憧れの人14
呼び出されたカカシは、すこぶる機嫌が悪かった。
それを見て揶揄うように三代目火影が言う。
「なんじゃカカシ、その顔は?」
カカシは膨れっ面をしていて愛想がない。
「お楽しみだったのか。」と三代目に訊かれて、カカシは眉間に皺を寄せる。
「お楽しみ以前の問題です。」
ぶつぶつと不満げに呟く。
「お楽しみの前の前の段階くらいのパラダイスに、もう少しで手が届くはずだったのに。」と悔しそうにしている。
「分かった分かった。それは悪かったな。」
三代目は、取り成すような口調で言った。
「まあ、それは兎も角として。カカシよ。」
真面目な顔をした三代目は任務の依頼書を懐から取り出し、カカシに渡す。
「読んだら、この場で燃やせよ。」
カカシは任務依頼書に、さっと目を通したかと思うと、あっという間に手の平の上で依頼書を燃やした。
依頼書は、みるみるうちに灰になる。
「厄介な任務ですね。場所は里から、そう遠くないですが。」
面倒だ、というのがカカシの感想らしい。
「やりたくないなあ。」と本音も出てしまった。
「気持ちは分かるが、そう言わずに任務に行け、カカシ。」
三代目は口に銜えていた煙管を手に持つと口から、ふわっと煙を吐き出す。
「心してかかれよ。もしも助けがいる時は躊躇なく式を寄越せ。」
そう告げた声は固く真剣で、それを聞いたカカシは軽く頷き、一瞬で姿を消したのだった。
任務自体は難しいものではなかった。
そう思いながらも、カカシは切羽詰った状況に追い詰められていた。
任務は成功し敵の陣地から逃れたものの、途中で敵に追いつかれて囲まれてしまったのだ。
油断したつもりもなかったし余計なことも考えたりしなかったのだが、如何せん、敵は人数だけは多かった。
「あー、もう。ど〜しようかなあ。これってば、ピンチ?」
軽口を叩いてはいるが、カカシの体には深い傷があり血が溢れ出ている。
武器を構えてはいるものの、力が入らない。
「いやんなっちゃうよね〜。」
既に里に任務の成功の知らせはしてあり、ついでに応援も要請してしまっていた。
「だって死にたくないからね〜。」
カカシは敵と対峙しながら時間稼ぎとばかり、敵に話しかけた。
「あのさ〜、俺のこと、どうするの?」
殺すの?と言ってみる。
上手い具合にカカシの作戦に引っかかり、敵の誰かが答えた。
「決まっている。お前から情報を取るのさ。」
「情報?」
「情報は高く売れる。お前からは貴重な情報が、たくさん取れそうだしな。」
「へー。」
敵はカカシとの間合いを詰めてくる。
「木の葉の情報が手に入れば、奇襲でもして主要部を陥落させれば支配するのも簡単だ。」
「そう簡単にいく訳ないでしょ〜。」
言いながらカカシは目の前が、くらくらとしてきた。
血を流しすぎて貧血状態になってきているらしい。
このままだと敵の言うとおりになってしまうかもしれなかった。
戦略において情報は重要だ。
裏では高く取引される。
もしかして、もしかしたら木の葉の里が大変な事態になるかもしれないし、ならないかもしれない。
どちらとも、いえなかった。
「そんなことさせないもんね〜。」
里に要請した応援が、じきに到着しそうだとはカカシは思った。
でも、その前に自分は敵にやられてしまうかもしれない。
自分が引き金になって、木の葉の里を危険な目に陥らせるのだけは避けたかった。
流れ出る血を押えながらカカシは、にやりと笑った。
「じゃー、アレしちゃおうかな。」
今の自分では敵に立ち向かうことは出来そうにない。
味方が到着するまで、もてばいいのだ。
情報を取られないように。
暫し時間を稼げばいい。
カカシは血のついた指で、さっと印を切った。
「俺の記憶封印の術〜。」
捕虜になった時などに使う、一時的に記憶を失くす術だった。
これには、きちんと解術方法がある。
木の葉の忍にしか解らないものだ。
術を施したカカシは、ばたりと、その場に倒れてしまった。
力尽きたのだ。
これでいい、と安心したのもある。
倒れながら、カカシの心の片隅に誰かの笑顔が思い浮かんだ。
あの黒髪の人は誰だったけ?
幸せそうに笑うなあ・・・。
カカシが地面に倒れ動かなくなった、丁度その時、木の葉からの援軍が到着したのだった。
憧れの人13
憧れの人15
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<訂正です>
話の中で最初、火影さまが五代目になっていましたが
三代目に訂正させていただきました。
すみません。