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雨宿り6



カカシの話は続く。
ちょっと頬が赤く染まっているのは気のせいか。
「イルカ先生と偶然、いえ、運命の出会いをして俺、すっごくときめいちゃって。」
ときめくって・・・、どういう意味だっけ・・・。
話は聞こえているのに意味が理解出来ないイルカは呆然としていた。
まさに口を、あんぐり開けてといった状態だ。
「二人きりで木の下で雨宿りなんて、ああ、なんてロマンチックなんだって感動もしちゃって。」
ロマン・・・チックって何だっけ・・・。
「イルカ先生が風邪気味だって頭では分かっていはいたんですが、あのロマンチックなムードとシチュエーションを壊すのがもったいなくて。」
カカシ先生は、いったい誰の、何の話をしているんだ?
それがイルカの見解だった。



「それに、イルカ先生。」
やけにキラキラする瞳でカカシはイルカを見つめてくる。
「俺に迫ってくるし。」
俺がカカシ先生に迫る・・・。
この場合、迫るって、一般的に言うと。
一般的に言うと色っぽい類の、恋愛系の話だろうか。
話を聞いていたイルカは頭が痛くなってきた。
熱が再び、出てきたのかもしれない。
「俺に抱きついて来た時のイルカ先生、可愛かったなあ。」
カカシは夢見るように、うっとりしている。
抱きついてきたというのはイルカが暖を取ろうと無意識にカカシに体を寄せてしまったことを指し示しているらしい。
「俺の胸の中に飛び込んできたイルカ先生ってば子猫のように震えちゃって。」
成人男性に子猫の表現は果たして適切なのだろうか。
ベッドの中でイルカは布団に顔を隠してたくなってしまう。
カカシの顔が見れない。
だってカカシ先生、きっと恥ずかしい話をしているに違いない!
風邪のため、ぼうっとして明確に判断できない頭でも、そのことだけは理解できた。



「それに俺の家に行きたいなんて言うし。」
カカシは照れくさそうに笑っている。
その顔は本当に嬉しそうだった。
イルカはカカシの家に行きたいと言ったのではなく、自分の家に帰りたい、という趣旨で言ったのに。
カカシはイルカの発言を拡大解釈しているような気がする。
「家に行きたいって、あれだよね?」
今度は何?
熱が出ているイルカの背中に冷や汗が流れる。
「合鍵を交換しましょうってことだよねえ。」
違う、断じて違う!と声の出ないイルカは必死で頭を横に振った。
頭を振りすぎて目が回ってしまうほどに。
しかしカカシは気がついてくれない。
自分の言ったことに夢中になっているようだ。
夢中というより、酔っているが正しく相応しい。



「ああ、イルカ先生が俺の家に来て俺のベッドで寝ているなんて夢みたい!」
いささか、誤解を生むようなことを言っている。
「あ、イルカ先生。」
カカシは、ようやくイルカの方を向いた。
「念のために言っておきますけど、イルカ先生に着替えをさせる時・・・。」
言われて見ればイルカはパジャマらしき物を着ていた。
カカシのものに違いない。
イルカは声が出ないながらも着替えの礼を言おうとしたのだが、次のカカシの言葉で固まってしまった。
「俺、見てませんから。」
何やら、もじもじと恥ずかしがっているカカシ。
見てませんって、な、に、を?
「見てませんから安心してね。」
そう言って、にっこりとした。



とうとうイルカは観念した。
現実逃避を、これは夢だと思うことにしたのだ。
今のこの状況は夢で、寝て起きたら現実に戻っている、そう思おうとした。
何しろ熱の出ている、ふらふらしている頭では処理できない情報が多すぎる。
頭の中を整理しようにも上手くいかない。
カカシに重要なことを言われているような気がするのに解らないのだ。
「あ、あの・・・。」
イルカは掠れた声を出した。
喉の痛みがひどい。
「はい。どうしました、イルカ先生。」
カカシが、すぐに顔を寄せてくる。
「俺、もう少し寝かせてもらって・・・。」
いいでしょうか?と言う語尾は弱弱しい声になってしまった。
「そうですね。」
カカシはイルカの額に手を当てた。
「熱が、まだありますしね。薬を飲んでから寝ましょうか。」



そうしてイルカの口に薬と水を運び、薬を飲ませてくれた。
「一眠りすれば、もっと良くなりますよ。」
カカシは丁寧にイルカに布団を掛けて、ぽんぽんと布団を軽く叩く。
子供をあやすように優しい調子で。
そんなカカシにイルカは安心してしまった。
子供の頃、熱を出した時、両親に看病されていたのを思い出すほどに。
カカシ先生、基本的にいい人なんだよな。
色々、変なこと言っているけど・・・。
きっと熱による幻聴だ、とイルカは思って目を閉じた。
だが眠る直前、イルカの耳に、またしても幻聴が聞こえてきた。



「そういえば、お礼を何にするかってのが保留になっていましたよね。」
カカシは何やら一人で呟いている。
「もう、何にするか決めたんですよね。」
楽しげな声だ。
決めたって何だろう。
夢うつつのイルカは頭の片隅で、うつらうつらと考えた。
「俺、イルカ先生に恋人になってほしいなあ〜、なーんて。」
・・・・・・・・・早く眠ろう。
そして早く快復しなくては。
あえて意識を手放したイルカは、あっという間に深い眠りに落ちていったのだった。





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