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憧れの人5



「じゃあ、任務に行って来ますね。」
カカシは玄関先で振り向き、見送るイルカに微笑んだ。
「明日か明後日には帰ってきますから、待っててね。」
帰ると言ってもカカシが帰ってくるのはイルカの家のつもりらしい。
そういえば最近カカシは、ずっと自分の家にいるなあ、とイルカは思った。
自分の家にカカシが帰って来てくれるのは嬉しいし、誰かが帰ってくるのを家で待つのも久しぶりで楽しい気持ちの方が強い。
でも。
「ちゃんと待ってますから、怪我しないでくださいね。」
無事に帰ってきてください、と言うとカカシは嬉しそうに目を細めた。
そして機嫌よく返事をする。
「はーい、分かりました。」
「じゃ、行ってらっしゃい。」
カカシが、もう任務に行くものと思い、イルカが手を振るとカカシは玄関先から動く気配を見せない。



不思議に思ってカカシを見ているとイルカに向かって両手を広げた。
「イルカ先生、こっち来て。」
「はい?」
イルカがカカシに近づくと、広げていたカカシの両手が塞がってイルカを閉じ込める。
「しばらくお別れだからイルカ先生の充電です。」
「そ、そうですか。」
いきなり抱きしめられて心の準備が出来ていなかったイルカは心臓が、どきどきとしてしまう。
カカシが、すごく愛しそうにイルカを優しく抱きしめてくるから。



時間がなかったのか、一分ほどでカカシはイルカを開放した。
「充電完了。俺の任務での活力の源ですからね、イルカ先生は。」
にっこりと笑っている、満たされたように。
そして、じゃ、行って来ます〜とカカシは本当に任務に行ってしまった。
「い、行ってらっしゃい。」
どきどきする心臓を押さえながらイルカはカカシを送り出す。
一人になってから、ぽつりと呟いた。
「もしかして、これが恋人のアピールってやつ、なのかな・・・。」
カカシに抱きしめられた感触を思い出して一人赤くなるイルカである。
胸の中は、イルカを抱きしめて笑ったカカシのように満たされていたのであった。



カカシが任務に行った次の日、イルカは三代目火影の執務の手伝いをしていた。
三代目は、親を亡くしたイルカを事の他可愛がっていて、イルカも三代目を慕っている。
「イルカよ。」
三代目は思い出したようにイルカに言った。
「木の葉病院の方に新しい薬のサンプルを作っておくように頼んでおいたのだが取りに行くのを忘れていた。すまないが取りに行ってもらえないか。」
「分かりました。」
仕事も一段落して、上手い具合に手が空いている。
「では、今から行ってまいります。」
「頼んだぞ。」
薬のサンプルを作った人間の名と部署名を言い渡されたイルカは、三代目に頼まれたとおり病院に向かったのだった。



病院に着き、問題なく薬のサンプルを受け取ったイルカは帰ろうとしたのだが、ある病棟の一角から聞き覚えのある声がするのを聞きつけた。
「情けないってばよ〜。」
「先生、本当に上忍なの?」
「馬鹿だな。」
その声はイルカが、よく知っている子供たちの声だ。
アカデミーで担任をしていた子供たちで、現在はカカシが上忍師となって指導している。
引かれるように、その声がする病棟の方に行ってみると、ある病室の中から声がした。
そっと覗いてみる。
そこには、七班の子供たち三人に囲まれて病室のベッドに座るカカシの姿があった。
カカシさん、任務から帰ってきていたんだ・・・。
姿を見て安心したものが、疑問が浮かぶ。
なんで病院にいるんだろう。
怪我でもしたのかと思ったが、怪我をしている様子はない。
ベッドに座っているだけで横になっていないし、どうしたんだろうか。
不安がイルカに押し寄せてきた。



「あ、イルカ先生!」
病室を覗き込んでいたイルカに子供たちが気がついた。
「わー、イルカ先生だってば!」
金髪の子供が一番に飛びついてくる。
「イルカ先生!」とカカシのことを放って桃色の髪と黒髪の子供も寄ってきた。
「どうしたんですか、病院にいるなんて。」
「怪我でもしたのか?」
カカシのことを訊きたかったイルカだったのだが逆に、そう聞かれる。
「いや、俺は火影さまの言い付けで薬のサンプルを受け取りにきただけで・・・。」
そこまで言ってイルカはカカシを見た。
「それよりカカシ先生、どうかしたのか?」
心配そうな表情のイルカに対してカカシは無表情でイルカを見ている。
イルカを見ているが、その瞳からは感情が読み取れない。
違和感を感じてイルカは眉を潜める。
なぜ、カカシは何も言わないのだろう。
付き合っていることを大っぴらにしている訳ではないが外で会うと、さり気なく声を掛けてきたり目配せしてくれたりするのに。
イルカを見ていたカカシから興味なさそうな声が出た。



「誰、その人?」
その言葉にイルカの体は固まった。
「俺の知っている人なわけ?」
眇めた目でカカシに見詰められる。
「あなたのこと解らないんだよね〜。」
カカシが、のんびりとした声で告げた。
「ちょーっと敵の術に掛かって、何もかも忘れちゃって、記憶を失くしちゃったんだよね。」
体ばかりか心も固まるイルカである。
ごめーんね、と言うカカシの言葉には何の感情もなかったのであった。






憧れの人4
憧れの人6





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