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憧れの人13



素早く食器を洗い終えたイルカは、自分もビールを持って戻ってきた。
プルタブを開けて、既に飲んでいたカカシに「乾杯!」と軽く缶を、ぶつけてきて飲み始める。
食後の二人の間に、ほのぼのとした空気が漂う。
カカシとイルカは視線が合うと、知らずに微笑んでいた。
「ねえ、カカシさん。」
ビールを飲んで、ほろ酔い加減になったのか仄かに頬を赤くしたイルカが穏やかな口調で言ってきた。
「俺、考えてみたんですけどね。」
ビールの缶を両手で包んで、それを見詰める。
「何ですか?」
イルカの態度を訝しく思いながらカカシは相槌を打つ。
何かイルカが重要なことを言おうとしているような気がした。



「今まで、俺、過去のことは極力思い出さないように、思い出しても直ぐに忘れるようにしていたんですよね。」
「・・・うん。」
過去のこととは失恋したことを指しているのだろう。
「自分でも古傷に触れぬようにしていたら、口に出しても軽い冗談のような感じで言えるようになっていて。・・・それで、まあ、いいかなと思っていたんですけど。」
ビールの缶を見詰めていたイルカは、すっと顔を上げて真っ直ぐにカカシを見た。
「思い出すのも嫌だったんですが・・・。大人になった現在、冷静に考えてみると、俺、相手の人たちのこと嫌いじゃないとしても好きじゃなかったと思うんです。」
何かを思い出すようにイルカは目を閉じる。
「好きだと言われて好きになろうとは思いましたが、結果、好きになることはできなかった。付き合う期間が短いとかは置いといて、そういう俺の態度を敏感に察した相手の方たちは他の人を選んだんじゃないかと・・・。」
黙ってカカシはイルカの話を聞いていた。



「俺も若かったし人生経験が浅くて、考えの至らないこともたくさんあったと思いますし。まあ、人生において一つの勉強になったと思えばいいかな〜って。」
前向きにイルカは考えている。
「だから、過去のことは失恋じゃなくて、なんというか・・・。ちょっとショックな出来事があったと思うことにしたんです。」
静かに目を開けたイルカは曇りのない目をしていた。
吹っ切れたような、さっぱりとした顔をしている。
「それに今、思えば、確かにショックなことを言われましたけど皆さん、その後に、ごめんね、と謝っていたような気がします。」
その時はショックを受けた言葉ばかり強く心に残ってしまい、冷静になれなかったんですよね、と照れたようにイルカは笑った。



「だから。」とイルカは照れているのを隠すように残っていたビールを一口飲んだ。
「今までのは失恋というか、恋愛でもなかったんですよ、きっと。」
そして嬉しそうにカカシを見た。
「そういう意味では、俺の初恋はカカシさんかもしれませんね。」
ものすごく遅い初恋になりますが、と。
「イルカ先生!」
カカシの手の中にあったビールの缶が、ぐしゃりと潰れた。
幸い、中味は入っていなかった。



「ほんとに、そう思ってくれているの?」
感極まったという風にカカシはイルカを抱きしめる。
イルカは手にビールを持っていたのだが、抱きしめられた勢いでビールの缶が落ちてしまった。
残っていたビールが零れて床に染みを作る。
しかしカカシは、お構いなくイルカを抱きしめた。
「すっごく嬉しい!」
そんなことを言ってもらえるなんて、と大変に喜んでいる。
「そ、そうですか。俺としては、過去のことを改めて考える機会と与えてくれたカカシさんに感謝したいくらい・・・。」
「いっくらでも感謝してください。」
「あ、はい。」
ありがとうございます、とイルカは言ってからカカシの勢いに押されたのか乗せられたのか、それともビールを飲んで口が軽くなったのか、普段は言わないようなことを口にした。



「あ、そうだ。折角だから、一緒にお風呂でも入りましょうか?」
「えっ、ほんとに!」
「はい、カカシさんの背中を流しましょうか。」
イルカの提案にカカシの心は躍った。
何が折角だからなのかは知らないが、このチャンスを逃す手はない。
「嘘じゃないですよね?ぜひぜひぜひ、一緒にお風呂に入りましょう!」
イルカにカカシが初恋の人かもと言われて、一緒に風呂に入れるなんて、今日はなんていい日なんだろう。
生きていて良かったとカカシは、しみじみと思った。
この雰囲気なら、いい感じでイルカに告白できそうだし。
カカシが感動して夢を叶えてくれそうな神様に感謝をしていた時、「あ。」とイルカが窓の外を指差した。



「式が来てますよ、カカシさん。」
窓の外には、ぱたぱたと羽ばたく小さな白い鳥が見えた。
「あの式は火影さま直々の式です。カカシさん、きっと緊急の任務ですよ。」
その瞬間、カカシの夢は無残にも砕け散ったのであった。






憧れの人12
憧れの人14





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