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雨7



次の日の朝。
俺は珍しく目が覚めた、朝に。
休みの日っていうと昼間で寝ている俺なのに。
今朝は気分は好くて、すごく熟睡したような感じで寝覚めは良かった。
やっぱり、イルカ先生のお陰かなあ。



イルカ先生は、というと目を閉じて未だ、すやすやと寝ていた。
寝顔は幼く見える。
可愛い寝顔に触れてみたかったが我慢した。
それだけで終われる自信がなかったからだ。
俺はイルカ先生に腕枕をしていた腕を外したのだが、少しくらい俺が身動きしても起きる気配はない。
実に、よく寝ている。
俺は音を立てないように、そっとベッドから抜け出した。



イルカ先生の濡れた服を洗濯して干して乾いた頃、イルカ先生は起きた。
ベッドの上に身を起こしたイルカ先生は、ぼうっとしているようで瞬きを繰り返している。
ゆらゆらと体が揺れていて、また寝てしまいそうだった。
「イルカ先生。」
イルカ先生を寝せてしまうのが勿体無くて俺は話しかけた。
「おはようございます。」
ソフトに話しかけたはずだったのにイルカ先生は、びくっと体を動かして、はっとしたように俺を見た。
「カカシ先生!」
驚いた顔をして、それから赤くなる。



ベッドの上で正座をして俺に三つ指突いて頭を下げた。
「すみません!昨日は本当にすみませんでした。ご迷惑をお掛けしてごめんなさい。」
必死に謝ってくる。
「え、何を?」
イルカ先生に謝られるようなことされたっけ・・・。
寧ろ、俺に好いこと尽くめで逆に礼を言いたいくらいなんだけど。



「まあまあまあ。落ち着いて、イルカ先生。とりあえず、顔をあげてよ。」
ベッドの上で頭を下げっぱなしのイルカ先生に近寄って、傍に座る。
「昨日は任務で何か色々とあったんでしょう?」
指摘するとイルカ先生は顔を上げたが俯いたままで、手は拳を握ったまま正座した膝に置かれていた。
「辛いなら吐き出しちゃいなさいよ。」
俺はイルカ先生の耳に囁いた。
ここには俺しかいないからって。
誰も訊いてないし誰にも言わないからって。



イルカ先生は俺の囁きが効いたのか、少しだけ呟くように話をした。
「人の命を奪うのって難しいですよね・・・。」
俺は黙って聞いている。
「任務の時は非情なくらい冷静で任務だからと理路整然と考えていられるですけど。」
握ったイルカ先生の拳に更に力が入り、ぎゅっと握り締められる。
何も言わず、その拳に俺は手を重ねた。
「任務が終わって一人になると思い出してしまうことがあって・・・。」
イルカ先生が顔を上げて俺を見る。
目が、ちょっとだけ潤んでいた。
「俺って駄目ですね。どんな任務をも完遂するのが忍者の宿命のようなものなのに。」
昨日の任務とは言わなかったが、今、イルカ先生が話しているのは昨日の任務のことなのだろう。



まあ、気持ちは分からなくもない。
俺も経験があるから。
「思い出すと一人でいるのが耐え切れなくて、つい・・・。」
イルカ先生の声が細くなる。
思い出すのは人の命を奪った時のことなのか。
細い声は、つい、カカシ先生を頼ってしまいました、と告げた。
聞き終わった俺はイルカ先生を眺めて思う。



この人、不器用な人だなあ。
真面目すぎて自分で自分を追い込んでいるじゃないか、と。
何か声を掛けようと思ったが、適当な言葉が浮かばない。
でもイルカ先生を慰めたい。
自然、俺の手はイルカ先生に伸びてイルカ先生を全部包み込むように、ひしと掻き抱く。
不安な気持ちがなくなればいいと思って。
暫く、そうしているとイルカ先生が俺の腕の中で動いて、静かに俺の胸を押して離れていった。



俺から離れた時にはイルカ先生は、元気良くとまでは言えなかったけど少し笑顔になっていた。
「ありがとう、カカシ先生。」
もう大丈夫みたいだ、よかった。
一応、抱きしめて効果があったみたいだ。
「この前、抱きしめてもらって眠った時はカカシ先生のこと、父さんみたいだって思ったんですけど。」
恥ずかしそうに笑ってイルカ先生は言う。
「今日、抱き締めてもらったら父さんじゃなくて、別な・・・。」
別な、何だろう?
イルカ先生の言葉に緊張する。
「別な・・・。父さんとは違う感じで俺のこと愛しく想ってくれているような雰囲気がして、どきどきしました。」
そして、にっこりと笑った。
「えっ!」
それって、それって、もしかして、俺の想いが伝わっているんじゃないの?
そんでもってイルカ先生、俺のことを特別に想ってくれているんじゃないの!
・・・と俺が、どきどきしてしまった。



イルカ先生は意識的なのか無意識なのか、意味深な発言をして俺を動揺させたのだが、乾いていた自分の忍服に着替えると、 俺の家にあった自分の唐傘を持ち、丁寧に再び、礼を言って俺の家から帰って行ったのだった。





雨6
雨8




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