我が家5
カカシがライドウから教えられた場所に行くとイルカは川べりに座り込んでいた。
膝を抱えて蹲っている。
その姿に、急に不安が押し寄せてきてカカシは急いでイルカの元に駆け寄った。
「イルカ先生!」
カカシの呼びかけにイルカは振り向かない。
「イルカ先生。」とカカシは、もう一度呼ぶとイルカの顔を横から覗き込んだ。
その顔を見て、カカシの顔に微笑が浮かぶ。
それから、にやっとした。
「イルカ先生、顔、真っ赤。」
指摘されたイルカは顔をカカシに見せないように俯いた。
「なあんだ、照れていたんだ〜。」
安心したようなカカシの言葉にイルカは、きっとカカシを睨みつけた。
「なんで・・・。」
「なんで?」
「ここにいるんですか!びっくしたじゃないですか。カカシさんの姿を見て心臓止まるかと思いましたよ。」
イルカは捲くし立てるように言う。
「それは、もちろん。」
カカシは余裕の表情でイルカの方に両手を広げて見せた。
「イルカ先生に会うために来たんです。」
さあ、とカカシの腕が誘っている。
イルカは遠慮なくカカシの腕に飛び込んだ。
お互い、ぎゅーっと相手の体を抱きしめ合って、相手を確認すると、二人は同時に安堵の息を吐き出した。
「びっくりしました、本当。」
カカシの背中に手を回したイルカが呟く。
「カカシさんがいるとは思わなくて、どうしたらいいのか分からなくなって、あの場から逃げるような真似をしてしまって・・・。」
「そっか、驚かせてごめんね。」
そっと、カカシは落ち着かせるようにイルカの背を撫でた。
「どうしてもイルカ先生に会いたかったんです。」
「もしかして、そのためだけに来たんですか?」
その口調には嬉しいけれども、少々咎めるようなものが含まれていた。
「まさか。」
カカシは笑って、イルカの頬に口付けを落とす。
「ちゃんとした任務ですよ。あと、五代目からの伝言で『早く帰ってきて仕事手伝ってくれ』って。」
それを聞くとイルカは、ぷっと噴き出した。
「五代目は、だいぶお困りのようですね。」
「そうだねえ。偶には、いいんじゃないの。」
イルカに会えたものだからカカシの返事は適当だ。
「そうだ。」
カカシは当初の目的を思い出した。
イルカの誕生日にラブレターを渡す。
今日はまだ、誕生日ではないが精魂込めたラブレターをイルカに渡す、今がチャンスだ。
「あのねえ、実はね。」
うきうきとして、カカシはベストの内ポケットの中を探った。
「なんですか?」
「待って、今・・・。」
内ポケットを探っていたカカシの手が止まり、次いで顔色が蒼白になった。
抱きしめていたイルカの体を離してカカシはベストを脱いで、バサバサと煽った。
ラブレターは出てこない。
額宛も顔を追う布を取り、体中を服の上から、ぽんぽんと叩いてみたがどこを探しても出てこない。
すっかり血の気を失った顔のカカシを見てイルカは心配そうに言う。
「どうかしましたか?カカシさん。」
「い、いや・・・まさか。ええっ、嘘でしょう!」
ないなんて、とカカシは呆然としている。
必死で記憶を探ると、あるところに行き着いた。
「ああっ、そうだ!そうそうそう!」
雨宿りした木の洞に入れて、そのままだったんだっけ・・・。
「カカシさん?」
イルカが不思議そうにしているがカカシは、それどころではなくなってきて気が急いている。
「イルカ先生。」
カカシは、がっしとイルカの手を掴むと言った。
「俺、ちょっと急用を思い出してしまって。」
申し訳なさそうなカカシにイルカは「お気遣いなく。」と微笑んだ。
イルカ宛てのラブレターをイルカが読むのは、一向に構わないが、もしも他の人に読まれたら・・とカカシの背中に冷たい汗が流れる。
「じゃ、俺、見送りします。」
ここでの調べは終わったので報告をしに行きますから、と、そう言うイルカとカカシは隊長であるライドウのいるテントに戻った。
イルカがライドウに報告を済ませると意外なことを言われた。
「イルカ、もう里に戻っていいよ。」
「えっ。」と驚くイルカにライドウは説明した。
「元々、イルカは案内役をいう名目だったし、後は俺たちだけで出来ると思う。これからカカシさんは里に戻るんだろ?便乗して連れて行ってもらえよ。」
そう言われた。
「それでしたら。」とイルカは頷く。
「お言葉に甘えて先に帰らせていただきます。」
イルカは、ライドウに頭を下げた。
「隊長、ありがとうございました。お気をつけて。」
別れの挨拶をする。
「ああ、こちらこそ、ありがとうな、イルカ。」
同じく別れの挨拶をするライドウの肩が、とんとんと軽く叩かれた。
「カカシさん?」
「ライドウ。」
カカシが感極まったように言う。
「お前、本当はいいやつだったんだなあ。さっきは悪かったな。」
「え、何がです?」と目を白黒させるライドウに向かって、カカシとイルカは手を振った。
「じゃ、またな〜。」
「それでは。」
そうして二人の姿は森の中に消えていった。
我が家 4
我が家 6
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