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Cookie&Biscuit 3



「ところで」
イルカは夕方近くになって、そわそわしてきた。
「夕飯は何を食べましょうか?」
記憶を失っても大人なカカシ、でも子供。
そんな人には何を食べさせればいいのか、考えてしまう。
「俺が子供の頃に喜んで食べたものといえば・・・」
カレーとかハンバーグを思い出す。
母親が手作りしてくれたカレーは、とても美味しかった。
そして、今でも好きだ。
余りというか、全然、料理が得意ではないイルカでもカレーならば作ることが出来る。
「うん、そう、夕飯はカレーにしよう!」
「カレー?」
ちょこんと正座したカカシがイルカを見る。
「そうです、嫌いですか?カカシさん」
「嫌いじゃないです」
「じゃ、夕飯はカレーってことで」
早速、冷蔵庫の中を見てみると空っぽだった。
「あ、そうか」
任務に出るので冷蔵庫の中には、なるべく物が残らないようにしておいたのだ。
保存が利くもの以外。
「買い物に行かないといけないなあ」
くるっと振り向いてカカシに訊いた。
「俺、買い物に行きますけど一緒に行きますか?それとも留守番しています?」
「一緒に行きます」
カカシは即答した。
「お父さんと一緒に買い物に行きます」と。



にこにこにこ。
イルカと手を繋いでいるカカシは、ずっと笑っている。
しかし、イルカは複雑だ。
里の中の店が立ち並ぶ、人が多い場所で男同士が手を繋ぐということは・・・。
カカシとイルカを見る人が何を思っているのか。
そう考えるだけで頭が痛い。
たとえ、今はカカシに「お父さん」と呼ばれていてもだ。
「お父さん、何を買うんですか?」
「えーと、野菜と肉と、それと・・・。あ!」
そういえば米もない。
イルカの家の米びつが、すっからかんだったのを思い出した。
「あと、お米です」
「ふーん」
「カカシさんは何か欲しいのありますか?」
「いーえ、特には」
「じゃ、忘れないうちにお米を買ってしまいましょう」
そうして、米を買ったのだ、十キロも。
「しまった、重いものは最後に買うのが買い物の鉄則だった・・・」
十キロの米を持って買い物するのは大変だ。
「あ、持ちますよ〜、これくらい」
ひょいとカカシはイルカの持っていた米を取り上げた。
イルカと繋いでいる手ではない方の手で軽々と肩に担いでしまう。
「す、すみません」
「いいええ〜」
イルカは恐縮しながらも買い物を続けた。
野菜を選んでいるとカカシが茄子が好きだというのが判明した。
「俺、茄子の味噌汁が好きなんです」
「んじゃ、それ、作りましょう」
考える手間が省けたのでイルカにとっては嬉しい情報だ。
「あ、それと」
魚が売っているのを見てカカシが言い出した。
「秋刀魚が食べたいなあ」
「カカシさん、秋刀魚が好きなんですか?」
「うーん、多分。塩焼きにしたら美味いと思うんです」
「なら、買って行きましょう」
夕飯のメニューは急遽、カレーから秋刀魚の塩焼きに変更された。



