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雨2



その日、俺はイルカ先生の受付けの仕事が終わるのを待っていた。
受付け所の隅っこで目立たぬように、いつもの本を読みながら。
先日、雨でお世話になったので、そのお礼にと食事に誘ったのだ。
イルカ先生は「そんなにいいのに。お互い様ですよ。」と謙虚に遠慮していたのだが、俺が半ば強引に誘った。
こうでもしないとイルカ先生と食事なんて、ましてや二人きりで食事なんていけやしないからね。



お互い、教え子を通じて見知った仲ではあるけれど、二人で食事や飲みにいく機会がなかったからさ。
俺が一方的に見初めて好きなった感じだし。
だから、この前、雨で立ち往生していた俺をイルカ先生が自宅に招いてくれたのも珍しいと言えば珍しい。
初めてイルカ先生の家に行って、いきなり泊まることになって、しかも一緒に布団で寝るなんて奇跡にも等しいのではないだろうか。
だって普通は、そういうのは好きな人同士がするもんで、ということは・・・。
受付け所という人が多い場所で危うく、不埒な考えに及ぼうとして俺を自分自身でストップをかける。



いけないいけないと思いながら、ごほんと咳払いをしてイルカ先生を何気なく見ると目が合った。
イルカ先生が、にこっとしながら小さく俺に手を振ってくれる。
それを嬉しく思いながら俺も小さく手を振り返した。
多分、先日、俺を家に泊めてくれたのはイルカ先生にとって、知り合いとしての好意の延長上の行動に違いない。
特に何の思惑もなく、困っている人がいたから助けてあげたのに過ぎない。
それは分かっているんだけど、希望を持つのは悪くないよな・・・。
もしかしてイルカ先生が俺に人並み以上の好意を持ってくれているかもしれないということに。



だから飯にも誘ってくれたし風呂にも入らせてくれたし、一緒に寝ても嫌がらなかったし。
俺は、そう思い込むことにした。
イルカ先生のように何事も前向きに考えよう、そうしよう。
うんうん、と一人で勝手に頷いていた。
・・・まあ、この前、イルカ先生が眠り際に言っていた『父さん』ってのが、ちと気になるけどね。
本当にイルカ先生は俺のことを、そう思ったのかなあ。
父親ようだと。



「カカシ先生。お待たせしました。」
俺が、つらつらと止め処もないことを考えているとイルカ先生が俺の前に立っていた。
「すみません、待っていただいてしまって。」
「いいんですよ。」
本を閉じて俺は立ち上がる。
「待つのなんて苦になりません。」
イルカ先生を待つのなんて、幾らでもできます。
「もっと待っていても、いいくらいですよ。」
イルカ先生を待っているのだと思えば気分も弾む。
「そうですか。」
俺の言葉を聞いてイルカ先生は、はにかんだように笑った。
「そう言って頂けると気が楽です。」
ありがとうございます、と言われる。
その言葉を聞いてイルカ先生にとって、俺は良い人なんだろうなあ、と漠然と思った。
きっと、俺ってイルカ先生にとって『父さん』的立場なのかもね・・・。



受付け所を出て外に出ようとした時、雨が降り出していたことに気がついた。
この時期、雨が、よく降るなあ。
イルカ先生も同じことを思ったようで「あ、雨だ。よく降りますねえ。」と俺の隣で呟いている。
二人とも傘は持っていない。
どうしようか、と思案しているとイルカ先生が言った。
「アカデミーに置き傘があるので取ってきましょう。」
受付け所がある棟からアカデミーは近い。
「なら、一緒に行きますよ。」
そうして俺はイルカ先生と傘を取りにアカデミーへと向かったのだった。





雨3






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