雨宿り7
次にイルカが目が覚めた時には外は明るくなっていた。
どうやら朝らしい。
体も、すっきりとしていて気分がいい。
体調が快復したようだった。
布団の中はあったかくて、そのあったかさに安心感を覚えつつ、ふと横を見ると銀色の何かが見えた。
カカシ先生!
銀色の何かとはカカシの髪の毛の色であった。
カカシはイルカの隣で、すやすやと寝ている。
安らかな寝顔にイルカは和んだ。
可愛いなあ、子供みたいだ。
ちょっと手を伸ばして頭を撫でてみた。
髪の毛は見た目より、さらさらで触り心地がよい。
俺のこと寝ないで看病してくれたんだな。
あたたかい気持ちになり感謝をした。
カカシ先生って、ほんと、いい人だなあ。
そんな風に思ってイルカは微笑んだ。
そっと言ってみた、小声で。
「カカシ先生、ありがとう。」
「いーえー、どういたしまして。」
タイミングを見計らったようにカカシの目が、ぱちっと開く。
隣にいるカカシはイルかを見て、にこっと笑った。
「おはようございます、イルカ先生。」
しれっとして言った。
「おはようございます、カカシ先生。」
答えてからイルかは、はたと思い出した。
寝る前のことを。
カカシがイルカに恋人とかなんとか言っていたことを。
・・・あれは本当にあった出来事なのかな。
もしかして熱にうなされて夢を見たのかもしれない。
そう思ったが確認のためにカカシに聞くのが躊躇われた。
もしも本当だったら、どうしよう・・・。
しかしイルカの杞憂は、すぐに現実をなって現れた。
カカシが訊いてきたのだ。
期待を込めた目で。
「ねえイルカ先生、お礼は恋人になってくれるっていうのは、どうですか?」
・・・ちょっと待て。
熱も引き、今は冷静な頭で考えることが出来る。
まずイルカは、ベッドの上で居住まいを正し正座をしてカカシに頭を下げた。
「雨宿りして発熱して動けないところを助けていただいてありがとうございました。」
「いえいえ。」
対するカカシも正座している。
「風邪の心配もしていただき薬までくださったのに悪化させてしまってすみません。」
「治ってよかったです。」
「看病もしてくださって本当に感謝しています。」
「イルカ先生のためなら何だってします。」
カカシは人のいい笑みを浮かべている。
「で、ですね。」
はあっと息を吸い込むとイルカは、はっきりと言った。
はっきりと言わなければならなかった。
「もちろん、カカシ先生に感謝していますし、お礼もしたいと思っています。」
でも、と上目遣いでカカシを見る。
「お礼と、こ・・・。」
恋人と口に出すのは憚られた。
恋人なんて言うべき人がイルカの人生に今までいなかったからかもしれない。
妙に気恥ずかしかった。
「こ・・・。」
「子?」
カカシが首を傾げる。
「こ、い・・・。」
「鯉?」
「こ、い、び・・・。」
そこまでイルカが言うとカカシは、さすがに察してくれた。
「ああ、恋人って言いたいの、イルカ先生。」
「・・・そうです。」
さらっと言ってしまうカカシが恨めしい。
「恋人って言うのが恥ずかしいんだ、イルカ先生。」
図星を指されてイルカは赤くなる。
「い、いいじゃないですか、言い慣れてないし使い慣れてないし、日常では縁のない単語だし。恋人なんて、これまでの人生でいなかったし。」
余計なことを言って悲しい言い訳すると、何故かカカシが嬉しそうな顔になった。
目を細めてイルカを見つめている。
「そっかー、イルカ先生。今まで恋人いなかったんですね。」
「・・・ほっといてください。」
自分の言ったことに落ち込むイルカだったが、それを振り切るようにカカシに指摘した。
「あ、あの、こ、恋人になってほしいって言うのなら先にするべきことがあるでしょう?」
普通は、というかイルカの中では恋人というのは告白してから成り立つものであるという認識があった。
するとカカシが、てれっとした顔になって頭を、がしがしと掻く。
照れている。
「え、キス?イルカ先生も気が早いなあ〜。」と満更でもない顔をしていた。
「は?え、キ・・・。」
イルカは固まってしまう。
キスと言う言葉に不意打ちを受けて。
・・・どっから話がずれたんだ。
お礼と恋人の話は別です、って俺、言おうとしていたんだけど。
ますます、窮地に陥ってしまうイルカであった。
雨宿り6
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