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15歳 9



「で、今はどうなっているのさ」
カカシが問うと隊長は「うーん」と唸って腕組みをした。
「あの子はいつになったら任務が終わるの?」
「うーん」
「早く里に帰してあげたいとかタイチョーも言っていたじゃない」
「うーん」
「中忍試験も受けたいとか受けたくないとか言ってなかった?」
「受けたくないとは言ってなかったぞ」
「聞こえているのなら、唸ってばっかいないで答えてよ」
「うーん」
「それは、もういいから」
「いや、なあ」
隊長は面の下で眉を顰めた。
「まあ、なんと言うかなあ」
「何が?」
「見通しは立ったが準備に手間が掛かるというかなあ」
「準備?」
「そりゃあ、そうだよ」
言って隊長はカカシをねめつける。




「アイツを殺さず生きて救出するのには、それなりの準備ってもんが必要なんだよ」
「そうかもね」
渋々ながらカカシも認める。
「長期の潜入なんだから終わるときにも時間が掛かるっていうわけだ」
「ふーん」
「色々手回しや根回しも面倒だがしておかないとな」
「そうなんだー」
カカシは拍子抜けしたかのように、つまらなそうな声を出した。
「こうザザッと敵を殺して、パパッとぶっ壊して、ササッと終わるのかと思っていたのになあ」
「そんな簡単に任務が終わったら苦労しないな」
隊長は呆れたように言い、手に持っていた巻物やら書類を、どさっとカカシの腕の中に落とした。
「これに目を通しておけ。他の任務の計画書やら立案書やら、どっさりあるぞ。例のことの他にも、やることはたくさんあるんだ」
「そりゃあ、分かってますよー」
減らず口を叩いてカカシは嫌そうに巻物やら書類を見る。
「だけども俺は、じっとして書類とにらめっこよりも、外に出て体を使って暴れまわる方が得意なんだよねえ」
「そんなの若いうちだけだ。年食って年齢が上がると事務系の仕事も嫌でも増えてくるんだからな」
「はいはい」
変なところで説教を喰らってカカシは、おざなりに返事をする。
だが肝心のことを言うのは忘れなかった。
「例のアレが最終回を迎える時に、あの子を迎えに行く役目は俺にしてよ」
「覚えておく」
それが仔鹿の任務に関するカカシと隊長の交わした最後の言葉になった。



「割と展開早くない?」
隊長と二人で小舟の上に乗っているカカシは、もちろん暗部特有の格好をして闇に紛れている。
「いや、時間的には遅いんだけど始まると早いっていうかさ」
「口数が多いな」
隊長は揺れる小舟の上なのに、自身はぴくりとも動かずに腕を組み前を見据えている。
その目は遥か遠くを見ていた。
「いや、だってさ」
カカシは落ち着かないのか、更に話を続ける。
「あの子のこと、三ヶ月前くらいに話して、それっきりだったのに急に例の作戦を決行するとか言って一緒に来いとか言うからさ」
びっくりしたんだから、とカカシは隊長に愚痴る。
「作戦の全容を知らされたのだって、一昨日かそれくらいでしょ」
「ふふん」
隊長は鼻で笑った。
「口数が多いのは緊張しているからか。俺はね、秘密主義なんで絶対に成功させようと思っている任務は直前にしか知らせないようにしているんだ」
「それでもさー」
俺には言ってくれたって、とカカシは口を尖らせる。
「あれから三ヶ月も経って、今は五月だよー」
冬が終わって春も終わりそうな季節だった。
「そうか、五月か」
「あの子と初めて会ってから、一年くらい経つね」
その時だった。
遠くの方で爆発音がした。
赤い炎と黒い煙が空に高く立ち上る。
「始まったか・・・」
隊長の呟きにカカシは身を引き締めた。




