでくださいねー」
「はーい」
誰かが家で自分の帰りを待っていてくれる。
嬉しくなる気持ちを抑えながらイルカは明るい気分で任務に行ったのだった。



「・・・つ、疲れた」
夕方というよりも夜に近い頃。
よろよろっとイルカは歩いていた、家に向かって。
家に帰って、ばたんきゅーっと寝てしまいたい。
朝のときの明るい気分は吹き飛んで、今は暗い気分になっていた。
「午前中のアカデミーの仕事だったけど」
よろめきながらアパートの二階へと続く、外階段を上っていく。
手すりに掴まりながら。
「午後からの演習つか、いきなり実践訓練ハードモード?なんだ、あれ・・・」
相当、過酷だったらしい。
「めちゃくちゃ疲れたじゃんか」
はあ、と息を吐いたところで家の前に着いていた。
玄関扉を開けると、ふわっと温かい空気がイルカを包む。
食欲をそそるいい匂いがしてイルカの食欲を刺激した。
お腹が素直に、ぐーうっと鳴る。
「あ、お父さん、お帰りなさい」
いそいそとカカシが出迎えてくれた。
「た、だいま」
「もう、ご飯できてますよー、お風呂も沸いています。ご飯にしますか、それともお風呂?あ!この台詞、新婚さんみたいですね!」
なんちゃって〜、と照れながらも、カカシは自分で言ったことに何故か満更でもない様子だが。
「カカシさん、俺たち『親子』ですよね?」
一応、言っておいた。
仮の親子ではあるが。
カカシの方がイルカよりも年齢が上だけど。
「ああ、そうでした、親子でしたね」
カカシは少し残念そう。
「さ、お父さん」
カカシはイルカに手を差し出した。
「お腹が空いているようですから、先にご飯を食べましょう」
「・・・はい」
差し出されたカカシの手をイルカは掴む。
その手は、しっかりとイルカを掴んでくれる。
家に帰ってきたなと思ったのだった。



「ご馳走様でした」
イルカは丁寧に手を合わす。
食事の際に、いただきます、ご馳走様をするときは手を合わすように両親に教えられた。
食べ物への感謝と作ってくれた人への感謝として。
「すっごい美味しかったです、カカシさん」
「いえいえ、たくさん食べてくれて嬉しいですよ」
カカシは満足そうに笑っている。
「これでこそ、作り甲斐があるってもんです」
「あ、俺、食器洗いますから」
後片付けを申し出ると、あっさりカカシにかわされてしまった。
「いいですよ、俺がしますから。お父さんはお風呂に入ってらっしゃい」
「でも」
「俺は今日一日、家に居ただけですから疲れていませんから」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
お願いします、と頭を下げる。
ふと疑問に思った。
「カカシさん、一日、家に居て何をしていたんですか?」
自慢ではないがイルカの部屋は決して狭くはない。
台所に居間に寝室。
とてもシンプルな作りだ。
「何って、えっと」
ぎくっとしたカカシの目が泳ぐ。
「朝はお父さんが行ってから二度寝して、そのまま昼寝もして、起きたら本読んで、また寝て」
そんで起きたら夕方でご飯作って、お父さんの帰りを待っていました。
「それって一日のほとんど寝ていたってことですか?」
「・・・・・・ええ、まあ、つまり」
カカシは寝ることが得意のようだ。
「じゃ、風呂に入ってきますね」
カカシについて新たな発見をしたイルカは何だか、うきうきしてしまう。
カカシと自分との距離が縮まったような気がした。



「・・・さん、お父さん!」
ゆらゆらと揺さぶられてイルカは薄っすらと目を開けた。
「ん〜?」
誰かがイルカを覗き込んでいる。
イルカを呼んでいるのだが。
「お父さん、寝ちゃ駄目です」
ここで寝ちゃ駄目ですよ、風邪ひきますよ〜と必死に誰かは訴えてきている。
「お風呂のお湯が、すっかり冷えてきているじゃないですか」
イルカの家の風呂は追い焚きタイプだ。 入る度に沸かさなければならない。
そのままにしておくと当たり前だが湯は冷める。
「あー・・・」
思い出した、自分は風呂に入っていたのだ。
へらっとイルカは笑った。
笑ったつもりだった。
「へーきですよ、へーき」
目が閉じていく。
「お風呂で寝るの慣れてるんで・・・」
イルカは風呂が好きで長湯する。
長湯ついでに風呂に寝ながら入るのも慣れてしまった。
長いときには朝まで浸かっていたこともあるほどだ。
それをカカシに言うと目を吊り上げた。
「お父さん!」
風呂場で腰に手を当ててイルカを見下ろすカカシ。
「風呂好きなのは分かりましたけど、風呂の中で寝るのは禁止です!いつか、絶対に溺れますよ!」
何やら怒っている。
「・・・はーい」
とりあえず、返事をしてイルカは目を瞑る。
「ちょっと!話、聞いてますか、お父さん」
「うー・・・」
水の中は気持ちがいい。
「俺は風呂がまだなんですけど、一緒に入っていいってことですね?入りますよ、一緒に。お父さんが風呂に入って、二時間近く経過しますし」
ばっとイルカは目を開けた。
はっとしてカカシを見上げる。
「ごめんなさい」
水の中から謝った。
「次の人がいるのに風呂で寝ちゃって」
そう、今はイルカ一人ではなくカカシとの共同生活だ。
他の人のことも考えなくてはいけない。
自分の中心の生活は出来ないのだ。
「カカシさんもお風呂に入りたかったんですよね、すぐ出ますから」
ざばっ。
浴槽で立ち上がると冷めた湯が外に零れた。
「今、交代しますから」
そのまま、すたすたと風呂場を出て行く。
もしかして、イルカは寝ぼけているのかもしれない。
風呂場に一人取り残されたカカシは暫くの間、硬直したままで。
その後、顔を赤くしていた。
風呂場で心頭滅却したカカシが風呂から出るとイルカは既に眠っており、よく拭かなかったのだろうか、洗い髪が額に張り付いたままになっていた。
カカシはその髪を、そっと額からかき上げると、じっとイルカの寝顔を見つめていたのだった。




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