「と言っても」
買い物を済ませて家に帰ってきたイルカは秋刀魚を前に悩んでいた。
「秋刀魚の塩焼きってどうやるんだ?焼けばいいの?このまま?」
一人暮らしのイルカは家で魚を殆ど食べない。
食べたとしても魚の切り身を焼く程度で、丸ごとの魚の扱いは解らなかった。
「うーん・・・。とりあえず、捌けばいいのか?頭をぶった切って?」
きらーんと包丁を振りかざして秋刀魚に挑もうとしたイルカに「待った」の声が掛かった。
それはイルカの調理を後ろで見ていたカカシだ。
「待ってください、お父さん」
「ん?何ですか、カカシさん」
「秋刀魚のことなら俺に任せてください」
「そう・・・ですか」
「はい」
イルカの手にして包丁を手に取り、カカシは秋刀魚の下処理をしていく。
内臓を取り出して身を綺麗にした。
「これで塩を振って焼けばいいんです」
「へえ〜」
手際よく、フライパンで秋刀魚を焼いていく。
イルカの家で焼くといえば、フライパンくらいしか調理器具がない。
「炭火で焼くと格別に美味しいんですよ。今度、七輪を買ってきましょう」
七輪なんてイルカの家にはない。
「美味しい秋刀魚、お父さんにも食べさせたいなあ」
話しながらカカシは、好きだと言っていた茄子の味噌汁も作っていた。
それと、ちょっとした惣菜的な物も作っている。
米も、もちろん炊いている。
「カカシさん、何でも出来るんですねえ」
イルカは目を丸くしていた。
年上といっても、自分とそれほど年が変わらないであろうカカシが大人に見える。
「こんなの何てことないですよ」
照れ笑いして謙遜するカカシ。
格好いい。
それに・・・。
記憶を失っていても、普段していることは忘れていなかったんだな、カカシさん。
でなければ、こんなに簡単にあれこれ出来ない。
なのに。
イルカは不思議に思う。
なんで、俺が「お父さん」なんだろ。
俺、何も出来ないのに。
何もしてあげることが出来ないのに。
胸の中が、もやもやとした。



「難しい・・・」
中忍試験よりも難しい。
カカシが焼いてくれた秋刀魚に、イルカは悪戦苦闘していた。
「骨が邪魔・・・」
魚の骨は好きではない。
小さい頃、喉に詰まらせた苦い思い出があるから。
細かい骨にも抵抗がある。
「少しくらいの骨なら食べても大丈夫ですよ」
アドバイスしてくれたカカシが易々と骨のある魚、秋刀魚を食べているのが恨めしい。
カカシの食べている秋刀魚が、とても美味しそうに見えるのに。
「・・・魚の骨が苦手なんです」
とうとう、イルカは白状した。
「骨と身を切り離さないと食べれないんです」
「そうだったんですか」
カカシは嫌な顔もせずに、イルカの秋刀魚の皿を引き寄せると、するすると骨と身を別々にしていく。
「こうすると、するっと骨が取れるんですよ」
コツがあるらしい。
「すっごーい!」
あっという間に骨と身が切り離された秋刀魚にイルカは目を輝かせた。
「こんな技があるなんて」
「さ、どうぞ」
「カカシさんて器用なんですねえ」
「それほどでもないですよ〜」
はにかむカカシは子供の顔で。
とても可愛らしく見えた。



「お父さん」
肩を揺らされた。
「こんなところで寝ないでください」
「うーん、あと五分・・・」
「風邪、引きますから布団で寝てください」
「後で〜」
「それは駄目です」
風呂上り、イルカは居間で少しだけ横になったつもりが寝てしまっていた。
考えてみれば任務明けで、カカシの面倒を引き受けて、慣れないことをしたりして疲れていたのだ。
「ちゃんと寝ないと疲れがとれませんよ」
そうはいっても体が言うことをきかない、動かない。
それにだ。
夢現でイルカは思った。
うちって、寝る場所が一つしかないんじゃなかったけ。
イルカの寝ているベッドだけ。
客用の布団はない。
なら、カカシさんにベッドで寝てもらって俺は、このまま、ここで。
動くのが面倒くさい。
このまま、ここで寝ていたい。
「お父さん?」
カカシの声が遠くに聞こえる。
そのときだ。
ふわっと体が浮いた。
それから、そっと下ろされる、柔らかい場所に。
ベッドの上のようだった。
何やら体が包み込まれるように温かくなる。
その温かさにイルカは安心してしまった。
「狭いですけど、くっ付いて寝れば平気ですね」
おやすみなさい、と声が聞こえて、額に何かが触れた。
優しく触れる何かは昔を彷彿とさせた。
子どもの頃、寝る前に両親がイルカの額に「おやすみ」のキスをしてくれたことを。
今は、それが何かは解らない。
解らなかったがイルカは既に、ぐっすりと眠ってしまっている。
あどけない寝顔のイルカ。
「お父さん」と呼ばれながらも、どっちが子供か分からなかった。


Cookie&Biscuit2
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