じりじりとカカシは隊長と二人で、ある人を待っていた。
小舟の上にいるのは、すぐに岸を離れられるように。
少しでも安全な場所に移動するための手段だった。
もうすぐ、待ち人である仔鹿が川岸に来る手はずになっているのだ。
潜入の任務を終えた仔鹿を回収して木の葉の里に連れ帰るのかカカシの役割である。
隊長と共に。
「ここにいて、よかったの?」
カカシは、ふと疑問に思って隊長に聞いてみた。
「攻め込むときに陣頭指揮を執るタイチョーがいないと困るんじゃないの?」
「ああ、それなら心配いらない」
隊長が面の下で苦笑したのが分かった。
「あっちは副隊がいるから大丈夫だ。ああいうの大好きだから」
「ああ・・・」
副隊とは副隊長のことで好戦的な人物で有名な美女だ。
「それになあ」
隊長が一瞬だけ、視線をカカシに寄越した。
「俺は任務の中でも実は、誰かを待つというのが一番苦痛で大変だと思う。もし来なかったら、そいつを置いていかねばならないからな」
「それって見殺し・・・」
「そうとも言う」
隊長の視線は、また遠くに戻った。
「約束した時間までに仔鹿が来なかったら置いていくしかない」
「え・・・」
まさかの言葉を言われてカカシは固まる。
「ぎりぎりまで待つが、来ない場合は起爆札を発動させる」
「アンタ、こじかの体に埋め込まれている起爆札を遠隔操作できんの!」
「・・・ああ、そういう権限を持っている」
声には意思は曲げない強さが宿っている。
そうでなければ、暗部の隊長などやっていないのだろう。



「だって、アンタ諦めるなってこじかに言っていたじゃない!」
激昂こそはしなかったがカカシの低い声には怒りが込められた。
「こじかに言っていたのは全部、嘘だったの?」
「そうじゃない」
対する隊長は冷静だ。
「だって・・・」
「今は黙って任務に集中しろ」
言われてカカシは隊長と同じく前方を見据えた。
火の手と煙は、ますます勢いを増している。
あれは仔鹿の合図で始まった戦闘だ。
敵を殲滅させるためのもので多数の死者を出すことが予想される。
元々、二つのある組織の壊滅を図って、仔鹿は潜入しており、その両方のスパイとなることで結果、情報を緻密に集められた。
今回の戦闘によって仔鹿の裏切りが表ざたになれば恨みを買うことは必至だ。
潜入されていた敵方から見れば、その裏切り行為と見なされて仔鹿は死の対象となるだろう。
死んでいたら仔鹿はここへ来ない。
カカシの元へは現れない。
永遠に姿を見ることも声を聞くこともできないのだ。
そんなの嫌だ、とカカシは強く心の中で思う。
ここへ来い!
必死で念じていた。
それから経った時間が短いのか長いのか、見当がつかなかった。
遠くに人影が見えた。
ゆらりと。
ふらつく足取りで、こちらへ向かっている。
カカシがいる方向へ。
その人影には見覚えがある、仔鹿だ。
仔鹿は怪我でもしているのか、真っ直ぐに歩いていない。
足も引きずっている。
尚も歩こうとした仔鹿であったが、不意に後ろから押されたかのように前に倒れてしまった。
ひゅるるる、と音が聞こえて飛んできた弓矢が仔鹿の左肩を貫いたのだ。
その反動で仔鹿の体は倒れてしまった。



「カカシ!」
突然、名を呼ばれたカカシは驚いて隊長を見た。
「何で俺の名前を・・・」
隊長は面を外し、素顔を晒している。
「わっ!」
隊長の顔を見てカカシは二度目の驚きを隠せなかった。
「超美形・・・」
「カカシ、イルカを助けに行け!」
「え、イルカって誰?」
「イルカ!」
ものすごく大きな声だった。
それが届いたのか、前方で倒れてい仔鹿が、はっきりとこちらを見た。
「今、行く!待っていろ!」
ここまで言われればカカシにも解る。
隊長の言葉が終わる前にカカシは飛び出していた。
全速力で仔鹿、もといイルカの所へと向かう。
その間も弓矢が数多に飛来していたが、隊長の口から放つ火遁豪火球の術が正確に弓矢に当たり、弓矢は燃え尽きていく。
「イルカ?」
カカシは仔鹿だったイルカを抱き上げた。
体からは濃い血の匂いがする。
「もう大丈夫だよ」
極力、揺らさぬように急いで背に負う。
後は木の葉の里に帰るだけ。
背に負ったイルカが呟くのが聞こえた。





15歳 8
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