あなたへの言葉7
一回、腹を割って話したのが良かったのか、カカシは飲みに行った後イルカに特に何も言ってこなかった。
何も、、とは三度目のキスの相手のことである。
普通の友人としてカカシはイルカに接してくれていた。
友人として大切にしてくれて、友人として付き合うごとに仲も親密になっていった。
イルカが危惧していた、周囲からの揶揄等は杞憂に終わるらしい。
安堵の息をイルカは、こっそりと吐いた。
最初に会ったにカカシが発言した、ファーストキス云々はイルカが、きっちり訂正しておいたので噂として広がることはなかった。
その代わり、カカシに好きな人がいて結婚するという噂も掻き消えたので、ある現象が起きていた。
アカデミーから受付け所のある棟へ向かうイルカの耳に女性の声が聞こえてきた。
「カカシさん!」
どうやら、カカシが女性と二人でいるらしい。
「好きです!」
女性は告白している。
聞いてはいけない、とイルカは思い通り過ぎようとしたのだが、カカシの返答が妙に気になり足を止めてしまった。
女性は熱心に言っている。
「好きなんです。付き合ってください。」
「あ〜。」
カカシの口調から困っている様子が伺えた。
「うーん、あのね。」
考えながらカカシは言っているようだった。
「好きという言葉は受け取れません。不要です。だから付き合えません。」
きっぱりと断っている。
「そんな・・・。」
「悪いけど、それどころじゃなくてね。ごめんね。」
少ししてから女性が立ち去る気配があった。
イルカは聞いてしまったことに罪悪感を抱いて、その場を立ち去った。
カカシ先生って人気があるんだなあ、と受付けをしながらイルカは、ぼんやりと心の片隅で考えた。
女性に告白されたことなんて、俺の人生において一度もないよ、と心中、溜め息をつく。
俺から告白したこともないけどね、と考えて更に深い溜め息が出る。
それに、と、最初にカカシに会った時に二人で飲みに行った時のことを思い出した。
あれから大分、日が経っている。
カカシ先生にキスを何回も経験しているなんて言ってしまったけど本当は、そうじゃない。
イルカの人生の中でキスをしたのは二回だけで、相手はカカシだけだった。
意地を張って、そのことを言えず、あんなことを言ってしまったとイルカ派後悔して気が滅入る。
もし、本当のことがカカシ先生が知ったら、どう思うだろうか?
嫌われてしまうかな、と不安になってきた。
夕方、受付け所の人が途絶えた少しの間、そんなことを考えてイルカは気もそぞろになってしまった。
だから気がつけなかった。
「イルカ先生?」
目の前にカカシの顔があった。
「どしたの?気分でも悪い?」
「え?・・・・・・カ、カカシ先生っ。」
突然のことに焦ったイルカは危うく椅子から滑り落ちそうになる。
そんなイルカの腕を掴んでカカシは落ちるのを食い止めてくれた。
「す、すいません。」
イルカはカカシのことを考えていて、本当にカカシが現れたものだから、ひどく動揺していた。
心臓も早鐘を打っている。
顔も心なしか、熱く火照っていた。
告白を勝手に立ち聞きしたこともあり後ろめたい気持ちもある。
「何でもないんです。」
イルカは椅子に座りなおすと、冷静な振りをしてカカシから報告書を受け取った。
「変なイルカ先生。」
カカシに、くすりと笑われて益々、イルカの顔は熱くなる。
素早く報告書をチェックするとイルカは自分に、落ち着け落ち着け、と念じながら言った。
「報告書は大丈夫です。」
「あれ?今日はお疲れ様って言ってくれないの。」
そんなイルカにカカシが、せがんでくる。
「あ、そうですね・・・。」
何となくカカシの顔を見るのは恥ずかしかったが、イルカはカカシの顔を見てはにかむ様に微笑んだ。
「カカシ先生、任務お疲れ様でした。」
「うん。」
カカシは嬉しそうに頷くと受付け所内にあるソファーを指差した。
「じゃあ、イルカ先生の仕事が終わるの、そこで待ってるね。」
「・・・・・・え。」
「ほら、今日は俺んちで夕飯食べるって約束していたでしょう?」
忘れちゃったの?と聞かれて、まさか忘れていたとは言えずイルカは、ぶんぶんと首を縦に振った。
「勿論、覚えていましたとも。」
「だよね。」
訳知り顔でカカシは頷くと受付け所のソファーに座って本を読み出した。
この頃、カカシとイルカの仲は、かなり親密度が増していて、互いに家に行き来し始めていたのだった。
あなたへの言葉 6
あなたへの言葉 8
text top
top