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雨6



「あのう、イルカ先生。」
俺は、おずおずと切り出した。
「・・・今夜は泊まっていきますよね?」
「え?」
イルカ先生は何を言われたか分からないようだった。
「えっとですね。」
どう言ったらいいかな、と俺は思案しながら言葉を選ぶ。
間違っても誤解されないようにとか、下心を見透かされないようにって細心の注意を払いながら。



「ほら、今日はもう遅いですし、イルカ先生の服も乾いてないし、明日はイルカ先生は休みだし、俺も休みだし・・・。」
って、なんか説明すればするほど深みに嵌っていくような気がする。
「泊まっていっても問題ないかなあと思いまして。」
ここまで言って、イルカ先生が俺の服を借りれば自宅に帰れることに思い至った。
・・・そう言われたら、どうしようって、どうしようもないけど。
イルカ先生は茶の入ったカップに視線を落としている。
小さな声が聞こえた。
「もしもカカシ先生の邪魔じゃでなかったら、泊まらせていただけたら、と思います・・・。」
選択権を、こちらに委ねたような言い方だ。
「実は今、一人になりたくないんです。」
言い訳めいたイルカ先生の言葉は、今日の任務がいいものじゃなかった、という俺の推測が当たったのを意味した。
まあ、任務内容は機密事項なので訊くことも言うことも出来ず、あくまで推測だけどね。



・・・それでも、まあいい。
俺は浮かれてしまう。
イルカ先生が俺の家に泊まるなんて嬉しい。
だから喜んだ俺は口を滑らせた。
「そうですか。じゃあ、今、お客さん用の布団、用意しますね〜。」
言ってから思った。
・・・・・・俺って馬鹿じゃないの?
言わなければイルカ先生と俺のベッドで寝ることが出来たのに。
俺の家の寝具は、俺が寝ているベッドだけだと思わせて。



しかし一回、口から出た言葉は取り消すことができない。
折角のチャンスを不意にするとは馬鹿だなあ、俺。
下心が見え見えだから、こんなことになるのかなあ。
反省と自戒と後悔が一挙に押し寄せてきた。
やっぱり好きな人に対しては正々堂々、告白してから一緒の布団で寝るべきだということか。
「あのう・・・。」
じゃあ、今、イルカ先生に告白してしまおうか。
「カカシ先生?」
でも、今、告白したら弱っているイルカ先生に付け込んでいるようで嫌だなあ。
「カカシ先生。」
とんとん、と肩を叩かれて振り向くとイルカ先生が立っていた。
「あ、イルカ先生。」



俺が、しょうもないことを、ぐるぐる考えているところにイルカ先生は声を掛けていたらしい。
考えに夢中になっていてイルカ先生の声が聞こえていなかったのだ。
イルカ先生の声なのに。
「な、何でしょう?」
しょうもないことを考えていたのを誤魔化すために、あははは〜、と乾いた笑いが漏れてしまう。
イルカ先生は俺の顔を、じっと見詰めてから思い切ったように言ってきた。
「出来たらカカシ先生と一緒に寝たいんですけれど。」
「えっ!」
「ご迷惑じゃなければ、先日、俺の家で一緒の布団で寝たいんです。」
ちょっと思いつめたような顔だ。
「駄目ですか?」
真剣に訊いてくる。
なんと言うか、子供が大人に許しを請うような、そんな感じだった。



きっとイルカ先生は、俺と一緒に寝たいって言っても俺と全く異なる考えで寝たい、と思っているんだよなあ。
この前の『父さん』発言のこともあるし。
イルカ先生の真剣な顔を見て、俺は気持ちを切り替えた。
不埒な考えを一掃して、年上の大人として言う。
「いいですよ。迷惑なんかじゃありません。」
カッコつけて微笑むとイルカ先生は嬉しそうに頬を緩ませる。
その笑顔が本当に嬉しそうで俺は、これで好かったんだ、と心から思った。




その夜。
俺のベッドで一緒に横になったものの、俺の隣のイルカ先生は寝付かれないのか何度も寝返りを打っていた。
風呂に入って落ち着いたかと思っていたが、そうではないらしい。
寝ているだけなのに誰も脅かす人はいないのに、どきどき、としているのが伝わってくる。
何かを思い出しているのか緊張しているようで、気配も穏やかではない。
寝返りを打った拍子にイルカ先生の肩が俺の肩に触れた。
肩が触れて、なんとなく、俺は・・・。
そっと手を伸ばしてイルカ先生を、ゆっくりと抱え込むように胸に抱く。
イルカ先生は、ぎゅっと俺に抱きついてきた。
額を俺の肩口に押し付けてくる。
抱きしめたイルカ先生の背中を無言で撫で続けいるとイルカ先生の気配は穏やかになっていき、いつの間にか俺もイルカ先生も眠っていたのだった。




雨5
雨7




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