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あなたへの言葉9



カカシが任務で里に不在になった数日後、イルカは受付け所で真っ白な顔して震えていた。
震えながらも何とか仕事をしている。
そんなイルカを見かねて同僚が言った。
「イルカ、熱があるんだろ?もう帰れよ。」
「でも、今日は受付け所の交代要員いないし。」
「俺、一人でも何とかなるさ。」
イルカは強情に頭を振った。
「いや、悪いよ。俺なら大丈夫だから。」
「でもな〜。昨日の大雨の中のアカデミーの演習して、それで最後まで残って後片付けしていたから、雨で体が冷えて風邪引いたんだろう?」
同僚は肩を竦める。
「我慢大会じゃないんだからさ。熱があるのに、仕事なんて無理すんな。」
むしろ悪化したら厄介だぜ、と言われると流石のイルカも折れた。
「分かった、医務室で少しだけ休んでくる。」
「帰れって。」
「大丈夫だって。」
イルカは、ふらふらと席を立つと、ふらふらと医務室へ向かった。



医務室に着くと、ベッドの横に額宛もベストも放り出して縛っていた髪紐を乱暴に解くとイルカは、ばたりとベッドに倒れこんだ。
「・・・寒い。」
そう呟いてイルカはベッドの毛布の中に潜り込んだ。
毛布は柔らかく温かいのだが、眠ろうと目を閉じても中々、寝付けない。
やたらと、ある人のことが思い浮かんだ。
「カカシ先生・・・まだ、帰って来ないのかな・・・。」
口に出して認めるのは嫌だったが、イルカは無性に寂しかった。
病気の時は気弱になるって本当だな。
イルカは、目を閉じて眠ろうと努力した。
そして、いつしか眠りに落ちたのだった。



眠りの中のはずなのに、どこからか声が聞こえてきた。
遠くから呼びかけられる。
「イルカ先生。」
懐かしい声だ。
頭を優しく撫でられる。
「大丈夫?」
任務で不在のはずのカカシの声だ。
「・・・カカシ、先生?」
イルカが薄っすらと目を開けると、本当に目の前にカカシがいた。
「そうです、俺ですよ。」
カカシは心配そうに眉尻を下げて、イルカが寝ているベッドの横にいる。

「な・・・。」
なんで、と聞きたかったのだがカカシの顔を見て安心してしまったのか、イルカ言葉に詰まった。
カカシの声を聞いて、なんだか胸に熱いものが込み上げてくる。
「ついさっき里に帰ってきて、真っ先に受付け所にいったらイルカ先生がいないから聞いてみたら、具合が悪くて医務室に行っているって言われてね。」
飛んできました、とカカシは答えながらイルカの額に手を当てた。
「高い熱が出てますね、風邪かな?早く帰って休まないと。」
「・・・でも。」
「受付けの方には俺が連れて帰るって言ってきたから、気にしなくていいですよ。」
「そんな、俺、だい・・・。」
大丈夫です、大丈夫だから仕事に戻ります、と言いたかったのだが、どうにも声が出てこない。



それならば、大丈夫だから心配しないでください、風邪が移ってしまうから一人で帰ります、と言うべきだ、ということはイルカは頭では分かっていた。
でも、カカシに心配されたい、自分のことを気にしてほしいという気持ちが優先されてしまう。
そんなイルカを、どう思ったのか、カカシは愛しげな目でイルカを見ると、こう言った。
「俺が帰ってきたから何も心配いりませんよ。」
イルカの両手を取って、自分の両手で包むように握ってくれる。
「体調の悪い時は誰だって不安になるんだから、イルカ先生は俺に頼っていいんですよ。」
何も言うことができず、イルカは黙ってカカシの手を握り返した。

「帰りましょうか。」
カカシはベッドの周りに散乱していたイルカの持ち物を素早く拾い集めると、カカシは膝を付いてイルカに自分の背を見せた。
「イルカ先生、背負っていくから、俺の背中に乗ってくれる?」
「・・・・・・え?いえ、それは・・・。」
躊躇うイルカに「早く。」とカカシは催促する。
「早く帰らないと症状が悪くなりますよ。」
「・・・すみません。」
イルカはベッドの上からカカシの肩に手を掛けて、そっと背に乗った。
「よいしょっと。」
掛け声を掛けてカカシは立ち上がる。
「家に着くまで寝ていて、いいですからね。」
「はい。」
何から何までカカシに面倒掛けて悪いと思いながらも、イルカは心の底から安堵してしまった。
カカシが自分の傍にいてくれて嬉しかった。
自分のことを気にかけてくれて、心配してくれて嬉しかったのだ。



背負われたイルカはカカシの肩に静かに頭を乗せた。
心地よくて安心する。
先程のベッドの上での眠りとは違い、カカシの体温を感じるとイルカは、すぐに眠りに誘われた。
カカシ先生がいてくれて良かった。
イルカは眠りに落ちながら、そう沁み沁み思う。


そして心のどこかで思った。
俺、カカシ先生のことが好きなのかも・・・。
カカシ先生がいる時と、いない時では自分の気持ちが、こんなにも違う。
カカシ先生が傍にいてくれると、嬉しくて安心して心が落ち着く。
好きな人と一緒にいると、こんな気持ちになるのだろうか。
それなら、俺はカカシ先生のことが、多分・・・。


好きなんだ、きっと。
最後に、そう結論が出したイルカの寝顔は穏やかだった。





あなたへの言葉 8
あなたへの言葉 10






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