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憧れの人17



カカシの退院の日が来た。
その日は子供たちが退院の手伝いに来てはくれたのだが、カカシは少し物足りなかった。
そんな気持ちからか、つい言ってしまう。
「あの人、お見舞いにも退院の日にも来てくれないんだね。」
「えっ、あの人って誰ですか?」
桃色の髪の女の子が問い返してくる。
「ほら、あの、俺が入院した初日に来た。・・・イルカって人。」
「ああ、イルカ先生ですか?」
「そうそう。」
カカシが頷くと横から黒髪の子供が口を出した。
「イルカ先生は今の時期、仕事が、すごく忙しいんだ。手を煩わせるな。」
素気無く言われたカカシは、むっとしてしまったが一応、大人なので顔には出さなかった。
「でも、イルカ先生、カカシ先生のこと、すごく心配しているみたいだったてば。」という金髪の子供の言葉を聞き、溜飲が下がる。
因みに子供たちはカカシとイルカの問題には口を出さない、静観すると決めたらしい。
なので、カカシに対しては普通に振舞っていた。



「俺のこと、心配していたのって本当?」
そんなことを聞くと何故だか気分が、うきうきとしてきた。
「本当よ。」と桃色の髪の女の子が頷く。
「カカシ先生が入院している間、私達、毎日、お見舞いに来ていたのはイルカ先生に頼まれたからなんです。」
「へえー。」
「お見舞いの品もイルカ先生が自分で選んで、カカシ先生にって渡してくれた物ばかりでしたよ。」
「そうなんだ〜。」
意外な事実を知らされたカカシは、ちょっと胸があったかくなる。



一度だけ見た、妙に気になるイルカ先生に実は嫌われているんじゃないかと密かに危惧していたからだ。
しかし、これで自分と、あのイルカ先生が何らかの関係にあったのは確信した。
見舞いの品は食べ物が主だったがカカシの口に合うものばかりで不思議に思っていたのもある。
食べ物の嗜好などはカカシのことを、よく知っていなければ分からないことだ。
「ねえ。」とカカシは子供たちに訊いた。
「イルカ先生って、どんな人なの?」
優しいの?笑うとどんな感じ?何が好きなの?と立て続けに質問する。
それを聞いた子供たちは顔を見合わせた。
「カカシ先生、初めに俺たちに、イルカ先生について訊いてきたことと同じことを訊いているってば。」
「そうねえ、イルカ先生に興味を持ったときと同じ、怪しい目の輝きしているわ。」
「余り、教えない方がいいんじゃないか・・・。」
イルカ先生のためにも、と黒髪の子供は付け足した。




イルカは目の回るような忙しさで仕事をこなしていた。
今は受付けをしているが、この後アカデミーへ戻らなければならない。
時期的なものが重なり、受付け、アカデミーとその他諸々全部、ひっくるめて忙しかったのである。
カカシのことも、ひどく気に掛かり見舞いにも行きたかったが、どうしても仕事から抜け出せなかった。
「昨日も徹夜だったけど、今日も徹夜かも・・・。」
もう三日も家に帰っていない。
疲れてはいたが、少し有り難くも思っていた。
「家に帰るとカカシさんのこと思い出してしまうからなあ。」
カカシが任務に行く直前に床に零したビールの染みなどを見ていると寂しさで切なくなってしまったりする。
染みは結局、拭いても取れなかった。



ちょっと回想に浸っていたイルカであったが、今は受付けをしていた。
夕方の忙しい時間帯で混雑している。
「次の方、どうぞ。」と声を掛けて、報告書を受け取ろうとしたのだがイルカの目の前に立っている人は、両手をポケットに突っ込んだままだった。
「あの、報告書は・・・。」
立っている人を見上げてイルカは息を飲んだ。
カカシが立っていたのである。
「退院されたんですね、よかった・・・。」
服の端から包帯を巻いているのが見えたが、怪我は快復傾向なのだろうと思い、イルカは安心した。
「あのさ。」
カカシが言い難そうに言葉を発した。



「お見舞いの品のことを聞いたので、お礼を一言と思いましてね。」
「ああ、そんなの・・・。」
いいんです、とイルカは言い掛けたが、受付けをしていた他の中忍から呼びかけられて遮られた。
「イルカ!昨日、渡された書類の提出期限、明日だったのが今日までに変更になったってよ。」
「ええ!」
「あ、それと・・・。」
イルカともう一人の中忍の名を言い「アカデミーから呼び出し、至急戻れってさ。受付けは俺が交代するから行けよ。」と告げる。
「分かった。」
がたん、と椅子の音を響かせてイルカは立ち上がった。
「すみません。失礼します。」とカカシに頭を下げると慌しく受付け所を後にする。



受付け所を出て、そういえば、と思い出した。
「カカシさん、って、また呼べなかったな・・・。」
カカシは未だイルカを忘れたままだ。
イルカが名を呼んだらカカシの記憶は戻るだろうか?
「カカシさん。」とイルカは口の中で呟いて、名を言いそびれてしまった、と肩を落としたのだった。





憧れの人16
憧れの人18






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