雨5
イルカ先生を自宅に連れ帰った俺は、まず訊いた。
「イルカ先生、明日は休み?」
こくん、とイルカ先生は頷く。
頷くと顎から、ぽたりと雨水が落ちる。
まあ、任務を終えた次の日は大抵、休みなんだよね。
俺もだけど。
それだけ確認すると、俺は風呂場へイルカ先生を押し込んだ。
俺んちの風呂はボタン一つで熱い湯が出てくるので、あっという間に風呂は湯で埋まる。
こんな時は、とても便利だ。
イルカ先生には風呂で、よく温まるように言い聞かした。
「いいですか?お風呂で、よーく、あったまるんですよ。」
それから脱いだ服は洗濯機に入れておくように言う。
びしょびしょの忍服は、さすがに洗わないと駄目だろう。
「でも、それは。」とイルカ先生は躊躇っていたけど俺は、少し強い口調で諭した。
「濡れた服なんて着たら風邪を引きますよ。代わりに俺の服を置いておきますから、それを着てください。」
再び頷いたイルカ先生は、今度は俺に言われた通り素直に風呂に入ったのだった。
「さて、と。」
イルカ先生を風呂に入れた俺は自分も濡れた服を着替えて、イルカ先生の着替えも用意する。
勿論、俺の家に泊まらせるつもりだった。
身につける肌着は新しいものがあるとして、問題は服だ。
俺は目の前に置いたイルカ先生に着替えさせるための候補の服を見て悩んでいた。
浴衣がいいか、パジャマがいいか、黒の忍服上下がいいか・・・。
浴衣が似合いそうだけど、すぐ肌蹴けて寒そうだし、浴衣の肌蹴たイルカ先生を俺が必要以上に見てしまいそうで怖い。
忍服は着せてもいいけど、外も歩ける服だから朝になってイルカ先生がいなくなってなんて、ありそうで嫌だ。
結局、無難なパジャマを用意してにして脱衣所に持っていた。
「着替え置いておきますからね。」とイルカ先生に声をかけて。
返事はなかったがイルカ先生は分かったようだった。
それから俺は薬缶で湯を沸かした。
お風呂上りのイルカ先生に熱くて、そして甘いお茶を飲ますためにだ。
多分、お腹は空いていなさそうだし。
かちり、と点火すると俺はお茶の用意を始めた。
用意しながら考える。
イルカ先生の元気がなかったのは任務が余り、いいものじゃなかったじゃないかな、と。
そりゃあ、任務を選り好みすることはできないけれど、任務の内容如何ではナーバスなったり落ち込んだりするものだ。
俺だって例外じゃない。
それを極力、表面に出さないように訓練されてはいるけれど、まあ、忍者だって人間だしねえ。
時は辛い事だってある。
辛い任務の後は人が恋しくなるっていうし、イルカ先生を俺の家に連れてきて丁度良かったかも。
いや、だからといって、どうこうするつもりはないんだけど・・・。
湯が沸いたので、お茶の葉を入れたティーポットに湯を注ぐ。
冷めないように蓋をしてポットの上に専用の保温のカバーを被せておいた。
これなら、お茶が冷める心配はない。
そうこうするうちに風呂場から音がしてイルカ先生が上がってきた。
ほかほかと体から湯気を出しているイルカ先生の顔色は赤味が差していた。
俺のパジャマを着ていることに俺が、どきどきしてしまう。
少し裾や袖が長いのが、また可愛い。
イルカ先生は風呂に入ったためか、表情も心なしか落ち着いたようだった。
「すみません。」
風呂から上がってきたイルカ先生は俺に頭を下げる。
「ご迷惑をかけてしまって。」
「いいええ、そんなことないよ。それより、何か食べますか?」
イルカ先生は首を横に振る。
「じゃあ、お茶だけでも飲みますか?」
「はい。」と答えたのでポットから茶をカップに注ぎ、砂糖を多目に入れてイルカ先生に渡した。
俺のベッドに腰掛けていたイルカ先生は茶を一口飲んでから微笑んだ。
いつものように。
「甘くて美味しいです。」
嬉しそうにしているイルカ先生を見て俺は、やっと安心したのだった。
雨4
雨6
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