15歳 6
「とにかく」
仔鹿は締めくくった。
「情勢は刻一刻と動いているので、この任務も終わりも間近でしょう。任務終了も、そう遠くないと思います」
だから、と仔鹿は目を閉じ、下を向く。
何かを覚悟するように。
「この任務をやり遂げて里に帰り、中忍試験を受けるのが目下ところ俺の目標です」
「そうか・・・」
なんとなく重い空気が漂う。
「・・・・・・別に先輩のことがあったからといって意地を張って命令に逆らうわけじゃありません。勝算はありますから」
心配しないでください、と目を伏せたまま顔を上げて仔鹿は微笑んだ、かわいらしく。
「分かった・・・」
隊長は難しい顔をして聞いていたが不承不承に頷いた。
「仔鹿が、そう言うなら仕方がない」
肩を竦める。
「だがな」
ぽん、と仔鹿の肩を叩いた。
「死ぬなよ。例え、死にそうになっても最後の瞬間まで諦めるな」
「分かっています」
「ねえ、先輩って誰よ?」
懲りずにカカシは会話に割り込む。
先輩なんて新しい単語が出てきたので、非常に気に掛かる。
「先輩って誰の先輩?仔鹿の先輩ってこと?」
「お前は、また性懲りもなく・・・」
はあ、と溜め息を一つ吐いた隊長は呆れたようにカカシを見る。
「だから、さっき言ったろ。俺と仔鹿の共通の知り合いがいるって。仔鹿に諜報やら情報収集やらのいろはを教えた先輩が俺の知り合いなの」
「ふーん。で、今、どこにいるのさ」
「・・・木の葉の里だ」
「先に帰還したの?」
「・・・そうだ」
「仔鹿を置いて?」
「置いてじゃないよ」
仔鹿の辛そうな声がした。
「俺が残留を申し出たんだ。・・・先輩は俺を庇って大怪我をして今も目覚めず、病院にいるから」
「そんなことまで言わなくていい」
今度は気まずい雰囲気が漂う。
「あー、そうなんだ」
気まずさを誤魔化すようにカカシは頭を、がしがしと掻く。
「最初は・・・」
仔鹿の小さい声がする。
「最初は、その先輩と二人で任務に当たっていたんだ。でも、俺のミスで素性がバレそうになってしまって先輩が怪我することによって、俺は潜入先に疑われずに済んだ」
「だから、気にしなくていいんだ」
隊長が仔鹿を慰める。
「仕方のないことだったんだ。アイツも分かっているさ。それよりも、本来なら二人でしなければならない任務を一人でこなしているんだから、仔鹿はよく頑張っているよ」
重い空気と気まずい空気が交じり合って、場の雰囲気は最悪になっている。
それを招いたのはカカシと言ってもいいだろう。
・・・えーっと。
カカシは考える。
・・・なんとかした方がいいよなあ。
どこか、のんびりと考えてしまうのは本来の気質なのだろうか。
話題を変えればいいかもしれない。
安直に考えたカカシは、それを実行した。
「そういやあ、さあ」
とりあえず、隊長を怒らせると怖いので仔鹿に、それとなく水を向けてみる。
「出てくるのに、調整が大変って言っていたけど、どうやって出てきたの?」
「え?」
「何と言って抜け出してきたの?」
「そ、それは・・・」
すると、いつもクールな仔鹿に変化が現れた。
咄嗟に俯いたしまったが、その前に出ている片頬が赤く染まっているのをカカシは見逃さなかった。
「あの、つまり・・・」
仔鹿にコテンパにやられたり、やり込められたりした過去があるので弱気になっている仔鹿をここぞをばかりにカカシは問い詰める。
「ねえねえ、どうして?なんで?どうやって誤魔化したの?何て言って来たの?ねえねえ、教えてよ〜」
かなり、しつこい。
「いいじゃんいいじゃん、減るもんじゃないし。教えて教えて、後学のためにさ〜」
適当なことを、じゃんじゃん言っている。
そのカカシの勢いに押されたのか、仔鹿がぽつりと言った。
「その・・・。約束の時間に遅れるかと思って時計を、ちらりと見たら言われたんだ」
「なんて?」
「・・・野暮用かって」
小指を立てて聞かれたらしい。
「どこにでも勘の鋭いヤツはいるから、ここで変に誤魔化すより便乗した方がいいかなって」
「ああ、小指を立てるって女の存在を指すもんねえ。愛人とか恋人とかさー」
その辺の知識はカカシは常日頃、熟読している本からしっかり学んでいた。
「へー、そうだったんだ」
会話を聞いていた隊長が面白そうに仔鹿を見る。
「色っぽいことは大の苦手だったんじゃないのか。だから、そっち方面からの潜入は絶対にやらないって以前に言っていたくらいなのになあ」
もしかして大人になったのか?と無遠慮なことを聞かれて仔鹿は無言で隊長の足を、ガスガスと蹴り上げていた。
「ちょっと痛いんですけど、やめて仔鹿さん・・・」
隊長は言いながらも大人しく仔鹿に蹴られている。
「あー、色事苦手なんだ〜、純情だねえ」
もしかしてキスもしたことないの?やっぱり可愛い〜とカカシは余計なことを言い、隊長と同じく仔鹿に、ガスガスと足を蹴り上げられてしまう。
「痛いって、こじかちゃん」
「ちゃん、をつけるな!」
照れているのか、蹴り上げる力が強くなる。
そんなのは、ちっとも痛くない。
それよりも、とカカシは仔鹿に蹴られながら、何故か嬉しくなった。
やっと仔鹿と仲良くなれたような気がしたからであった。
15歳 5
15歳 7
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